5 ブランケッツ始動!
こうして僕らはパーティー名を『ブランケッツ』として、登録用紙を提出した。
ミリアが笑顔で対応してくれる。
「はい、じゃあ登録申請は受付ました。皆さんには登録テストを受けてもらいます」
「テスト? 何やるんですか?」
テストで能なしだってバレたらどうしよう。
「皆さんで、初歩クエストを受けてもらいます。ヒリアの薬草を3kgと、ヒモグラを10匹仕留めてもらいます。ヒリアの薬草はこれ――街から少し離れたダカン高原に生えてます。ヒモグラ被害は今、ダカン高原近くのナミキリ村のカミラさんから駆除の依頼が来てるので、そこへ行ってください。仮に10匹とれなくても、駆除自体が完了したらクエスト成功と見做します」
ミリアはそう言うと、ヒリアの薬草らしき絵が描かれた小さな用紙をくれた。
これとモグラを10匹――か。僕はエリナとキャルを見た。みんなで頷く。
「ところで、地図は持ってますか?」
「あ、いや持ってません」
「周辺地図は必須ですよ。一枚1000ワルドですが、購入しますか?」
「お願いします」
1000ワルドを出して、地図を購入する。
「ヒモグラは地下にいて探しにくく、発見すると火を吐いて襲ってきます。初級モンスターに数えられますけど、それなりに危険なので気を付けてください。武器が必要なら、イリアの店の隣がラモンの武具屋ですので、そこに行くといいですよ。目標達成したら、獲物を持って隣の交換所に行ってください。そこで報酬を受け取ったら、クエスト完了と同時にテスト合格となります」
その言葉に、エリナが口を開いた。
「報酬出るの?」
「はい、出ますよ。クエスト報酬が10000ワルド。薬草は1kg=1000ワルド。ヒモグラは一体で1200ワルドですね」
「順調にいけば10000+3000+12000で25000ワルドかあ」
今の僕らにとっては、貴重な財源だ。
「みんな、頑張ろう」
「うん」
僕の言葉に、キャルが真剣な顔で頷いた。
「――じゃあ、これで登録申請は受け付けました。皆さん、頑張ってくださいね」
ミリアはそう言うと、にっこりと微笑んで僕らを送り出した。
ギルドを出ると、僕らは立ち止まって相談した。
「さて、どうする? まず薬草の方から行こうか?」
「あ、それよりもまず、武具屋に行ってみたいんですが」
エリナの言葉に、僕はそう答えた。
「ヒモグラってのが、一応モンスターなわけだし……キャルが使う魔法の道具とかあるんじゃないかと思って」
「おお、そうだな。道具があれば詠唱なしで魔法使えるんだっけ?」
「確かにそうですけど――貴重なお金をわたしのために使うのは……」
キャルが恐縮するのを、僕はとめた。
「いや、キャルの魔法が一番頼りかもしれないんだ。仮に今、購入できないとしても、将来的にどれくらいあればそういう装備が買えるのか、見ておいた方がいいと思って」
「そう……だね」
キャルはそう言うと、微笑んだ。
それから僕らは、武具屋に足を運んだ。
「いらっしゃい!」
店の主人は屈強な体格のおじさんで、大きな声をあげた。
「何かお探しかい?」
おじさんが近づいてくる。この人がラモンさんなんだろう。
「あの…ギルドのミリアさんに紹介されてきました。今から登録テストを受けるんですけど、ヒモグラ退治にいい武具とか魔法具ってありますか?」
「おお、ミリアちゃんね。で、お前さんたちは新人冒険者ってことかい。いいねえ、若者は。ヒモグラってのはな、夜に活動するんで昼間は一ヵ所で寝てる。それを掘り起こすんだ。地下で寝てるヒモグラを見つける方法は三通り。
1、微弱な気力を探知する
2、熱源探知魔法で探知する
3、微弱な霊気を探知する
――だ。お前さんたちはどれを使う?」
ラモンにそう訊かれ、僕たちは顔を見合わせた。
「熱源探知の魔法を詠唱で使うのは難しいかもです……」
キャルがそう言う。
「魔法を使うなら熱源探知魔法が刻印済みの指輪があるぜ。そこに並んでる」
