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第三十九話  キャルの力  1 ワン、その異能


 カサンドラは鎖の端にある剣を右手でとり、ワンに突きを出す。

 が、ワンは鎖に巻かれようとしている中、その剣を僅かに躱した。


 しかしその躱したワンに、カサンドラの左手が向かった。


「紅蓮剣!」


 左手から火炎が剣のように伸び、ワンの胸を貫いている。

 

「……ぐ――まさか…」

「一秒先が読めるというなら――一秒では躱せない領域に追い込むまでだ」


 カサンドラが口にした。

 ――カサンドラが勝った。そう思った瞬間だ。


 何か視界が歪む。なんだ!?


「紅蓮剣!」


 カサンドラが左手の火炎剣を繰り出している。

 だが、それをワンは刀で斬り裂いた。


 ――なんだ!? 


 そう疑問に思う間もなく、ワンが剣を振り上げる。

 その周囲を囲んだ鎖が弾かれた。


「な――」


 動揺したカサンドラが、右手の剣でワンに斬りつける。

 が、それがワンにとっては隙だった。


 体を開いて、ぎりぎりで剣を躱したワンが、カサンドラを袈裟斬りにする。


「カサンドラぁっっ!」


 僕は思わず叫んだ。

 キャルが僕の隣で、息を呑む。


「馬鹿な……私は確かに――斬ったはず……」


 口から血を流しながら、カサンドラがゆっくりと倒れる。

 ……どういう事だ? 何が起きた??


 倒れたカサンドラを見降ろしながら、ワンが息を吐く。


「……強敵だった。まさか、私の第二の力まで使わせるとは。カサンドラ・レグナ……素晴らしい剣士だった」

「一体――何をしたんだ、ワン!」


 僕はワンに叫んだ。ワンがこちらを向く。


「一秒先を読む。それが第一の異能。そして第二の異能は――一秒、時間を戻す。……それが私のディギアだ」


 は? ……馬鹿な。それじゃあ、カサンドラは勝ったにも関わらず、それをリセットされたってことか?


「判っただろう。君たちに勝ち目はない……。それとも君は、この女剣士より強いとでも言うのか?」


 それは……ない。

 明らかにカサンドラは、僕より強い剣士だった。


 じゃあ異能を使えば――ブランケッツ・アタックなら――

 駄目だ。仮に攻撃が成功しても、リセットされる。それを防ぐ術がない。

 

「クオン……」


 僕の後ろで、キャルが不安そうな声を出した。


「大丈夫。君をきっと守る――そう決めたんだ」


 僕は棒剣を構えた。

 振動体で攻撃するしかない。振動体なら、奴に斬られても持ちこたえられる。特に最初の一撃は、こっちを斬れると思ってるはず。


 そこを狙うしかない。


「挑んでくるか、少年。ならば――お相手しよう」


 ワンが刀を構えた。

 僕は、じり、と前に進む。


 なるべく前に出る。なるべく前に出た方が、奴を攻撃するタイムラグが短くなる。

 じり、と足を進める。ワンがすっと横に動いた。


 今だ! 振動体!


 僕の身体が重化と軽化をコンマで反復する振動体と化す。

 全身が熱を帯びたその時、僕はワンに斬りかかった。


「ムッ!」


 振動体の速度は、粒子加速しているために普通の速さじゃない。それは――1秒以下のはずだ!

 ワンが息を呑む間に、僕は接近している。


 棒剣を振り下ろした。ワンの肩に、棒剣がめり込む。

 が、次の瞬間に空間が歪む。――リセットされている。


 ワンが僕の首に刀を振り下ろした。躱せない。

 が、それでいい。刀は振動体の僕を斬り抜けず、そこで止まる。


「なにっ!?」


 驚愕するワンの顔を見ながら、僕はワンの刀を手で掴んだ。

 軟化! ワンの刀を軟化して握りつぶす。


「ムッ! だが!」


 半分になった刀で、ワンは僕の腹に突きを入れてきた。

 僕の振動体の身体には刺さらない。が――


「ぐ……お……」


 全身に駆け抜ける衝撃に、僕はよろめいた。

 攻撃を受けたのは腹部なのに、背中、そして頭に重い衝撃が走っている。


 駄目だ――ここで倒れられない!


「ウオオォォォッッ!!」

 

 僕は棒剣を突き出した。

 この一撃が読まれるとしても――それでもやるしかない!


 だが、僕の棒剣はワンの脇腹に突きこまれていく。

 けどその事で、僕はワンに接近していた。


 ワンが半分になった刀で、僕の首を再度打つ。


「がっ……」


 凄まじい衝撃が首から頭部、全身に走り、僕は倒れた。

 地面に倒れた僕は、身体を襲う衝撃に痙攣した。


「ぐっ――うぅ…ぐ――」


 指を立てて立ち上がろうとする。が、力が入らない。

 足の感覚がない。全身が、重化してないのに重い。


「見事だ、クオン・チトー……君を仕留めるためには、一撃をもらう覚悟がなければ駄目だと判断した」


 ワンの声がする。僕は上を向いた。

 血を流した脇腹を抑えながら、ワンが僕を見ている。


「馬鹿な――」


 こいつは……振動体に勝つために、敢えて自分を貫かせたんだ。

 そんな馬鹿なことができるなんて――


 僕は悔しさに歯噛みした。

 なんていう覚悟の違いだ。戦いの……勝利に対する、狂おしい程の執念。


 負けた。


 初めて敗北を意識した。


「クオン!」


 キャルが、倒れてる僕の元に駆け寄ろうとする。

 が、そのキャルに素早く近づいたワンは、手刀でキャルの首を打った。


「あ――」


 キャルが意識を失い、倒れようとする。

 その身体を、ワンが支えた。


「ポート!」


 ワンの声とともに、オレンジ色の髪の少女がテレポートしてくる。


「彼女を運んでくれ」

「は~い」

「キャルっ!!!」


 僕は叫んだ。キャルが――連れていかれる!


「――君は戦う気はあるか?」


 ワンはエリナを見て、そう言った。


「いや……みんなを治さなければいけない。私は戦わない……」

「では、さらばだ。――素晴らしい戦いだった」


 ワンはそう言うと、ポートと一緒に姿を消した。

 取り残された僕らは、ただ茫然とするしかなかった。


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