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第二十五話 氷龍王討伐計画  1 開都護衛隊の出動


 ガドが僕の傍にやってきた。


「クオン、デカい魔石がとれたぜ」


 見ると、紫のハンドボールくらいの大きさの魔石を持っている。

 僕はちょっと考えた。


「……それ、僕が貰っていいかな?」

「ん? まあ、お前が功労者だからな、好きにすればいいさ」


 ガドが僕に魔石を手渡す。と、僕はそれをゾコーバに差し出した。


「あなたたちで分けてください」

「は? ……い、いや助けてもらっただけで充分だ。そこまでしてもらうわけには――」

「あなたたちだって、討伐に参加したんだ。貰う権利はある。僕らはまだ先へ進むから、まだ入手の可能性があるんで譲るだけですよ。ただし、9等分で」


 僕の言葉に、ゾコーバの顔がはっとなった。


「一人死んだでしょう…あの人の遺族なり、お世話になった人なりに分けてください。お願いします」

「……判った。約束する」


 ソコーバは神妙な顔で、頷いた。


「本当にすまなかった。俺たちは……お前たちが異民だというだけで、ちょっかいをかけたのに――」

「自分の不遇を誰かのせいにしても、問題は変わらないと思いますよ。境遇を変えたいなら……生き方を変えないと――と、思います」


 ゾコーバは苦笑したが、真面目な顔に戻って頷いた。

 やがてゾコーバたちは、僕らに手を振りながら去っていった。


「――いくらなんでも、お人好しがすぎねえか?」


 ガドが呆れたように声を出す。と、スーとキャルが声をあげた。


「まあけど、そこがクオンさんのいいところですから」

「そう、それがクオンのいいところ……」


 僕はみんなを見て、我ながら苦笑した。


「けど、少しでも異民差別みたいなものがなくなった方が――街が生きやすくなるんじゃないかなって……ただ、そう思ったんだよ」


 別に、ただ善意から施しをしたわけじゃない。

 まわりまわって、きっと僕らに住みやすい街を与えてくれるはず。


 ふと……ランスロットの事を思った。

 ランスロットの生き方は――ランスロットを幸せにするだろうか?



   ☈   ☈   ☈   ☈   ☈   ☈   ☈   ☈



 ランスロットは隊長であるディアッドに呼ばれ、隊長室に出向いた。


「お呼びですか」

「うん。我々、ジャラダ郡の開都護衛隊に出動命令が出た」


 ディアッドの言葉に、ランスロットは眼を見開いた。


「出動? 何処へですか?」

「ラングール山脈のカスカル山――キグノスフィア迷宮へだ」

「ダンジョンへ? 任務の内容は一体?」


 金髪のディアッドは、灰色の眼でランスロットを凝視した。


「氷龍王キグノスフィアの討伐だ」

「馬鹿な!」


 ランスロットは絶句した。


「龍王討伐など――できるはずがない!」

「――どうしてできないのさ~?」


 その時、隊長室に入室してきて声をあげた者がいる。

 子供っぽい声だ。そして見た目もまだ少年のいでたちだった。

 

 歳は14,5くらい。髪は栗色で、整った髪型をしている。

 銀縁の眼鏡をかけた少年は、白と水色の制服を身に着けていた。


「龍王とか言ったって、所詮はケダモノだろう? 恐がりすぎなんだよ、未開人は」


 少年は嘲るように、そう口に薄笑いを浮かべた。


「……貴方は?」

「ボクはね、バルギラ公爵直属の部下、ディギナーズのウェポンだ。覚えておくといい」


 ウェポンは偉そうな態度で、ランスロットに言った。

 ランスロットは眉を寄せながら、ウェポンに向かって口を開く。


「しかし……相手はAクラスよりも上、Sクラス以上かもしれない龍王です。開都護衛隊に参加した者は、上位の者でもBランクです。とても討伐など――」

「確かに――戦力不足です、ウェポン司令」


 ディアッドはウェポンのことを司令と呼んだ。ということは、このウェポンと名乗る少年が司令官なのだと、ランスロットは理解した。


「必要なのは火力と人数だ。50人体制で行く」

「50人? それだけの人数を動かすとなると、相当の時間と労力がかかりますが……」


 ランスロットの言葉に、ウェポンは笑った。


「これだから、未開人はな! 来たまえ!」


 ウゥポンは突然、二階の窓を開けると、そこから飛び降りた。


「な!」


 ランスロットが慌てて窓に駆け寄ると、ウェポンは何故か宙に浮いている。

 よく見ると、足元に何か機械があり、それが四方に足を延ばして、その先端でプロペラが回っていた。


「な……なんだ、あれは?」

「君たちも早く来い!」


 ウェポンは上を見上げて、眼鏡の奥で笑った。

 ランスロットとディアッドは、慌てて階段を駆け下り外に出た。


 既に地面に着いたウェポンが、両手を腰にあてている。

 その眼の前には、山になった鉄くずがあった。


「数日前からゴミを庭に集めてたが――これが何か?」


 ランスロットはディアッドを見た。ディアッドが灰色の瞳を向けて、小さく答える。


「まあ、見てろ」

「じゃあ、そろそろ行ってみようか!」


 ウェポンが両掌を鉄くずの山に向けた。

 と、その手から光が出ると、それが当たった鉄くずの山が動き出す。

 その山は、自動で形をぐねぐねと変えていった。


「い……一体、何が――?」


 やがてそこに、濃緑色の巨体の機械が生まれた。

 横長の形で、その天井部には長い十字になった、薄っぺらい板がついている。

 それが先端部と、後方部に二つ。


「こ――これは何ですか?」

「未開人には判らないだろうけど、これはヘリコプターさ!」


 ウェポンは自慢げに言った。


「簡単に言えば、空を飛ぶ機械だ。大型軍事用ヘリをモデルにしているが、攻撃性能も付け加えてある」

「空を飛ぶ……機械?」


 ランスロットはあまりの事に、震撼した。


「言っておこう。ボクのコードネームはウェポン――自在に武器を生み出す異能の持ち主だ!」


 ウェポンは愉快そうに笑みを浮かべた。


「このヘリは運転者を別にして十人乗りだ。これを今から五台作る。開都護衛隊の中から48人、仕えそうな奴を選抜して氷龍王討伐隊を結成する」

「我々、二人が入るのは判りますが――運転手の五名、いや、司令を覗いた四名は?」


 ディアッドの問いに、庭先に現れた人物たちが声をあげた。


「それは我々、ディギナーズが務めさせてもらう」


 声をあげたのは、、長身のハルトことチェンジだった。

その後ろから、カエデこと赤髪のマルチ、そしてブラウンの丸髪のスルーと、銀髪のシグマが現れる。


「君たちが失敗するからあ、ボクが出てくるハメになったんだよ?」


 ウゥポンは小馬鹿にしたような顔で、ディギナーズを見た。


「確かに……返す言葉もないが――」


 神妙な顔をするチェンジに対し、シグマはふてくされたような顔をした。


「チッ、てめぇは奥にいて機械いじりしてただけだろうが。こっちは異能使いの連中を相手に戦ってたんだよ!」

「フン、君らが負けた相手って『能なし』なんだろう? 負けたってことはさあ、『能なし』以下なんじゃないの?」


 せせら笑うように言ったウェポンに、シグマが黙った。


「とにかく司令官はボクだ。みんな、ボクの命令に従ってもらうよ」


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