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3 敵の罠


 眼を開けた女性は、苦しげな様子で口を開いた。


「な……仲間が…まだ下の階層に――」


 女性はそこまで言って、苦しそうに胸を抑えた。


「ちょっと、大丈夫ですか? 下の階層に、まだ仲間の人がいるんですか?」

「お願い……仲間をーー」


 女性はそう言うと、僕の両腕に手をかけて、僕に懇願する様子を見せた。

 が――


「があああぁぁぁぁっっ!!!」


 突然、全身を襲った衝撃に、僕は声を洩らした。

 女性から持たれてる腕から、衝撃が伝わってくる。サンダーチーターに負けないくらいの衝撃だ。


「クオン!」


 カサンドラが女性に蹴りを入れようとする。

 倒れてるはずの女性は機敏に身を翻し、僕から離脱した。


「貴様! 何者だ!」


 カサンドラが声を上げた瞬間、周囲の岩場から多くの影が現れた。

 冒険者というより――暴力集団の格好だ。


「サビー、よくやった」


 そう声をあげたのは、まだ若い男だ。

 だけど、人相はかなり凶悪なものになっている。

 倒れていた演技をしていた女性が、若い男の傍へと駆け寄っていった。


「ねえ、ジェット、アタシの演技どうだった?」

「悪くなかったぜザビー。あいつ、すっかり騙されていやがった」

 ジェットと呼ばれた男の言葉に、ザビーと呼ばれた女は嬉しそうに腕を組んだ。


「えへへへ、アタシ、役にたったでしょ」

「ああ。お前の魔法は役に立つ。けど、これからこいつらを痛めつけるからな、腕から離れろ」

「うふん、ジェットってばカッコイイ!」


 ザビーは見惚れるような顔で、ジェットから離れる。

 なんだコイツら、この状況でイチャついてる場合か?


「私たちを痛めつけるとは――言ってくれるじゃないか」


 エリナが苦し紛れの笑みを浮かべる。

 周囲の人相の悪い奴らは――計十人。それにジェットとザビー、そして……


「ケッケッケ! ワシも呼ばれるとは嬉しい限りじゃのう」


 赤眼鏡のゴーグルに逆立った髪。こいつは――裁判所の動乱の時、カリヤ達と一緒になって髑髏魔法を使ってた奴だ。


「お前たち、カリヤの手下か!」


 カサンドラの声にジェットがムッとした顔を見せた。


「ボスを呼び捨てにするな! ――お前たち、全員痛い目をみせてやる。やれ!」


 ジェットの掛け声がすると、十人の悪党どもが突然、変異し出した。


「グ、ググ……げげげぇぇ――」


 奇妙な呻き声をあげたと思う間もなく、男たちはヒモグラ人間に変化した。

 そして最後に、ジェットがヒモグラ人間になる。


 と、ヒモグラ人間たちが、ガバリ、と口を開ける。


「こいつらは火を噴くぞ、気を付けろ!」


 カサンドラの声がする。が、ヒモグラたちは僕たちに向かっては火を噴かなかった。

 彼らは突如として、岩壁や天井に火を噴き始めた。


「い…一体、何を? ――はっ!」


 カサンドラは何かに気付いたが、それは既に遅かった。

 辺りが急速に暗くなっていく。


「ひゃっはっはぁっ! ダンジョンは発光ゴケで地上のような明るさだが、それがなければ本来、光の届かない暗闇。けど、オレたちヒモグラーは暗闇でも眼がきくが――お前たちはどうかなあ?」


 ジェットの笑い声が終る頃には、辺りは完全な暗闇になっていた。僕はもう、まったく何も見えない。

――というか、あいつら自分たちをヒモグラーって呼んでるのか。


発光球(ライトボール)!」


 キャルが発光魔法の球を発射する。発光ゴケがない場所を想定して、使えるようになった魔法だ。

 が、その発光球が、現れた紫の髑髏に食いつぶされた。


「ケケケ……ワシのこれは、実は暗視ゴーグルなんじゃ。知っとった?」


 知るか! と、口もきけない僕は内心でツッこんだ。


「マリー、クオンくんを抱きかかえてくれ!」


 エリナの声とともに、僕の身体がふわりと浮く。マリーに抱えられたのだ。

 と、僕らの姿が消えた。


 暗闇で見えなくなったのか? いや、エリナが近寄って透明化したのだ。


「カサオンドラ、キャルちゃん! クオンくんを治癒するまで、持ちこたえてくれ!」

「判った!」

「承知! ――こんな雑魚兵ども」


 カサンドラが抜刀して、近くにいたヒモグラーを斬る。斬られたヒモグラーは、声をあげる間もなく倒れた。


「お前さんの相手は、ワシがやるぞい!」


 赤目ゴーグルの声とともに、紫の髑髏が数体、カサンドラに特攻する。

 その瞬間、カサンドラの囲むように、髑髏が爆発した。


「ケケケ……他愛もない」

「他愛もないかどうかは、その暗視ゴーグルで確認してみろ!」


 爆発の後に現れたのは、全身に炎をまとうカサンドラだった。

 そのカサンドラの炎のおかげで、僅かに視界がきく。


 見ると、ヒモグラーたちに包囲されたキャルが、一斉に発射された火炎放射を受けていた。


「くぅ……」


 キャルは魔導障壁を造り耐えているが、数が多い分、威力が高い。

 やがてその魔導障壁を壊し、キャルがヒモグラー火炎の餌食になった。


「きゃぁっ!」

「キャルちゃん!」


 思わずエリナが叫ぶ。と、その声を聴きつけて、ザビーが七色っぽい衝撃波を放ってきた。


「霊式結界!」


 念動力作った結界で、エリナが僕らを防御してくれる。が、そのために透明だが、場所が知れた。


「そこか!」


 ジェットであるヒモグラーが、僕らに向かって火を噴いた。

 そして視界の向うでは、ヒモグラーたちの一斉放射をくらったキャルが倒れていく。


「キャル!」


 少し回復していた僕は叫ぶと同時に、治癒を放棄して飛び出した。

 エリナの透明化から離脱して、姿が露わになる。


「へっ! こいつ出てきやがったよ。もう一度、アタシの技を喰らいな!」


 ザビーが衝撃波を放つ。

 僕はコートでシールドしてそのまま突っ込む。


「重硬タックル!」


 ザビーの身体に、モロにタックルを直撃させる。ザビーの身体が吹っ飛んで、岩壁にぶつかって崩れ落ちた。


「ザビー! 貴様ぁ!」


 ジェットが爪で攻撃してくる。

 こんな奴ら、単体ならそれほどでもない。


 僕はバネ脚で攻撃を躱して背後に廻ると、棒剣で背中に斬りつけた。


「ぐわっ! ――おい! こいつをやれ!」


 ジェットの声に気付いたヒモグラーたちが、僕に向かって一斉火炎放射を浴びせる。僕はそれを躱してキャルの元に行こうとしたが、ヒモグラーの爪攻撃に行く手を阻まれる。


 くそ、誰か――

 見ると、カサンドラは紫の髑髏に、両腕、両大腿を噛まれて宙に吊り上げられていた。そしてもう一体の髑髏が、カサンドラの鎧を噛み外す。


「ケケケ……このままいたぶってやろうか。そして最後は、あのヒモグラー全員にくれてやろうかの」

「や…やめろ……」


 カサンドラが、悲鳴にもならない泣き声をあげた。


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