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3 ランスロットの逆襲


 倒れながら発射されたルイン・バスターの光線が、僅かにキグノスフィアを逸れる。光線はただ洞穴の岩壁を虚しく破壊したにすぎなかった。


「き、貴様! やってくれたな!」


 ウェポンが怒りで顔を真っ赤にして怒鳴っている。

 が、僕は無視して巨大な円筒を見つめた。こいつを破壊しないといけない。


 地面を軟化させる時、最初は円形だった領域を縦長の線に変えて軟化領域を伸ばした。あの線状の軟化の力を、剣のように使えないか?


「軟化ブレード!」


 僕は軟化の力を線状に伸ばすことを意識して、巨大な円筒にまっすぐ振り下ろした。イメージは豆腐のように軟化させること。

 どうだ? ――と、思った時、巨大な円筒が、真っ二つに折れた。


「なに!? 貴様、何をやった?」

「もう、お前に機械は作らせない!」


 僕は軟化ブレードで、円筒を滅多切りにする。巨大な円筒は、バラバラの機械の塊になった。


 その間にランスロットは動いている。

 ランスロットは素早くミレニアとキャルのリストレイナーを小さい電撃魔法で破壊すると、ウェポンに向かって剣を向けて突進していた。


「ウェポン! 貴様だけは許さん!」


 ランスロットの突きを、ウェポンの魔導障壁が止め、二人のエネルギーがスパークを起こす。


「この――未開人風情が! ぼくの力を忘れたのか!」


 壊した機械がうごめきだし、再びドローンになろうとしてる。

 だがそれを僕は、軟化ブレードで次々に破壊していった。


「ランスロット! こいつに機械は作らせない!」


 僕はランスロットを見た。剣を突き出しているランスロットが、僕を見て頷く。


「お前たちの好きにさせるか!」


 シグマが声をあげて、ビートライダーΣに変身した。ランスロットを攻撃しようとする身体に、火炎弾が連続で炸裂する。


ミレニアが魔法で攻撃をしていた。


「ランスロットの邪魔はさせない!」

「あなたたちには、じっとしててもらう」


 キャルがそう言うと、大きな魔導障壁のバリアでハルト、カエデ、スルーの三人を包み込んだ。ハルトが剣で斬りつけるが、キャルの魔導障壁が強力で破ることができない。


「こ、これほどの魔力とは……」


 呆然とするハルトに、ウェポンが怒鳴った。


「お前たち、何をしている! 早くこいつらをなんとかしろ!」

「――お前のために死力を尽くすような仲間がいるか?」


 ランスロットが剣を魔導障壁にじりじりと押し込みながら、ウェポンに言った。

 ウェポンの顔色が変わる。


「く、くそ、この未開の野蛮人どもめ! その気になればぼくの魔力で、お前くらい倒してやる!」

「お前の魔力量は確かに高い。だが、それだけだ。お前の魔法には芯がなく、脆弱だ。お前は異能の機械の力に頼っていて、自分の腕を磨くことをしていなかった。だからお前の力には、底力がないんだ」


 ランスロットの剣が、魔導障壁を突き破り、ウェポンに触れそうなところまで侵入する。ウェポンの顔色が変わった。


 こちらを見て何とか機械を作ろうとするが、それを僕が片っ端から破壊する。 

 命のないものなら、僕が破壊できる。


「ま、待て……バルギラ様に言って、お前を隊長にとりたててやる。だから、この場は剣を納めろ。そうだ、キグノスフィアの討伐をやめてもいい。なに、元々、大して興味はなかったんだ」

