表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

171/239

4 ディギナーズの黒い痕


僕の言葉に、キャルは涙を拭いてしっかりした顔で頷いた。


「そうだね。わたしたち、何もないところから頑張ってきたもんね!」

「そうそう。なんだったらファフニールに忍び込んだ時みたいに、盗みに入ればいんだよ。全然、平気」


 エリナがそう言って、キャルを抱きしめた。

 盗みをしても平気というのは問題があるような気がするが、この場合は奪われたもの取り返すんだから、奪還だ。全然、問題ない!


「う~ん、久しぶりのキャルちゃんの感触! やっぱり可愛いわあ」

「もう……エリナってば」

「まったく、しょうがない奴だ」


 カサンドラが抱き合う二人を見て苦笑する。と、エリナが眼鏡の奥の眼をカサンドラに向けた。


「なんだカサンドラ、もしかして妬いてるのか?」

「妬くか! ホントにお前という奴は――」


 そんなやりとりをするエリナとカサンドラの感じに、僕はちょっと驚いていた。


「あの……なんか、二人仲良くなった?」

「一緒の部屋で暮らすうちに、二人は夜な夜な愛し合う関係に……」

「なってない! ――何を言い出すんだ、お前は!」


 エリナの言葉に、カサンドラが赤くなって怒鳴る。なんか、こんなカサンドラを見るのが新鮮だ。僕は思わず吹いた。

 気づくと、キャルも笑ってる。


 エリナは言った。


「な? 可愛い奴だろ、カサンドラって」

「ほんとね」

「まったく……キャルまで。勝手にしろ」


 カサンドラがちょっと拗ねる。うん、可愛いかもしれない。

 僕は改めて二人に言った。


「それにしても、よくこのタイミングで帰ってきたね。修行の成果は――あったみたいだけど」


 僕は倒れているディギナーズを見まわした。

エリナがキャルを放して、腰に手をあてる。


「私たちは帝都で修行してたんだが、バルギラのスペシャルクエストの公開は、実は帝都でも発信されたんだ」

「そうだったんだ」

「そしてそれが白夜の呪宝の入手と知って、すぐに戻ってくる手筈を整えた。ガルドレッド将軍に頼んで、部下の馬車で寝ずに走ってもらってパーティーハウスに着いたら、既に君らは出発してた」


 エリナの言葉に続いて、カサンドラが話す。


「それで馬車に頼んで、全速力でキグノスフィア迷宮近くの里にたどり着いたんだが、そこで負傷して治療中だったガドとスーに会ったんだ。二人から話を聞いた我々は、今からダンジョン山頂を目指すかどう迷っていたんだが、そうこうしているうちに空中を降りてくる影を発見した」


「そして駆けてつけたら、キャルちゃんが倒れてるじゃないか! うちのキャルちゃんになんてことを! ……と思い、頭にきて、剣士は不意打ちさせてさせてもらった」


 にっ、とエリナが笑う。

 ランスロットがそこで、口を開いた。


「それにしても……まさか麓でディギナーズが待ち構えているとはな」

「その事なんだけど――」


 僕はある考えに至って、それを話した。


「多分、僕らが呪宝を手に入れて里へ下りてくる。そこを奪う――ところまでが、バルギラの作戦だったんだと思う」


 みんなが、少し目を見開いた。


「クエストを発表して、僕らが慌てて動く。もちろん、他のパーティーが入手する可能性もあったろうけど……キグノスフィアが呪宝を持ってると確信してたバルギラは、キャルがそれを返してもらう可能性が一番高いって思ってたんじゃないかな」


「じゃあ、警護隊は――目くらましか?」

「実際に氷龍王を討伐してもよし。ディギナーズがキャルを拉致するのもよし。けどそれらが失敗しても、一番の目的である白夜の呪宝を手に入れるために、ビジョンとポートが里で待機してた。……そういう事なんじゃないかな」


