2 ガド、撃たれる
「ランスロット!」
ミレニアは走るランスロットを追いかけながら、声を上げた。
ランスロットは僅かにスピードを緩めて、ミレニアに並ぶ。
「ランスロット、本気なの? キャルちゃんを――引き渡すって」
ランスロットは走りながら口を開いた。
「……お前も見ただろう。アイアン・ロアのガガロアは、性格は最悪だが一流のAランク戦闘者だった。他のメンバーもそうだ。――あの連中がああも、あっさりやられる兵器に……太刀打ちできるわけがない。クオンやエリナたちを生き延びさせるには――キャルを渡すしか選択はない」
ランスロットはミレニアの顔を見ずに、そう告げた。
ミレニアがさらに問いかける。
「けど……そんなのクオンが納得すると思う?」
「納得させるしかない。そうでなければ――殺される」
ランスロットはミレニアの顔を見ずに、走り続けた。
「たとえ裏切り者と言われても……俺は皆に死んでほしくない。キャルは捕獲対象だから殺されることはない。生きていれば――なんらかのチャンスがくる時が来る」
ランスロットは自分に言い聞かせるように、走り続けた。
○ 〇 ○ 〇 ○ ○ ○ 〇
僕たちは飛び去った飛竜を追いかけてアタック体制で飛んでいた。
その眼の前に、何かが飛来してくる。
「何か来る!」
僕らの前に飛んできたのは――機械だった。
驚いた事に、それは四つの脚の先にプロペラをつけたドローンだ。
「ドローン? 何故……こんなところに?」
「なんだ、クオン、この機械知ってるのか?」
ガドの問いに僕は答える。
「ドローンという、僕の前の世界の機械だ。何故、この世界に――」
「捜索対象発見。ただちに引き渡しを要求します」
ドローンは、不自然なまでに落ち着いた女性の声を発した。
「要求に従わない場合は、攻撃を致します」
なんだって?
「キャル、離れて!」
キャルがその場から飛び去ろうとした時、ドローンの下腹部についている機械が、ガチャリと音をたてて展開した。――ガトリングだ!
「スー、結界!」
「え? はい!」
スーが結界を張ったが、ドローンが構わず銃撃してくる。
凄まじい銃撃だ。
「きゃあっ!」
威力に耐えきれず結界が一部破られ、それがキャルの肩をかすめた。
「キャル!」
僕らは地面に落ちる。
だが、その僕らに向けて、ドローンが音声を発した。
「捜索対象以外の――妨害者は排除します」
ガトリングが凄まじい威力で火を噴いた。
まずい! 僕はコートでキャルを覆った。
「防御して!」
僕はガドとスーに叫ぶ。ガドが倒れ込んだスーの前に立ちはだかった。
銃撃の連続発射音が鳴り響き、銃弾の嵐が僕らに降り注いだ。
「ぐぅっ!」
最大に硬化してるのに、コートから衝撃が直に伝わる。
こんな威力のもの、今までに感じた事ない。けど、これじゃあガドは――
「ガドォッ!!!」
見ると、ガドの身体が被弾の衝撃で揺れている。
「こいつっ!」
僕は棒剣を放ち投げで投げた。
飛んだ棒剣が、ドローンを串刺しにする。
「妨害者を……ハイ…ジョ……」
ドローンが音声を発しながら、地面に落ちた。
「ガドぉぉっっ!」
僕は倒れたガドに駆け寄った。意識がない。
見ると、全身が血に染まり全身に被弾している。その時、キャルが声をあげた。
「クオン! スーも!」
見ると、スーも被弾したらしく、胸が血に染まっていた。
恐らく、庇ったガドを貫通して銃弾が当たったのだ。
「こ、こんな……」
僕は呆然とした。――一体、何が起こっている?
あのドローンは一体、なんだ?
いや、それよりも、まず二人を救わないと。
どうする? どうしたらいい!
「キャル! 二人を――あの人たちの処まで連れて行こう!」
「あの人たち……さっきのAランクパーティーね!」
僕は意識のないガドとスーを担ぎ、キャルに背中に乗ってもらう。
「行こう、キャル!」
「うん!」
僕らは飛び立った。
来た道を、とにかく戻る。
いた! Aランクパーティー『永遠の口笛』だ!
「すいません! 助けてくださいっっ!」
僕らは飛行しながら呼びかけた。
驚きの顔で見上げるエターナル・ウィスルの前に、僕らは降り立つ。
「クオン……どうし――」
レガルタスが口に仕掛けて、僕が抱えているガドとスーを見て、事態を察した。
「ジージョ、治癒を頼む」
「フォッフォッ、承知」
太目プリーストのジージョが、チョビ髭を撫でると二人を見た。
「フム……女性の方が致命傷ですな。まずは、こちらを――」
ジージョが手から光を出し、治癒を始める。
僕はとりあえず、息をついた。
その僕に、レガルタスが問いかけてくる。
「……一体、どうしたブランケッツのクオン?」
「判りません。急に現れた機械に襲われたんです」
「これは問題ですな」
その時、治癒をしていたジージョが声をあげた。
「どうしたんです?」
「この場では完全な治癒はできません。身体の中に、銃弾が入りこんでおる。このまま治癒してしまうと、銃弾を身体の中に残してしまう」
僕はジージョに訊いた。
「どうしたらいいんですか?」
「一度、里に下りて、外科的方法で銃弾を取り除き、それから改めて治癒術を施す――のがよいでしょうな。この場では、とりあえず致命傷だけを治す方がよいかと」
ジージョがそう説明した時、その場に走りこんできた影があった。
「――ランスロット!」
「無事か、クオン! キャル!」
僕はランスロットを見た。ひどく走ったらしく、肩で息をしている。その後から、ミレニアも走ってきた。
「ランスロット、僕らは平気だ。けど……ガドとスーが――」
僕の声に、ランスロットは倒れているガドとスーに気が付いた。
「ガド! スー!」
ランスロットとミレニアが、二人に駆け寄る。僕はその背中に言った。
「ドローン……機械の兵器が飛んできて、突然、僕らを攻撃したんだ」
ビクリ、としたランスロットが振り返る。その顔には苦渋が浮かんでいた。