「お前の力は――この世界に存在してはならぬものだ!」


 ランスロットの全身が金色に光り、それが前進に向けて凄まじい力を放射している。ウェポンが怯えの表情をみせた。


「や、やめろ、未開人の分際で――ぼくにたてつくなぁっっ!」

「滅せよ、ウェポン! 稲妻閃光突(ボルト・アタック)!」


 バン、と魔導障壁が弾け、ランスロットの剣がウェポンの胸を貫く。

 そのままの勢いで閃光と化したランスロットはウェポンの身体を押し込み、離れた場所の岩壁にウェポンを串刺しにした。


「あ……あ…ウ、ウソだろ――ぼくが、こんな奴らに……」


 ランスロットの剣に串刺しにされたウェポンが呻く。

 と、その首ががくりと下を向いた。


 ランスロットが、静かに剣を抜く。

 と、岩壁からウェポンの身体が、力なく地面に落ちた。


「ふぅ……」


 ランスロットが息をつく。と、そこにミレニアが駆け寄っていく。


「ランスロット、やったね!」

「ああ、ミレニア。ようやく、終わりだ」


 ランスロットが笑顔を見せた時、倒れていたウェポンがもぞり、と動いた。

 いけない、まだそいつは生きている!


 僕が声をあげようとした時、ウェポンの手が微かに上を向いた。

その手には――銃が握られている。あの照準器だったものを、本物の銃に改造している。


「ランスロット、危ない!」


 僕は声をあげて走ろうとした。しかし、そこまでは距離が離れている。

 地面に寝たままのウェポンが、瀕死の顔でニヤリと笑った。


 銃声が轟く。


 一瞬のことだ。だが、胸を撃たれたミレニアが倒れていくシーンを、僕はスローモーションのように見ていた。


 ミレニアに突き飛ばされたランスロットが、驚きの表情でミレニアを見ている。

 ミレニアを撃った弾丸は背中まで貫通し、背中の服を血に染めていく。


 ゆっくりと――ミレニアが地面に倒れた。


「ミレニアァァッッ!!」


 ランスロットが叫び声をあげた。

 後ろを振り返り、もう一発撃とうとしているウェポンに怒りの表情を向ける。


 ランスロットの手から電撃弾が発射された。


「ギャアァァァァァッッ!」


 電撃弾が爆発し、その爆風でウェポンの身体が吹っ飛ぶ。

 力なく宙を舞ったウェポンの身体は、ダンジョンの深い崖の奥へと落下していった。


「ミレニアッ、しっかりしろ!」


 ランスロットがミレニアに駆け寄り、その身体を抱き上げた。

 ミレニアが唇の端から血を流しながら、微笑する。


「へへ……ランスロット…大丈夫だったよね…」

「ああ、俺は大丈夫だ。お前のおかげで、俺は無傷だ」

「やっと……あたし…役にたてたかな――なんか…足ばっかり引っ張っちゃってさ……」

「そんな事はない! 俺は……お前が傍にいてくれたから、ずっとやってこられた。お前がこれからも――ずっと必要だ!」

「へへ……うれ…し――」


 ミレニアは微笑を浮かべると、そのまま眼を閉じてうなだれる。

 異変に気付いたランスロットが、大声をあげた。


「しっかりしろ、ミレニア! こんな処で、俺を置いていくな! ミレニア、眼を開けてくれ!」


 ……嘘だろ。

 ミレニアが……まさか――


 考えたくない事実に僕が震えている時、不意に空間と頭の中、両方に響くキグノスフィアの声が響き渡った。


「諍い、争いを止めぬ愚かな人間ども――今すぐ、この世界から消えよ!」


 ルイン・バスターの威力で腹に穴が空いているキグノスフィアが、怒りの声とともに凍結波を放った。

 荒れ狂った吹雪以上の凍結波が、辺り一帯を襲う。


「キグノスフィア、待って!」


 キャルがディギナーズへの魔導障壁を解き、凍結波を防ごうとする。

 その反応に追いつけなかったディギナーズが、一瞬にして凍り付いた。


 そしてミレニアを庇うように抱いた、ランスロットたちも凍り付く。


「――キャル!」


 僕は叫んだ。が、キャルの魔導障壁が破られ、キャルの身体が氷と化す。


「キャルゥッ!!」


 そして僕の身体も――一瞬にして氷の中に閉じ込められた。


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