 エリナが腕組みをした。


「う~む、そこまでして白夜の呪宝を手に入れたいのか。それはキャルちゃんを操る呪宝なんだろう? そこまでキャルちゃんの潜在力が高いのか……」

「キグノスフィアの話だと、青炎の力は、三力を凍らせる炎なんだって」


 僕がそう言うと、さすがにエリナとカサンドラが驚いた顔をした。


「キグノスフイアに会ったのか? そして話もした?」

「あ、うん……なんというか――また分体も連れてきた」


 僕がそう言うと、キャルのポーチからキグが顔を出す。


「キュー」

「「可愛い!」」

「マー」

「「可愛いが増えてる!」」


 と、カサンドラが素の顔に戻った。


「こ、この子も龍王…なのか?」

「うん」

「こ……こんな事が――。龍王が二体も……」


 まあ、絶句するよね。特に、元からこっちの世界の人なら。

 それをよそに、エリナは腕組みをしたまま呟いた。


「しかし、その青炎の力を手に入れて――バルギラはどうするつもりなんだろう?」

「その事だけど……ディギナーズが何か知らないかしら?」


 ミレニアが口を開く。みんなが倒れているハルトとスルー、カエデに眼を向けた。


「彼らに訊いてみるか。……あ、向うにシグマがいるから、あいつも連れてくる」


 僕はそう言ってから、ダッシュでシグマを抱えて戻ってきた。気絶してたから、軽化できたんで運ぶのは簡単だった。

 四人を並べて寝かせる。


「ところで僕、少し気になってるんだけど――」

「何がだい?」


 エリナが首を傾げた。


「この人たち、バルギラに洗脳されてるんじゃないかなって。ウェポンってめちゃくちゃな奴がいたんだけど、そいつはこのノワルドの人たちを未開人だって、見下してた。なのにバルギラだけ敬ってるんだ。凄く不自然だった」


 僕がそう言うと、ランスロットがすぐに声をあげる。


「俺もそう思ってたんだ、クオン。それで観察していたんだが――こいつらの左耳の後ろを見てくれ」


 僕らはしゃがみこんで、ディギナーズの顔をひっくり返す。

 カサンドラが呟いた


「何か……黒いものが付着しているな」

「これが何か、判らないか?」


 ランスロットに言われて、エリナは少し手をかざしていていたが、やがて口を開いた。


「これは霊具だな。呪具と言ってもいい。間違いない、これが精神に干渉を与える道具だ」

「除去できる?」

「やってみるか――そうだな、虫仮面が丈夫そうだから、こいつで試してみよう」


 僕の言葉に頷いたエリナが、シグマの耳裏に手をかざして霊力を発し始める。


「む……」


 シグマの耳裏が光り始める。と、エリナはその手を引き上げた。

 ずるり、と黒いものが出てきて、そこからさらに木の根のような黒い繊維が引きずり出されてくる。


「ひ……」


 キャルが怯えた声をあげる。が、エリナは構わず引き抜いた。


「やぁっ!」


 一気に引き抜かれた木の根のようなものは、空中に現れた途端にチリになって消えていった。


「ぬ…抜いたの?」

「ああ。かなり脳の方まで霊糸を伸ばしていた。……大丈夫かな、こいつ?」

「え? 大丈夫じゃない可能性あるの?」

「判らない。ちょっと起こしてみるか」


 エリナはシグマにさらに治癒術を施す。

 と、シグマの顔色がよくなり、不意にシグマは目覚めた。


「――ムッ! 此処は何処だ!?」

「いや、さっき戦った場所だよ」

「貴様はクオン! オレは……お前に敗れたはず――」


 シグマは状況が呑み込めてない様子だったが、放っといて、僕はエリナに言った。


「どうやら、大丈夫そうですね」

「うむ、そのようだな。他の連中のも除去しよう」

「クオン! 貴様、一体、オレの仲間に何をしょうとしている!?」

「あ~、もう…ちょっと貴方黙っててもらえます?」

 

 面倒くさくなって、僕はシグマに言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