第二十九話 ディギナーズの逆襲 1 クオンvsビートライダーΣ
キャルは突然、自分の周囲の景色が変わったことに驚いていた。
「え? く――クオン!?」
辺りを見回すが、クオンはいない。
しかし、立て続けに人影が現れた。
ハルトと、ハルトを連れたオレンジ色の髪の少女。
少女の方はすぐに消えると、また現れる。
今度はスルーを連れている。そしてまた消えると、今度はカエデを連れてきた。
「あなたたちは……ディギナーズ――」
「キャルさん、というんだね? 申し訳ないが、我々と一緒に来てもらえないだろうか?」
丁寧な口調で、ハルトがそう告げる。
キャルは眼を剥いた。
「行くわけ……ないでしょ…」
「――だろうね。仕方ない、強引な手を使わせてもらうことになるが……一つ訊きたいんだが、君らは『白夜の呪宝』を手に入れたのかい?」
不意の質問に、キャルは表情を変えた。
と、その顔を見て、スルーが口を開く。
「あ、この子、嘘がつけないタイプだ。手に入れたみたい」
「判りやす」
カエデがくすりと笑った。
ハルトがあくまで、真面目な顔でキャルに告げる。
「では、行くが――覚悟はいいかね?」
「あなたたちにの思い通りにはならないわ!」
キャルは魔法輪を取り出すと、背後に火炎の花を輪にして浮かび上がらせた。
「大輪の蓮火!」
火炎の花輪が、ディギナーズの三人に襲いいかかる。
しかしその火炎撃を、カエデの魔導障壁が防いでいた。
「確かに凄い威力だけど1対3……じゃなくて、1対10でどこまでもつ?」
カエデが笑うと、その姿が次々に分裂する。
8人のカエデと、ハルト、スルーがキャルを取り囲んだ。
「それじゃあ、遠慮なくいかしてもらうから!」
カエデたちが電撃を放つ。
「魔導障壁!」
キャルは自分の周囲にバリアを張って、それを防ぐ。
「いつまで、もつかしら!?」
スルーが手を上げると、シャチのファントムが現れた。
シャチは体当たりをしたり、バリアに噛みついて魔導障壁を壊そうとしている。
「くっ……んん――」
キャルが苦しい表情を浮かべ、歯を喰いしばった。
「この戦力差では時間の問題だよ」
ハルトが向かって来て、剣をバリアに突き立てる。
気力の乗った剣に突き刺され、バリアが軋むように光りを放ち始めた。
「きゃあっ!」
バリアが破壊され、キャルが爆風に飛ばされる。
地面に転がったキャルを、8人のカエデが取り囲んだ。
「ね、もういいんじゃない? 諦めたら?」
「ふざけないで!」
「ふざけてるつもりは、ないんだけどな~」
そう言うと、カエデは人差し指をキャルに向けた。
「ちょっと痛いけど――我慢してね」
8人のカエデたちから、一斉に電撃が発射される。
キャルは慌てて魔導障壁を張るがその一部は防ぎきれず、まともに衝撃を受けた。
「きゃあぁぁぁっっ!」
キャルは悲鳴をあげた。
○ 〇 ○ 〇 ○ 〇 ○ 〇
「トゥッ!」
変身したシグマが、僕に跳び蹴りを放ってくる。
僕はそのキックを棒剣で受け止めた。
「くっ!」
凄い衝撃のキックだ。やっぱり、この人は強い。
と、シグマはそのまま空中で、連続蹴りを放ってきた。
「ダダダダダッ!」
「嘘だろ!」
そんな漫画みたいなこと、現実にできるわけないと思ってたのに――
重化している僕の身体が押されて、下がっていく。
まともに受けてたら、このまま岸壁まで押し込まれる。
僕はバネ脚で横に跳び、距離をとろうとした。
「逃がさんっ!」
すぐさまビートライダーΣのパンチが襲い掛かる。
僕の胸に、まともにパンチが直撃した。
「ぐぅっ! く――」
重硬化してるのに、衝撃が伝わる。気力もこもっているせいだ。
軟化して浸透ダメージを抜きたいが、Σの追撃がそれを許さない。
右、左、ミドルキックの足を引っ込めたと思ったら、そのまま前蹴り!
しかもそこからジャンプして、僕の顔面に跳び膝蹴りをくらわせる。
「ぐわぁぁっ!」
硬化してるけど、顔面に伝わるダメージに、僕は後ろにのけぞった。
「トゥッ!」
のけぞってがら空きになった僕のみぞおちに、Σが後ろ回し蹴りを放った。
「ガァッ――」
僕はたまらず吹っ飛ばされる。そして岸壁に、背中から思い切りぶつかった。
岸壁を少し破壊して空中に止まっている僕の身体が、地面へと落ちる。
「どうだ! 一対一でやれば、オレがお前に負けることはない!」
シグマは腰に手を当てると、崩れ落ちてる僕を指差した。
確かに……強い。今まで、重硬化できるようになってから、こんなダメージを受けたことがない。
このままじゃ負ける。――そう思った瞬間だった。
「――きゃあぁぁぁっっ!」
突然、絶叫が響いてきた。
キャルだ。キャルの声だ!
「キャル……」
僕は憤りに駆られて、よろめきながら立ち上がった。
「貴様ら――キャルになにかあったら…許さないぞ!」
「女を守ろうとするお前に、敬意を感じないわけじゃない。だが、戦いはシビアなものだ。この戦いは――オレたちが勝つ」
今までの戦い方じゃこいつに勝てない。
どうしたらいい?
「そろそろ、とどめをさしてやろう。心配するな、猫耳娘はバルギラ様がちゃんと保護してくれる」
都合のいい時に使う奴隷としてか。
そんなこと、絶対に許さない――
僕は怒りで爆発しそうに熱くなって、想い出した。
振動体だ。振動体になったら…どうなる?
「覚悟を決めろ、クオン・チトー! トウッ!」
Σが空中にジャンプした。そこで凄まじい勢いで回転している。
僕は軽化する。そして重化、すぐさま軽化、重化、軽、重、軽重軽重軽重――
「スパイラル・Σキーックッ!!!!」
Σのドリルのように回転しながら蹴りを放ってきた。
僕は――全身をとんでもないスピードで振動させている。
Σのキックが僕の胸を直撃した。その瞬間――
「ぐわおぅぅっ!」
衝撃ともともに閃光が放たれる。
そしてΣの身体が、飛んできた方向へと吹き飛ばされていた。




