第二十六話 無人攻撃機 1 アイアン・ロアvs開都護衛隊
突如現れたアイアン・ロアの襲撃に、シグマが声をあげた。
「なんだ貴様ら! 許さんぞ」!」
シグマの姿が、ビートライダーΣに変身する。他のディギナーズも戦闘態勢に入った。
が、そこでウェポンが声をあげた。
「なんだい、君達は? いわゆる冒険者かい?」
黒髑髏の仮面が、その声に応える。
「オレたちは『鉄の咆哮』。命が惜しけりゃ、此処から撤退しな」
「フン、未開人の上に異民のパーティーか。身の程を知らないようだな」
ウェポンは小馬鹿にしたように、あからさまに相手を見下す視線を送った。
「司令官! 奴らはアイアン・ロアというAランクパーティーです! 奴はリーダーのガガロア。冒険者のなかでは実力者の連中です」
ディアッドがウェポンに進言する。しかしウェポンは、嘲りの表情を浮かべたままだった。
「実力者? 所詮、未開人だろ?」
ウェポンが両手を上げる。と、自動歩行機が姿を変えていく。
それは次々と4枚のプロペラのついたドローンへと変わっていき、空中へと浮かんでいった。
「な、なんだ、機械が勝手に動いていく!?」
黄色の長髪魔導士が、驚きの声をあげた。
変形が終ったところで、ウェポンが声を出す。
「フン、30機くらいか。まあ、充分かな?」
ウェポンが片手をあげた。
と、ドローンに備え付けられたガトリングが、一斉に火を噴いた。
「グアアァァ……」
ケンタウロスが銃弾を全身に喰らい倒れていく。
「バ、馬鹿な! こんな威力だと!?」
黄色の長髪魔導士が、魔導障壁を展開しながら慄きの表情を浮かべた。
「ふ…防ぎきれ――」
ガトリングが魔導障壁をぶち破り、魔導士をハチの巣にする。
「なんだと!? 散開しろ!」
ガガロアの指示で、ワニ頭と狼耳が素早く移動する。
が、ウェポンが愉快そうに声をあげた。
「無駄だよ。自動追尾にしたからね」
ワニ頭と狼耳が移動した先に、30機のドローンが追尾している。
と、ドローンのガトリングが火を噴き、二人はたちまち全身に被弾して地面に倒れた。それを見たガガロアが声をあげる。
「ガーゴ! ロボ! ……貴様、一体、なんだその能力は!」
「お前、うるさいよ」
ウェポンはガガロアを指さす。と、30機のドローンから銃撃され、ガガロアの上半身が消し飛んだ。
「未開人の分際で、ごちゃごちゃうるさいんだよ」
ウェポンはそう吐き捨てた。と、頭上から、飛竜たちの氷槍が降り注ぐ。
ウェポンは不機嫌さを丸出しにして、頭上を見上げた。
「デカいトカゲの分際で空など飛びやがって! トカゲは地上を這ってればいいのさ!」
ウェポンが手を掲げた。と、ドローンについているガトリングが、一斉に火を噴いた。
「グギャアァァーッ!」
飛竜が悲鳴をあげながら、次々と地面へ落ちていく。
その中には、頭が無くなったものや、胴体が半分になったものまでいた。
「バカな……Aランクパーティーのアイアン・ロアが全滅だと…? それに飛竜までも――す……凄まじい威力だ――」
ランスロットが呆然と呟く。ミレニアがその隣で、不安そうな表情をみせた。
「やれやれ、とんだ邪魔が入った。さてトカゲの親玉を目指すかな。10機は逃げていった飛竜の後を追え」
ウェポンがそう命じると、10機のドローンが飛竜が飛んだ方向へと飛び去る。
「さて、ボクの乗り物を作るか」
ウェポンは残った素材に手を向けると、それを変化させ始めた。機械の残骸が変形していき、それは一人乗りの二足歩行機へと変貌した。ウェポンはその剥き出しになっているコックピットに、浮遊魔法を使って搭乗する。
