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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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新しい畑を作ろう

 知晴さんは転移門から戻ってきた翌日から、放置ダンジョンを限定解放するために動き出した。


 名前を埼玉ダンジョンと名付け、素材の買取所を建てるために素材を発注している。さらには探索者ギルドと連携して、ギルド長と受付数名を派遣してもらう予定らしい。


 彼らが到着すれば放置ダンジョンではなくなるため、俺は責任者じゃなくなる。鍵を壊してダンジョンに侵入した犯人は見つかってないけど、それどころじゃなくなったので、例外的な処置ってヤツらしい。


 だからといって俺は自由になるわけじゃない。


 埼玉ダンジョンに常駐する専属錬金術師として、知晴さんと一緒に滞在しなければならない。


 各種ポーションを販売するお店の運用は、錬金術ギルドから派遣された人がやってくれるみたいで、俺は特別なオーダーが入った場合に錬成する係となるらしい。自由度はかなり高いので、錬金術で遊ぶ時間は取れそうだ。


 ユミが作った畑もあることだし、しばらくは滞在してもいいと思っている。


「ちょっと外に出てくるね」


 デスクワークをしている知晴さんに声をかけ、山小屋から出る。畑の方に向かうと帽子をかぶったユミの姿が見えた。


 放置されていた畑はブルーボルド草が生えていてこれ以上は植えられないので、新しい畑を開拓しているようだ。


 山小屋にあった鍬で土を掘り返し、虫と協力して塊を砕き、柔らかくしている。


「頑張ってるね」


 俺が声をかけると、ユミは汗を拭って顔を上げた。


「マスター、一緒にやりませんか?」

「そのつもりだよ。何をすればいいかな」


 お店で買った長靴や帽子、服を身につけている。肩にはタオルを掛けているので、汗をダラダラ流しても作業は続けられるだろう。


「マスター、もう少し大きくしたいので、土を掘り返してもらえませんか」

「任せて!」


 ユミから鍬を受け取ると、大きく振り上げて地面に突き刺す。いい感じに刺さったので、土を持ち上げた。思っていた以上に力が必要だぞ。


 途中で石を見つけたら、ぽいっと畑の外へ投げる。


 何度も繰り返していくと疲労が溜まっていく。汗が浮かんできたのでタオルで拭いながら、10メートルぐらいの距離の土を掘り返した。


「マスター、お疲れ様です。次は土を軟らかくする作業ですよ」


 ユミは石のように硬い土を握りつぶした。


 土の塊をサラサラにする作業をしろってことらしい。楽しそうに作業をしていて、休みたいと言える空気感ではなかった。


 よし、頑張ろう。


 俺も土の塊を掴むとボロボロと砕いて細かくしていく。地味な作業だ。時間がかかる。ユミみたいに虫の力を借りた方がいいのかなと思ったけど、二人きりの時間も悪くはないかと思い直した。


 最近は誠パーティや知晴さんが近くにいて、こういう時間を作れてなかったんだよね。


 冒険するのも悪くはないけど、俺にはのんびりとした日常が好きだな。


「肥料を持ってきますね」

 

 1時間ぐらいかけて塊を砕いたので、土はほとんどサラサラになった。


 次の行程としては栄養を与えるらしい。


 麻袋を抱きかかえながらユミが戻ってきた。中には白い粉が入っている。


「マスターは土にかけてもらえますか?」

「やってみる」


 両手で白い肥料をすくって砕いた土に振りかけると、ユミは土と混ぜる作業を始めた。


「マスター、こうやって馴染ませると植物さんが喜ぶんですよ」

「へー。詳しいね。勉強したの?」

「ネットで調べました」


 家にはパソコンがないのでスマホを使ったんだろう。それだけ畑で植物を育てるのを楽しみにしていたんだろうな。


 そりゃ作業着とかもお揃いにしたくはなるか。買い物したときの強引な感じも、納得はできる。


「事前に調べて偉いね」

「マスターには任せられませんから」


 どや顔をされたけど、気にはならなかった。だって事実だもんね。


 連絡やお金の管理、私生活周りをお世話になっているんだ。今さらだよ。


 何度か肥料をまいてユミと一緒に土を混ぜる。その際に、土の塊を発見したら砕いてサラサラにしておくのも忘れない。こういった丁寧な作業が作物の成長に大きく関わるんだよね。きっと。


 土壌作りは完成したので、後は買っておいた種を植えて終わりだ。結構な時間をかけたけど、ほどよい疲労と達成感があって充実している。


 ユミと地面に座って完成した畑を見ていた。


「お前たち。襲撃が来るかもしれないのに何をやってるんだ」


 呆れた顔をした知晴さんが立っていた。


「明るい時間からはこないでしょ」

「そうとは限らない。油断したら死ぬぞ」

「大丈夫です。私がさせませんから」


 きりっとした顔でユミが言い切った。


 クロちゃんは居ないけど、虫たちの力を借りて監視網は敷いていると聞いていた。異変があれば詳細は分からなくても、気づくことぐらいはできる自信があるんだろう。


「わかったから、そう睨むなって。ユミちゃんがしっかりしていることぐらい、俺だって分かってる。俺は室内で仕事しているから、終わったら戻ってきてくれよ」


 逃げるようにして知晴さんは戻っていった。


 注意をしに来ただけなんだろうか。


「邪魔者はいなくなりました。もう少しのんびりしましょう」


 雑な扱いをされて少しだけ知晴さんが可哀想だと思ったけど、ユミの笑顔を見たらすぐに忘れてしまった。


 俺たちはこれでいいんだよ。


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