ショーケースを見ると、色んな魔法を書いたプレートと、指輪が並んでいる。とても綺麗だ――が、最低でも3万ワルド以上する。熱源探知魔法は、3万4980ワルドだった。
「ちょっと買えないですね……」
「――よし! 此処は私が霊力で探すことにしよう!」
がっかりしたキャルの声をとりなすように、エリナが明るい声を上げた。
ラモンが続けて口を開く。
「じゃあ、ヒモグラを見つけたとして、それを掘り出す。しかしある程度掘るとヒモグラが察知して、急に飛び出してくるんだ。そして掘ってた奴に火を噴く。これを防ぐ必要がある。掘ってる奴は、防御できなきゃいけない。それが無理なら、傍にいる誰かが防御する。それで、飛んだところを後ろから攻撃して奴を仕留める。――っていうのが、大体の筋道さ」
「なるほど。三人がやはり必要ですね」
僕の言葉に、ラモンは軽く笑った。
「まあ、自分で探して、守れて、攻撃できる奴にはなんでもない事だけどな。けど新人冒険者パーティーには、冒険に何が必要かを教えるいいクエストさ。そうだな、お前さんたちに最低でも必要なのは、薬草を入れる袋。それからヒモグラ十体を運ぶためのキャリーかな。これだ」
そう言って出してきたのは、大きめのトートバッグと、トランクを運ぶときに使うような、金属でできた車輪つきのキャリーだ。キャリーには、網とロープがセットになっている。
「まあ、これが新人セットだ。この袋いっぱいに薬草を入れれば、大体3kgでクエスト完了だ。こっちは捕まえたヒモグラを網で包んで、ロープで縛って運ぶ。後はそうだな――火を防ぐ念動力か力場魔法が使えるんならいらないが、そうでないなら盾が必要だ。盾はこっちだな」
盾を色々出してきた。金属製で豪奢な奴もあれば、大半が皮製のものもある。けど、その皮製の弱そうな盾でも、25000ワルドと値札があった。
「後は武器だが――」
「あ、武器はあるんで大丈夫です。……ちょっと、みんなで相談します」
「おう、まあ決まったら、声かけてくれ」
ラモンはそう言うと、僕たちから離れた。僕たちは顔を突き合わせて相談する。
「武器は家に戻ったら、剣があるからいいと思う。けど、袋とキャリーは必要じゃないかな?」
僕が言うと、エリナも頷いた。
「うん、そう思う。え~と、袋は2360ワルドで――キャリーは13800ワルドか。
最初にあったお金が34560ワルド。そこからキャルの服を買って、19160ワルドになった。さらに地図を買って、18160ワルドになっている。
「袋とキャリーセット合わせて16160ワルド。残金は2000ワルドか」
「……やっぱり、わたしの服が高かったんじゃ――」
「ばっちりだな!」
キャルが申し訳なさそうな声を出した時、エリナが声をあげた。
「見事に必要な物が買えたじゃないか。ばっちりって事だ」
「けど、これじゃあ盾が買えません」
「あ、その事なんだけど、僕に考えがあるんだ」
僕は言った。さっき、僕は不意に閃くものがあったのだ。
「多分、だから大丈夫だよ。心配しないで」
「クオン……」
僕が微笑むと、キャルが僕を見つめた。キャルが、微笑して頷いた。
「よし、じゃあ買い物をしていこう。残ったお金は、食料でも買おうか」
「そうですね。そうしましょう」
そう相談が決まり、僕たちは袋とキャリーを買って、ラモン武具店を後にした。
後は街を歩き、パン屋さんでパンを買う。そして肉屋に行き、ハムを買った。
パンがバゲット2本で700ワルド。ハムが一つ1200ワルド。
残りのお金は100ワルドになってしまった。けど、僕らはなんだか満足だった。
帰り道、街から離れて森に入ると、エリナが嬉しそうに口にした。
「いやあ、盗まないでパンを買えるってのはいいもんだな。やっぱり、安心だ!」
そうして僕らは、家に帰り着いた。キャルが口を開く。
「ね、盾の事、考えがあるって言ってたけど――」
「うん。実は……ちょっと作ってみようと思ってるんだ」
僕はそう答えた。
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