表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

148/239

5 Aランクパーティー


 レガルタスはニッ、と笑みをみせると、いきなりガドの肩をバンと叩いた。


「フン、お互いにまだ生きてたようだな、ガド!」

「お前もな!」


 ガドもレガルタスと肩を組むように叩く。二人は、はっはっはと笑っていた。


「レガルタス、そいつは?」


 細身の神経質そうな魔導士が、レガルタスに訊いた。


「こいつはガド。『ボルト・スパイク』というCランクパーティーにいるが――俺をレスリングで唯一負かした男だ」


 え? Aランクパーティーのリーダーを? ガドが?


「めちゃくちゃ昔話だろ、レガルタス」

「そう言いながらも――今やっても、自信はありそうだな」


 レガルタスの笑みに、ガドも微笑を返した。

 と、背後からブリザードの声が響く。


「なんなのだ、お前たちは! なれ合いはもういい、この轟音はお前たちの仕業か?」


 白い飛竜が地上に降り立つと、人間の姿になった。


「人間の姿になった!」


 細い魔導士が声をあげる。その声に、レガルタスが注意をした。


「おい、スレイル、いちいちビビるな」

「そんな事言ったって――驚くものは仕方ないだろう!」


 スレイルと呼ばれた魔導士が言い返す。レガルタスは苦笑を一つすると、真面目な表情に戻ってブリザードの方に向き直った。


「氷龍王の眷属よ、この轟音と地響きは我々のしたことではない。が――」

「が、なんだ?」

「我々に先行したパーティーがいる」


 レガルタスの言葉に、僕は驚いた。

 正直に言うと、僕らに先行するゾコーバたちがいた事にも驚いたくらい、僕は一番乗りだと思っていたのだ。


 しかし実際には恐らく四番手。

 発表の翌日、途中まで空を飛んでショートカットしても、それより先行したパーティーが三組もあったのだ。


「先行した連中が判るのか?」


 ガドの問いに、レガルタスは少し顔を曇らせた。


「…『鉄の咆哮(アイアン・ロア)』だ」


 その答えを聞いたガドが、眼を見開く。

 その感じが尋常じゃない。


「どうかしたの、ガド?」

「アイアン・ロアは五人全員がAランク冒険者のトップチームだ。しかし……残酷で手段を選ばず、欲しい獲物に対しては他のパーティーへの攻撃も辞さない非道な連中でもあるんだ。奴らがこのクエストに参戦していたのか……」


 ガドが明らかに危機意識を感じてる表情をみせた。

 そうか、Aランクパーティーでもその性格に違いがある。


 このエターナル・ウィスルはガドとも昔馴染みのパーティーで、まともな人たちなんだろう。けど、アイアン・ロアは明らかに危険な連中なのだ。


 改めて見ると、エターナル・ウィスルはリーダーのレガルタス、細身の魔導士のスレイルに加え、プリーストっぽい太目の男性、両方の腰に剣を差している剣士の女性だ。四人パーティーか、と思った時、不意に声が聞こえてきた。


「レガルタス、どうやら上で騒ぎが起きている」


 何処から現れたのか、まったく気配が判らなかったが、左に黒い眼帯をした一見盗賊風の男だ。緑のバンダナを頭に巻き、迷彩色のような柄の衣装をまとっている。


「ロン、何があった?」

「軍隊がいる。かなりの人数だ」

「軍隊? こんな階層まで、どうやって来たのさ!」


 両剣の女性が声をあげた。

 黒髪をポニーテールにし、その後ろ髪が腰までなびいている。


「判らん。だが連中は妙な武器を持って、モンスターたちを蹴散らして進軍してる様子だ」

「チッ! アタシたちも早くいこうぜ、レガルタス!」

「慌てるな、イオラ。我々の目的は戦闘じゃない。我々は『白夜の呪宝』というものを探している。それは――此処にいる、氷龍王の眷属が知っているかもしれんのだ」


 レガルタスはそう言うと、ブリザードの方を見た。僕は慌てて声をあげた。


「ま、待ってください! 『白夜の呪宝』をバルギラに渡すわけにはいかないんです! それは、とても危険なことなんです!」


 声をあげた僕を、正面からレガルタスが見た。

 厳しい眼だ。威圧しているわけではない。

……ただ、僕の心底を見通すように、凝視している。


 僕は正面から、レガルタスの眼を見返した。


「ガド、彼は?」

「『ブランケッツ』のクオンだ」


 少し、レガルタスの表情が動いた。


「……最近、噂のパーティーだな。なるほど、君らにも事情があるのだろう。しかし我々も冒険者。だからといって、はいそうですかと引き下がるわけにもいかん。アイテムが欲しければ、我々より早く手に入れることだな。我々は、それに手出しをしようとは思わない」

「判りました」


 僕はレガルタスを見つめて、返事をした


「ただし、アイアン・ロアはそういう連中ではない。充分に注意することだ」

「ご忠告、感謝します」


 僕が軽く礼をすると、レガルタスは少し表情を和らげてガドに言った。


「いい若者だな、ガド。今は、彼らと組んでいるのか? ランスロットはどうした?」

「『ボルトスパイク』は解散して――ランスロットとミレニアは、開都護衛隊に入った……」

「その階層上で進軍している軍隊――開都護衛隊ではありませんかな?」


 太目のプリーストがそう口を開いて、僕らは一斉に注目した。


「そんな話があるのか、ジージョ?」

「ちょいと耳にしただけですがね」


 ジージョと呼ばれたプリーストは、鼻の下のチョビ髭をちょいと撫でた。

 その声に、眼帯のロンが口を開く。


「さすが情報通のジージョの旦那だ」

「開都護衛隊が出動準備をしている、とは聞いておったのです。しかしまさか、こんなに早く上層階まで来るとは思っておりませんでしたな」


 焦れたように、ブリザードが声を上げた。


「どんな連中か知らんが、我らの領域を荒らすなら相応の報いを受けることになるぞ。――お前らもだ!」


 ブリザードはそう言うと、再び飛竜の姿に戻る。


「待って、わたしたちも!」

「ついて来るな!」


 キャルの声に対し、ブリザードは空中で羽を羽ばたかせる。 

 と、その空間に凄まじい吹雪が巻き起こった。


「こ――これは…」


 レガルタスが呟きを洩らした時、吹雪は収まった。

 しかしブリザードの姿は、もう何処にもなかった。


「しまった! キグノスフィアに会えるチャンスをみすみす逃した」

「すまん、クオン、キャル。オレが降りようと言ったばかりに」

「いや……あの時、ブリザードがまず降りた。ガドのせいじゃないよ」


 すまなそうな顔をするガドに僕は言った。


「とにかく、上に上がろう。もう一度、アタック体制で」


 キャルとスー、ガドが僕の傍に集まってくると、細身の魔導士スレイルが近くに寄ってきた。ちょっと長い髪が鬱陶しい人だ。


「ところで、キミたち、一体、どんな魔法で空を飛んでるんです? どういう原理で? どういう強化? 頼むから、教えてくれ!」

「あ~……時間がないので、また!」


 僕たちは空に舞い上がった。


「あ~っ! 必ず教えてくれ! そうでないと、夜眠れなくなる!」


 眼下でスレイルが両手で顔を挟んでいる。

 ……あの感じだと、例えじゃなくて本当に不眠症になりそうだな。


「じゃあな、レガルタス!」

「ああ、またな、ガド!」


 レガルタスが、軽く手を振った。


「多分こっち」


 キャルは既に、ブリザードの行った先に飛行を集中してる。

 目指すのは最上階――氷龍王キグノスフィアのいる場所だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