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4 落下と激流


「や……やめてくれ………」


 髑髏によって宙づりにされたカサンドラが、泣き崩れそうな声を出す。

 まずい、心理的な動揺で力が発揮できない状態だ。


 僕は地盤軟化させると、攻撃をしてくるヒモグラーを一体、地面に落とした。


「重化斬り!」


 そいつの脳天に重化斬りを喰らわせる。

 ヒモグラーの頭が割れて、その身体が崩れ落ちた。


 カサンドラの救出に向かおうとした矢先、突然、赤目ゴーグルに手裏剣が数枚突き刺さった。


「ぎゃあぁっ!!!」


 赤目ゴーグルが悲鳴をあげてうずくまる。

 その背中に、容赦なく飛来して来た手裏剣が突き刺さった。


「ぎゃあっ! 痛い! ――おのれ…許さんぞ!」


 身体に魔導障壁をまとって立ち上がった赤目ゴーグルは、手で両目を抑えたまま呪詛の言葉を吐いた。

 カサンドラに食いついていた髑髏が離れ、さらに数多くの髑髏が空中に現れる。


「貴様ら、皆殺しだ!」


 紫の髑髏が宙を飛び交い、敵味方関係なく襲い掛かる。

 ヒモグラーたちが何体か、髑髏の攻撃を受けて倒れる。


「うわぁっ!」


 エリナの声がした。エリナも紫の髑髏にやられたらしい。


「エリナさん!」


 僕は思わず声をあげたが、その時、ジェットの声がした。


「もういい、引き上げるぞ! 目的のものは手に入れた!」


 見ると、いつの間にかジェットらしきヒモグラーが、肩にキャルを抱えている。

 なに!? 目的はキャルだったのか?


 キャルを抱えたヒモグラーが走り出す。


「待て!」


 僕はバネ脚ダッシュで追いかけた。

 スピードならこっちの方が速い!


 追いついた――と、放ち斬りを脚に放つ!


「ぐあぁっっ!!」


 ヒモグラーの右脚が膝から切断され、ヒモグラーは転倒した。


「オ、オレの脚が! オレの脚があぁっ!」

「よくもキャルを……」


 僕はジェットのヒモグラーに迫った。

こいつの脳天も、重化斬りでぶち割ってやる。


「ヒ……」


 ジェットが恐怖の声を洩らした瞬間、僕は背中から加わる衝撃に倒れた。

 紫の髑髏が、僕の背中にぶつかっている。と、それが爆発した。


 硬化! が、ぎりぎり間に合ったが、衝撃は全部は防ぎきれない。

 見ると今度は、倒れたキャルに髑髏が突っ込もうとしてる。


「キャル!」


 僕はキャルの上にかぶさるように、キャルを庇った。そしてコートシールド!


 シールドの上が爆発する。また衝撃が加わる。


「どいつもこいつも――死んでしまえ! ケケケ……」


 赤目ゴーグルの絶叫とともに、あちこちで爆発音が響いた。

 と、その衝撃のせいか、地面が揺れ出す。


「な、なんだ?」

「ダンジョンが崩れるぞ!」


 誰かの声がした。

 と、思う間もなく、僕の足元の地面が、突如――


 ――無くなった。


 岩盤が破壊されて、落ちたのだ。

 僕はキャルを抱きしめて、暗闇を落ちていく中で、コートを身にまとって硬化した。とにかく、キャルだけは守らなければ。


 僕は崩れ落ちる暗闇の中で、落下していた。

 途中でガンガンと岩が身体に当たっている。僕が硬化してなかったら、到底、耐えられなかったろう。


 そうだ! エリナやカサンドラ、マリーは大丈夫だろうか?


 そんな事が頭をよぎった瞬間、いきなり全身が冷たくなった。

 水に落ちたのだ。


 しかも水流が速い。僕は硬化したまま、水流に流されていく。

 まずいぞ、このままじゃ息も続かないし、キャルも助けられない。


 危ないから硬化は解かないが軽化だ。木よりも軽くなれば、水に浮く。

 そうすると、僕らは水流の中で水面に向かって浮いていった。


「ぶはぁっ!」


 自ら顔が出せた。僕はなんとか、キャルの顔を浮かせる。

 キャルは呼吸している。大丈夫だ。


 凄い勢いで流されている。この流れ、何処まで行くんだ?

 そう思った瞬間、僕には判った。


 この先で途切れている。

 つまり――


「滝だあぁぁっっ!」


 叫んでも意味はないが、思わず声が出る。

 また落下だ。しかも、相当の高さだ。凄まじ水量に巻き込まれながら、僕は落下していった。


 キャルを守る! キャルとコートに包んでコートを硬化する。

 落ちた。かなり深い処まで一気に沈み込み、水底に身体が当たる。


 グオン、という衝撃が加わった。硬化してなければ絶対に死んでる衝撃だ。

 いや、それよりも水面を目指せ! 速く! 息が続かなくなる前に!


 コートに包んでいるキャルを抱えながら、泳ぐのが難しい。手が自由に水をかけないんだ。


 そうだ、バタ足だ。僕は水泳教室に行っていたんだ!

 それも、今ならただのバタ足じゃない。ゴム脚にして、脚全体を足ひれをつけたみたいにキックすれば――


 ――ウソみたいに速く泳げる!


「ぶはぁっ!!」


 一気に水面に上昇して、顔が出せた。


「キャル!」


 キャルが……呼吸をしてない。


「キャル! しっかりしてっ!!」


 僕が呼んでも、キャルは目覚めない。

 まずい、水を飲み過ぎたんだ。このままじゃ、キャルが死んでしまう。


 幸い、辺りは発光ゴケで明るい場所だ。岸部がある。僕はゴム脚キックで、水辺まで泳ぎ着き、地面に上がった。


「キャル! しっかりして!」


 キャルを横たえて呼びかけるが、意識は戻らない。

 こういう時は人工呼吸だ。まず、胸部を圧迫する。


 思い切り、胸を押す。それが戻ったら、また押す。

 それを繰り返す。――が、意識はまだ戻らない。


 ダメだ。ダメだダメだ。いや、まだ手はある。

 焦るな。必ず、キャルを助けるんだ。習ったはずだ、想い出せ!


 まず顔を少し上を向かせて気道を確保。

 それから鼻をつまんで、空気が逃げないようにする。


僕は思い切り息を吸い込むと、キャルに口づけた。

 息を吹き込む。


 もう一回。口から空気を送りこみ、胸部を圧迫して肺の運動を促す。

 そして胸部圧迫!


 胸を五回ほど押した時、キャルがせき込んだ。


「ゴホッ! く……ん――」


 水を吐き出した。しばらくせき込んで水を吐いたが、呼吸が戻った。


「ゴホッ! ……ク…オン……?」

「……よかった…。意識が戻った――」


 僕は安堵して、力が抜けた。途端に腰が抜けたように崩れる。

 僕は背中から倒れ込んだ。


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