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5 ディギナーズのビジョン


 アタック体制になった僕らは空中を飛行して、迷宮内を飛んでいた。


「そこを左に入ったところよ」


 左側にいるミレニアが、指を差す。その指示に従って、キャルが魔法でカーブを描く。


「よく、こんな洞穴の道順を覚えてるね、ミレニア」


 僕は感心して言った。と、ミレニアが軽く笑う。


「だって、他の三人が迷宮に入っても全然、道を覚えないんですもの。次第に慣れちゃったのよ」

「うちは、ミレニアの指示なしには動けないパーティーなのさ」 


 ランスロットがそう微笑する。

 ……いや、人の背中でそんなイチャイチャ目線で見つめあうのはどうなんでしょう。間に挟まれてるキャルも困ってるじゃないか。


「あ、あそこよ!」


 ミレニアが指を差すと、その先には光が差してる空間があった。

 飛んでいくと、洞穴に大穴が空いて、外の光が入ってきている。


「これが護衛隊がぶち壊して入ってきた穴?」

「ああ。行きは――なんか十字の羽のついた乗り物に乗ってきた。それに付いてる円筒型の兵器を発射させて、ダンジョンの壁を破壊したんだ」


 ……なるほど、ヘリで来て、ミサイルをぶっ放した訳だね。なんというか、ウィポンらしい。 


「よし、洞穴を出よう」

「うん」


 キャルはそのまま大穴から外に出る。

 ――と、僕らの前に素晴らしい景色が広がった。


 雪はすっかり止んでいて、外は雲一つない快晴だった。

 はるか先まで見える山脈の峰々に、白い雪が光り輝いている。


「凄い……なんて綺麗なんだ――」


 僕は絶句した。他のみんなも、その雄大な景色にうっとりしている。

 こんな大自然を前に、僕らは小さい存在でしかない。


 それなのに、なにか小さな理由で諍いを起こしてたり、戦ったりしてる――

 そんな風に思った。


「……戦いなんて、なくなればいいのに」


 ふと、キャルの囁きが聞こえた。

 僕は驚いて、少し背中を振り返った。


「あ……。なんでもないの」

「ううん。僕も今――そんなこと思ってたところだった」


 僕は笑ってみせた。

 キャルが嬉しそうに笑う。


 僕らは大自然の前では小さい存在かもしれないけど、それでも小さな笑顔の存在は僕にとっては、とてつもなく大きなものだ


 きっと――あの自然そのもののような氷龍王も、そんな力に惹かれて人間を愛したんだろう。


「帰ろうか……僕らの街に」

「うん。帰ろう」

「あ、その前に、里でガドとスーを探さないと」


 僕の言葉に、ランスロットが反応した。


「クオン、キャル――今回は、俺たちボルト・スパイクのゴタゴタに巻き込んで悪かった。俺は――ガドとスーが許してくれるなら…もう一度、ボルト・スパイクを再結成しようと思ってる」


「そんなの……ガドとスーだって、望んでるに決まってるじゃない。それに……今回はエターナル・ウィスルの人たちにも凄く助けられたな…。ああいう人たちが本当に強い人たちなんだなって――今回は凄く思ったよ」


「そうだな……俺たちも、もっと強くなって――あんな風になりたい」

「なれるよ、あたしたちなら!」


 ランスロットの言葉に、ミレニアが呼応した。もう、この二人は。

 僕はついに声にして二人に言った。


「どうでもいいけど、人の背中でイチャイチャすんのは、ほどほどにね!」

「あ……すまん」

「フフフ……じゃあ、降りるよ」


 軽く笑うと、キャルは降下を始めた。

 山の稜線に沿って、僕らは下へと降りていく。もう、地上が見える――そんな処まで来た時だった。


「――なにか来る!」


 ランスロットが緊迫した声をあげた。


 電撃弾だ! ランスロットが僕らの周囲に魔導障壁を作って防御した。

 しかし障壁に当たって爆発を起こすと、その衝撃が僕らにも跳ね返る。


「きゃあっ!」


 ぐらり、バランスが崩れ体勢が揺れる。


「キャル! 急速着陸だ! ミレニア、地上に着く寸前で障壁をクッションにして!」

「「判った!」」


 落下より早い勢いで、キャルが僕らを降下させる。

 地上に到着する寸前で、ミレニアが魔導障壁を張り、僕らの地上衝突ダメージを軽減した。


 アタック体制を解除して、僕らは地上に降り立った。

 周囲を警戒して、辺りを見回す。


「――地上へ無事ご帰還、なによりですこと」


 一人の女性が歩いてくる。

 紫の長い巻き髪を垂らし、胸元の開いたドレスを身に着けている。凄くスタイルのいい美女だった。


「クオン、あの女は……バルギラ公爵の秘書ビジョンだ。そして――ディギナーズの一員でもある」


 ディギナーズ? じゃあ、あの女も異能の持ち主!

 僕が女を見つめていると、女は艶然と微笑んだ。


「ランスロット副隊長は――どうやら、そちらに寝返ったようですわね?」

「寝返ったんじゃない。元に戻っただけだ」

「うふふ……愚かな決断をしましたこと。けど、仕方のないことですわね」


 ビジョンが微笑する。

 と、突然、辺りが暗闇に包まれた。


「な――突然、夜に!?」

「落ち着いて! 多分、これがあの人の異能だ!」


 僕は棒剣を持ち出すと、ビジョンに向かって突進した。

 何か仕掛けられる前に――仕留める!


「うふふ……坊や、焦っちゃダメよ」


 不意に僕の眼の前から、ビジョンが消えた。


「なに!? 何処へ行った?」


 僕は後ろを振り返る。キャルが驚きに眼を見開いている。

 が、そのキャルの姿が突然、消えた。


「な――」


 そこに現れたのは、ハルトの姿だ。


「しまった、位置入れ替え――」


 ハルトが剣を抜いて横ぶりに振る。

 それをランスロットとミレニアが、跳んで躱した。

 

 と、今度はハルトの傍にオレンジ色の髪をした、ツインテールの少女が突如現れる。少女はハルトの腕を持つと、再び消えた。


 ――あの少女もディギナーズか!


「くっ、ディギナーズのポートだ! 瞬間移動を使うとは聞いていたが――」


 そう口にしたランスロットの姿が消え、またハルトが現れる。

 そしてまたオレンジ髪の少女が現れ、ハルトとともに消えた。


「くっ! 位置入れ替えでは、そんな遠くではないはず! みんなを探さないと!」


 僕は残るミレニアの元に駆け寄ろうとした。が、その瞬間に、ミレニアのいた場所にハルトが現れた。


「くっ、ハルト! みんなを何処へやった!」

「それに答えるつもりはない」


 ハルトが剣を下から振り上げると、突風が僕を襲う。

 僕はコートシールドで、その突風から眼を守った。


「君の相手は私じゃない。我がままな奴がいてね」


 そう言うとハルトの傍に少女が現れ、その姿が消える。

 

「お前の相手はオレだよ! ――クオン!」


 そう言って歩いてきたのは――シグマだった。

 シグマが銀髪の髪をなびかせて、不敵な笑みを浮かべた。



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