#111:刻子かっ(あるいは、DEP細胞は、バカには見えませぇぇん!)
「アガった場合……手牌の補充はどうなる?」
と、私の対面で、自分の前に立てた手牌を、その細い指で弄んでいた大佐が、ぽつりとそう問いを投げかける。
ん? 誰かがアガったらそこでその局は終わりじゃあないの? アガっても場は続いていくってこと? 私の疑問は当然のことのように思われたが、大佐の質問は何か予定調和的なそれだな。これ元老側は周知のことだろ。私の顔面はまた谷を転がり落ちていきそうになるけど、あんまり出し過ぎて威力が弱まってもアレなので自制を働かせる。
いや、そんな葛藤してる場合か。そうなると。
手牌は基本「8枚」。そこに「1枚」山から持ってきてから和了するわけだから、アガった時点で手牌は最大でも「6枚」、下手したら全部使い切って「0枚」ってなことも可能性としてはある。
<特別な補充はありません。自分の手番が回ってきたら一枚ツモる。これだけが、自分の手牌を増やす唯一の方法です。また、手元に『8枚以上』牌を持つことは出来ないので、『9枚目』をツモったら、1枚、手牌から場に捨ててください>
安手でアガり続けると、あっという間に手牌が激減して追い込まれるってわけね。
「3枚」の手で「4回連続」でアガると、手元には1牌も残らなくなる算段となる。次にアガるためには、最低3回、自分に巡目がまわってくるのをただ待つしかないわけだ。
「1000点」の最安手で4回連続ツモ上がりしたと仮定する。すべて親番としても、500オールの掛ける4で2000オール、プラス本場があるとして、2600点ずつを相手から奪えることにしかならない。
つまり現況で持ち点4000で最も少ないシギすら、トバすことは出来ないことになる。
よってツモだけだと、誰かを狙い撃つということは困難みたいだ。であれば、やはり役作りに走るか、「5枚」「6枚」使う重量級の手を仕上げるしかないのだろうか。跳満ツモれば4000オール。それならシギを殺れるけど、「役」が本家とは異なっていたよね……
「牌数」を増やすことのみで点数を上げるのならば、「3枚:1000点」から倍々に考えていけばいいから、「7枚:16000点」で「8000・4000」。親なら「6枚:12000点」の「4000オール」でシギなら仕留めることが出来る。
役を絡めて考える。「同色」と「同数」は重複すると考えて、「×2」「×2」で4倍。あとは「牌数」で稼ぐしかないわけだけれど、「5枚」なら素点4000だから×4で「16000」。「役無し7枚」の時と同じく、これなら充分形だ。一撃でこの対局を終わらせることが出来る。
しかし……困難極まりないぞ、こりゃあ、と私は改めて自分の手牌を眺めると、そんなため息混じりの感想を頭の中に浮かべることしか出来ない。
数字も色もバラバラだ。数字はそれでも「数の並び」であれば何とか揃えられそうだけれど、「色」は「5色」あるから、より混沌としている。
さらに大前提として、このひとつひとつの牌に刻まれた「お題」を全部「DEP」に組み込んでいかなあかんのよね……【ヅラ】【昆虫】【歴史】でどんなのを作れと? そんな黄金体験、流石の私にも、皆目ございやせぇぇぇぇぇん!!




