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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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失敗した侵入者たち

 警報が鳴ってすぐ、俺とユミ、知晴さんは転移門を使って、ばーちゃんの倉庫へ避難していた。


 監視カメラの映像を見て粘着テープで捕らわれた人と、ドアから逃げ出した人を確認している。モノクロで画質が悪いから、大まかな形しか分からないけど間違ってはないだろう。ダンジョンに侵入した人もいたのは確認しているから、クロちゃんも活躍してくれているはずだ。

 

「終わったみたいだね。戻ろうか」


 念のため侵入者が逃げ出して一時間後に、転移門を使って山小屋へ戻った。


 明かりをつけると、部屋は荒らされていてベッドがひっくり返っていた。服も床に散らばっていて荒れている。


「マスター、侵入した人が許せません」


 綺麗にお掃除していたこともあって、ユミは努力を無駄にされたと怒っている。


 周囲に赤テントウムシである葬炎虫(そうえんちゅう)が浮かんだ。殺傷力が高く、直撃すれば人間の体なんて破壊できてしまうだろう。


「ユミ。落ち着け」

 

 どんな理由があっても、俺はユミに人殺しをさせたくはない。精霊になったからこそ、人間らしく生きて欲しいのだ。この願いは俺のワガママだと分かっているけど、止める以外の選択は取りたくなかった。


「マスター……」


 不満そうにしながら俺の顔を見ている。


「いいから。俺に任せろ」

「…………わかりました」


 言葉での説得は難しそうだったので、立場を使って強引に納得させた。出現していた葬炎虫が消える。


 この場で暴れることはないだろう。


 その後は分からないけど、今を乗り越えればとりあえずは問題ない。

 

「終わったか? さっさと状況を確認しに行くぞ」


 倉庫からナイフを持ち出した知晴さんは、警戒しながら先に行ってしまった。後を追って廊下に出ると、背中に当たって鼻をぶつけてしまう。


 出てすぐに立ち止まったみたい。


「痛いなぁ」


 文句を言いながら横に移動して前を見る。


 全身を虫に覆われた人が数人倒れていた。体は動いていない。死んでいるのだろうか?


 離れた場所からじゃ分からなかった。


「これはユミがやったの?」

「マスター、私はここまでやれとは言っていません」

「なんて命令していたのかな?」

「外から人がきたら教えてね、ってことだけです。私の命令以上のことをしてくれるなんて、あの子たちはすごいですね」


 俺にユミが嘘をつくとは思わない。知能が低いがゆえに、虫は命令を間違ってしまったんだろう。


 事故だ。


 人を傷つけたうちには入らないよね。うん。そういうことにしておこう。


「そっか。事前準備ができて偉かったね。全員無事なのもユミのおかげだよ」

「マスター、ありがとうございます!! 私、頑張りました!」

「うん、うん。そうだね」


 思うところはあったけど、俺のために動いてくれたのだから褒めたら思いのほか喜んでくれた。


 あの愛らしい笑顔が見られたのであれば、侵入者が襲われたことなんて誤差の範囲である。やっぱり何も問題ないね。

 

「虫に山小屋から出て行くようお願いしてもらえるかな」

「任せてください!」


 やる気に満ちたユミがしゃがんで虫に語りかけると、人に集まっていた集団が一斉にどこかへ飛んでいった。


 廊下に残ったのは倒れている男たちだけ。黒ずくめの服を着ていて、頭には暗視ゴーグルがある。手にはナイフを持っていたので、これで俺たちを刺し殺すつもりだったんだろう。


 生死を確認するために蹴って、仰向けにしてみる。


 胸は上下に動いていた。


 よかった。全身を噛まれて真っ赤になっているけど、生きているみたいだ。ユミは誰も殺していないことに安堵する。


「こいつらは拘束しておく」


 知晴さんは自分のマジックバッグから手錠を取り出すと、倒れている男の手足につけた。俺たちが勝つと分かっていて、準備していたんだろう。


 二階から一階に降りると窓枠に張り付いた人がいて、他に玄関付近で倒れている人も発見した。彼らも全身に虫が張り付いている。ユミにお願いすると虫は森の中へ帰って行った。


 残ったのは全身を噛まれた男だけ。


 全員、意識は失っているけど生きてはいる。


 知晴さんが手際よく手錠をかけていった。


 後はダンジョンへ逃げ込んだ男だけだ。後を追いに行くか悩んでいると、糸で簀巻きにした人間を背中に乗せた、クロちゃんが戻ってきた。どうやら、俺が動くよりも前に終わらせてくれたらしい。


「偉いね~!」


 飼っていたペットを褒めるがごとく、ユミはクロちゃんの頭を撫でている。


 成果を出したのであれば褒美があって当然だ。これが魔物の教育なんだろう。


「中の人間は死んでいるのか?」

「マスター、クロちゃんによると、麻痺させてはいるけど生きてはいるようです」

「よくやった。蜘蛛の糸を外してくれないか」


 前足を上げて返事すると、クロちゃんは器用に動かして、蜘蛛の糸をほどいてくれた。


 山小屋に倒れていた男と同じ格好だ。仲間だとみていい。


「お前……生き……失……敗……」


 意識は残っていたみたいで、弱々しい声でつぶやいたけど、知晴さんが頭を蹴って気絶させてしまった。


 力加減を間違ったら首の骨が折れて死んじゃうのに。危険なことをする。


「これで全員だな。ファイヤーバードトラップにすら辿り着けないとは、思っていたよりも実力が低くて驚きだ」


 トラップについてはよく分からないけど、苦戦しなかったという知晴さんの意見には同意だ。

 

 山小屋に立てこもるようなら、ドローン三号を突撃させて攻撃することまで考えていたけど、ユミが虫を操ったおかげで問題はあっさりと片付いてしまった。


 相手が弱いのもあったけど、虫の力もすごかったな。敵に回すと本当に恐ろしい能力だよ。


「いいことだよ。誰も死んでないしね」

「そうだな。ダンジョンに入った証拠も残っているし、これで村田を追い詰められるだろう」


 ゴーグルをつけて確認したけど、逃げたときに蛍光追跡液を踏んでくれていたようで、靴に付着していた。ダンジョン内に足跡は残っているはずだ。


 知晴さんが言うとおり侵入した証拠になる。言い逃れは不可能。


 この情報をどう使うかはわからないけど、真犯人をとっちめてくれるはずだ。そうなればユミと安心して過ごせるだろう。


 頼んだよ!


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