「さ~て、勇者様が龍退治をする番だ」
ウェポンはニヤリと笑った。と、不意に何かに気付いたように声を上げる。
「――そういえば、猫耳を捕らえろって話だったな。10機、下の階層に行って探してこい!」
命令を受けたドローンが10機、迷宮の奥へと飛んでいく。
「おい! 猫耳の確保は我々の最優先事項だぞ!」
チェンジが抗議の声をあげる。ウェポンは小馬鹿にしたように笑みを浮かべた。
「まあ、ドローンが見つけたら教えてやるよ。設定は――猫耳以外は銃撃、と」
ウェポンがコックピット内にある画面を操作する。
それを聴いたランスロットは慌てて声をあげた。
「ちょっと待ってくれ! その猫耳というのは――ブランケッツのキャルのことか!?」
「あぁ……確かそうだ、『ブランケッツ』とかいうパーティーだ。純白の猫耳少女だって話だったな。バルギラ様の話では、絶対、このダンジョンに来てるってことだ」
ウェポンが薄笑いを浮かべた。
ランスロットは、身体の芯から恐ろしさを感じながらなおも言葉を続ける。
「猫耳少女以外は……射撃するだと? 無差別にか……?」
「そうだねえ…多分、抵抗するだろうから? まあ、自動攻撃だよ」
ランスロットの全身に冷たい汗が流れた。
「待ってくれ、待ってくれ! 頼むから、銃撃は解除してくれ!」
「何を言ってんのさ、君。――なんだっけ? ランスロット副隊長? 任務の邪魔するの?」
「あんな機械に攻撃されたらひとたまりもない……。頼む! 銃撃を止めさせてくれ! それにその設定では、誰も彼もを虐殺しまくるんじゃないのか!? このダンジョンには冒険者が集まっている。冒険者をスペシャル・クエストで誘ったのはこっちだろう!」
ウェポンは明らかに苛ついた顔をみせた。
「バルギラ様は寛大なお方だから、冒険者みたいな不定職の連中に気前よく5億ワルドも出すって言ったけど――まったく、無駄な事だよ! それよりボクの兵器を解析して、量産体制ができる工場を作るために投資したほうがいい。邪魔者を排除して、ボクらが目的を達成した方が、バルギラ様のためさ」
ウェポンは歩行機械からそう言って、ランスロットを見下ろした。
「それはそれでもいい! 頼むから、これ以上、無益な殺しはやめてくれ!」
「そうは言っても、猫耳を捕らえなきゃだしねえ」
「頼む! 猫耳少女は引き渡すように説得する。だから銃撃を解除してくれ!」
ランスロットの必死の懇願に、ウェポンは歩行機械のコックピットから冷たい視線で見下ろした。
「あのさあ、君、副隊長かなんか知らないけど……ボクは司令官だよ? 口の利き方がなってないんじゃないの? ヒトにものを頼む態度、もう一回教わった方がいいよ」
ウェポンの言葉に、ランスロットは歯噛みをした。
が、即座にランスロットは、地面に膝をついて両手を地面につけた。
「お願いします! 銃撃を解除してください!」
ランスロットは地面につくまで頭を下げた。
ウェポンがそれを見下ろしている。
他の隊員や、ディアッド、ディギナーズも、事の経緯を見守っていた。
「仕方ないな、未開人の頼みもきいてやるか。銃撃は解除してやる。ただし、ドローンでの探索は続ける。いいか! その代わり必ず、猫耳を連れて来いよ。それができなければ、ドローンを無差別銃撃設定にして、迷宮内をくまなく飛行させる」
ランスロットは顔を上げた。
「ありがとうございます!」
ランスロットはそれだけ言うと、走り出した。
「あ――」
ミレニアが慌ててその後を追う。
「頼む――間に合ってくれ!」
ランスロットは血が出るほどに唇を噛みながら、走り続けた。




