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4 迷宮のモンスター


“次は私だ”


 エリナから念話が入る。と、しばらくすると、エリナが穴から飛び出してきた。


「ひゃぁっほうぅっ!!!」


 エリナが笑いながら宙に浮かんでいた。

 足をまげて、身体を小さくしている。


「クオンくん、受け止めてくれ!」

「はいはい!」


 僕は宙に浮いたエリナを、お姫様抱っこの形で、受け止めた。

 エリナが僕の腕の中で笑う。


「いやあ、最高だったな! もう一回、上に戻って滑ってこようかな」

「エリナさん、絶叫マシンじゃないんですから」


 僕は呆れ顔で、エリナを地面に降ろした。


 ――が、そこからが長い。

 いつまで経っても、マリーが降りてこないのだ。


「なあ……マリーが降りてこないんだけど」

「エリナさん、マリーにはリンクは?」

「してない。マリーは慣れてるだろうと思って」


 あんまり考えたくないが……もしかして、この穴、何かのトラップだったのか?

 此処に僕らを落として、何か狙っていた――とか。


 と、そんな事を考えていると、穴から声がしてきた。


「――ちょっと、ちょっと、ちょっと、ちょっとぉっ!!!」


 マリーが出てくる。全然、安全速度の範囲だ、僕が受け止める必要もない。

 ……まあ、あまりマリーを受け止めたいとは思わないけど。


 着地したマリーが、僕らを見てなんか興奮している。


「ちょっと! アナタたち、降りるの速すぎでしょ! そんな速度で降りる人達、今までにいなかったわよ!」

「え、そうなんですか?」

「当たり前でしょ! スロープは30m、傾斜角は60度近くあるのよ。普通の速度で降りていい、場所じゃないの!」


 いや、それならそうと早く言って欲しかったな……


「一体、下でどうしたの?」


 マリーの問いに、皆が順番で答える。


「クオンに受け止めてもらった」

「うむ、クオンがその……受け止めてくれた」

「まあ、クオンくんなら、なんとかしてくれるだろうと」


 マリーは驚きの顔を見せた後で、僕に訊ねる。


「で、クオンちゃんは、そのスキーもどきみたいので降りてどうしたの」

「いや……どうもしないけど――壁に激突して止まりました」


 マリーが唖然とした顔をみせた後に、頭を手で抱える。


「そう判ったわ……これが噂のブランケッツね。やっぱり、ちょっとした事が規格外。アタクシも、そのつもりでガイドさせてもらうわ!」


 マリーは立ち直ったらしく、笑みをみせた。まあ……よかった。


「ここからは11階層。Dランク冒険者から推奨の場所ね。ここまで来ると、観光客はもちろん、弱小パーティーはいないからダンジョン内も落ち着いてるわ」


 そう言うマリーの先導を受けて、僕らは迷宮を進んだ。

 と、エリナが声をあげる。


「あ、先に何かいるぞ。こっちに来てる」


 少しすると、モンスターの群れが現れた。

 巨大な――カニだ。


 犬ほどもある巨大なカニが30匹以上歩いてくる。皆、横歩きだが。

 右のハサミだけ大きくて、それをブンブン振っている。


「デーモン・クラブよ! 足を挟まれたら切られるわ、気を付けて!」


 マリーの声に、キャルが口を開く。


「カサンドラ、焼いとく?」

「そうするか」


 カサンドラは左の掌を向ける。その白い手甲の手首のところにある、緑の魔晶石が光る。

 一方、キャルは魔法輪を取り出す。


巨大(ビッグ・)火炎波(フレイム)

爆裂砲閃花(バーニング・キャノンフラワー)!」


 二人の火炎魔法が、カニの群れを襲う。

 一瞬にして、カニの群れが――焼きガニの群れになった。


「………な!」


 マリーが唖然としている。


「ちょっとアナタたち! 凄まじい魔力じゃない! Cランクなんて、ウソでしょ!」

「いや…私は軍人だったので、ちょっと冒険者のランクは判らないが」


 カサンドラが普通の顔で答える。

 と、エリナが声をあげた。


「けど、キャルちゃんは、魔法の威力上がってる感じがするよ。前より強くなってると思う」

「ほんと? それなら嬉しいけど」


 キャルはそう言うと微笑んだ。あんな威力の魔法を使った後とは思えない美少女っぷりだ。


「まあ……いいわ。焼きガニを食べながら、魔石を回収しましょ。一応、デーモン・クラブはDランクモンスターの中でも手ごわい方なのよ。装甲は堅いし、泡は金属も溶かすんだから」

「そうだったのか」


 僕はまったく出番がなかったけど。

 やっぱり、魔法が使えるって凄いな。


「そうだわ、それにエリナ! アタクシより先にモンスターの気配に気づいたわね。アナタもCランクどころじゃないわ!」

「そうか? 自分では判らないが――まあ、いいだろう」


 マリーの言葉に、エリナは笑って答える。マリーは肩をすくめた。

 焼きガニは美味しかったが、数が多すぎて食べきれなかった。


 魔石を回収して先に進むと、またエリナが声をあげた。


「またいるな、モンスターだ。また結構な数だぞ」


 見ていると、洞穴の向うから群れがやってくる。

 それは――空飛ぶ魚だった。


「フライング・ピラニアよ! 獰猛だから気を付けて!」


 マリーの声が上がる。

 見ると、ピラニアというにはデカい30cmくらいの魚が空を飛んでこっちに向かっている。


「僕が出るよ。キャルは魔導障壁でみんなを守って」

「判った」

「あ、私も援護しよう」


 エリナが両手を胸の前で交差させると、その手から五枚の手裏剣が飛び出す。

 僕はバネ脚ダッシュで飛び出した。


「あ、ちょっと! 一人でなんて危険よ!」

「大丈夫」


 僕はそれだけ言うと、フライング・ピラニアの群れの中に飛び込んだ。

 身体は軽化と硬化。そしてバネ脚ダッシュで駆けながら、僕は軽化した棒剣で放ち斬りを連発した。


 ピラニアは表面が硬くなく、問題なく両断できる。

 ピラニアの速度に負けないようにこっちも速度を上げながら、ピラニアを一匹ずつ斬っていく。


 速い動きで飛ぶピラニアを斬るのは、いい訓練になる、と思った。

 傍らではエリナの手裏剣が飛び回って、ピラニアを真っ二つにしている。

 ちょっと威力が上がってるんじゃないか?


 ピラニアは僕に噛みついてくる奴もいるが、その牙は硬化してるから効かない。

 キャルたちは魔導障壁のなかにいて、それにとりつくピラニアも僕か、手裏剣が切っていた。


 しばらくすると、ピラニアの群れが片付いた。

 驚きの顔のマリーが、声をあげる。


「……ちょっと、どういう事? なんでクオンちゃんは、ピラニアに噛まれないの?」

「あ…身体を硬くしてたんで」

「物凄い速さで動いてたわ!」

「同時に、軽くもしてたんで。あと、脚を金属バネ状にしてたし」


マリーが唖然とした顔でため息をつくと、苦笑して口を開いた。


「判ったわ、アナタたちにはこの辺は雑魚モンスターね。もう20階層に行きましょう。さすが噂のブランケッツ――只物じゃなかったわね」

「そうですか」


 よく判らないまま、僕たちは顔を見合わせた。



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