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2 氷龍王の怒り


 巨大だった――。

 優に十階建てのビルくらいの高さはある、真っ白な身体。


 鳥が立つような姿勢でこちらを見下ろしている氷龍王キグノスフィアは、それでも鳥とも他の飛竜とも決定的に違う点があった。


 双頭の龍だ。二本の長い首を持ち、その先端に細く尖った感じの龍の頭がある。その後頭部から斜め上に伸びる一本の後角。首の辺りには白いたてがみのようなものが下がっていた。


 その二つの頭の上に、たたんだ翼の先端が見える。鳥ともコウモリとも違う翼で、キグノスフィアは一度その翼を大きく広げると、再びたたんだ。その際に、これも二本の長い尻尾が揺れる。


 ゆっくりとその双頭を下げて、キグノスフィアは真っ青な眼で僕らを見つめた。

 ……美しい、と思った。


 威容であるが、大理石でできた神像のような冷たい美しさを持っている。

 けれどその白目のないサファイアのような瞳を見ると、それが確固たる存在だと判った。


「ヒト族よ、何故、ワタシたちを傷つけるのか?」


 女性の声が聞こえてきた。が、それは音声であると同時に、直接、頭の中に響いてくるような不思議な感覚だ。


「何故、人が竜を退治するのに理由がいるのか? それが物語のお決まりだろ」


 ウェポンが嘲るような声を出した。この姿を見ても畏怖するどころか、まだ侮る姿勢を変えない。物凄い神経だ。


 ウェポン以外の人は、隊員やディギナーズも含め、皆、その存在感に圧倒されていた。ウェポンだけ、どこか感じ方がおかしいとしか思えない。


「ワタシを殺して……お前たちの何になるというのだ?」

「神話の時代の終わりを告げるのさ」


 ウェポンが手を上げる。と、ドローンが一斉にキグノスフィアを攻撃した。

 が、その銃弾は氷のような力場障壁によって阻まれている。


「……愚かな。その愚かさの代償は、自らで受けるがよい」


 双頭の龍が口を開いた。

 その口から凄まじい氷結波が発射される。


「うわぁぁっ!」

「た、隊長!」


 氷弾まじりの吹雪に、隊員たちが悲鳴をあげる。

 ディアッドが声をあげた。


「怯むな! 特殊銃で撃て、頭を狙え!」


 隊員たちが銃を向けて乱射する。50人に近い兵隊の銃が、一斉に火を噴いた。

 弾丸が頭部に集中している。その障壁が突破されるかと思った瞬間、キグノスフィアは大きな翼を翻した。


「思い上がるな、人間ども!」


 翼の一振りで、凄まじい突風が起きる。

 隊員たちの大半が、それに吹き飛ばされて岩壁に身体をぶつけた。


 空中にいたドローンも同じように吹き飛ばされて、岩壁に激突し落下する。

 ディアッドが声をあげた。


「司令官! 敵の戦力は想像以上です! 撤退しましょう!」

「想像以上? 何、言ってるの? 全然、想像圏内だけど」


 ウェポンは小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 その様子に、さすがのディアッドも怯えた表情をみせた。


「しかし、もうこちらには打つ手がありません」

「あるさ」

 

 ウェポンがにやりと笑うと、歩行機械の上に立って両手を広げた。

 撃墜されたドローンが一ヵ所に集まり出して、融合していく。


「龍王には、特別な兵器を用意してるのさ」


 ウェポンはそう言うと、凶悪な笑みを浮かべた。

 と、その時、悲鳴が上がった。


「うあっ、なんだこれは!」

「は、離れないっ!」


 隊員たちの身体に、何かとりついている。

 特殊銃だ。特殊銃が変形して、彼らの腕から巻きこんで、胸、首まで覆う機械に変形していってる。


「ウ……グゥゥム――」


 やがてその機械は隊員たちの口を覆った。隊員たちは呻き声をあるた。


「な……何をしてるんだ…」


 ランスロットが青ざめた表情で声を洩らした。

 その間に、集まったドローンは一機の巨大な機械になった。


 土台を持ち、その上に巨大な円筒を乗せたような形。円筒はバスほどの大きさがある。

 その円筒が斜めに傾き、氷龍王の方を向いている。


「さ~て、特殊光線砲『ルイン・バスター』を御披露するか」


 ウェポンの手には、銃身が短いオモチャのような銃が握られている。

 そのオモチャの銃をキグノスフィアに向けると、巨大な円筒の方も動いた。


「あれは……照準器なのか」


 僕は恐ろしい予感を感じて、こっそり手錠を軟化して外した。

 シグマは事態の推移に慄いて、僕のことに気付いていない。


「エネルギー充填80%」


 ウェポンが愉快そうに言う。と、機械に上半身を覆われた隊員たちが、ふさがれた口で悲鳴をあげた。


「ムグゥゥッ! グゥゥーーッ!!」


 隊員たちが苦し気な顔で悶絶し、次々と倒れていく。

 とりついた機械は赤いランプを明滅させ、それに呼応するように巨大円筒の横のゲージが、次第に赤い色を増していた。


 明らかに――隊員たちから、エネルギーを吸い取っている。


「貴様! 隊員たちに何をしている!」


 ランスロットの怒声に、ウェポンは薄笑いで答えた。


「三力の源である命力をもらってるのさ」

「今すぐ止めろ! みんな死んでしまうぞ!」


 ウェポンはランスロットを侮蔑の表情で見た。


「あ? だからなんだって言うんだ、この未開人が! そもそもドローン以下の戦力しかない未開人どもを、何のために連れてきたと思ってるんだ? ルイン・バスターのエネルギー源になってもらうために決まってんだろうが!」


 ウェポンはそう言うと、愉快そうに笑い声をあげた。


「さ……最初から、捨て駒のつもりで隊員たちを――」


 ランスロットの唇が、衝撃の大きさに震えている。


「――ムゥッ! ウグゥッ、ウウグゥッ!」


 突如、そのランスロットに助けを求めるように、一人の隊員がランスロットにしがみついた。

 それは機械に口をふさがれたディアッドだった。


「ディアッド……」


 ランスロットは驚愕のあまり声を失っている。そのランスロットの目の前で、ディアッドの顔が急速に皺だらけになり、髪が白髪になって抜けていった。


「エネルギー充填、120%! ルイン・バスター発射!」


 巨大な円筒から、凄まじい火力の光線が一閃する。


 キグノスフィアの氷障壁が一瞬、光線を止める。

 が、その障壁はガラスのように破られた。


「氷龍王!」


 巨大な光線が、キグノスフィアの身体を貫いて、後ろの洞穴を破壊した。


 悲鳴とも怒号ともつかないキグノスフイアの声が、空間と頭の中、同時に響き渡る。キグノスフィアは苦しそうに悶えながら、なおも双頭から氷結波を噴き出した。


 しかしウェポンは魔導障壁を張って、その氷結波を防御している。そしてウェポンは、声をあげた。


「ハハッ! 苦し紛れの抵抗か! もう一発お見舞いしてやるぞ!」


 ウェポンが照準器を掲げると、断末魔に似た最後の呻き声が隊員たちが響いた。


「エネルギー充填100% よし――」


 ウェポンが照準器を構えた時、僕はバネ脚ダッシュを繰り出した。

 シグマは反応できてない。


 僕はランスロットの首のリストレイナーを軟化させて破壊すると、巨大円筒銃に向かった。ウェポンが気づいて声をあげる。


「な、なんだ貴様、何故ここにいる!?」

「重硬タックル!」


 僕が体当たりをくらわせると、円筒銃が倒れながら光線を発射した。 


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