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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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解放された知晴

「大変な目に合った……」


 蜘蛛の糸から解放された知晴さんの第一声だった。


 どうして山小屋に魔物がいるのか聞かれたので、俺から事情やユミの能力を全て伝える。納得してくれたものの、事前に教えておけとお説教が始まってしまう。


 その代わりユミとクロちゃんはお咎めなしだったので、甘んじて受け入れることにした。


 * * *


「知晴さんなんでここにいるの? 渋谷の支部長でしょ?」


 一段落したタイミングで聞いてみた。近くにいたユミや誠たちも気になっているようで、耳を傾けている。


「クビになった」

「無職のおじさんになったんだ……」


 みんなが哀れみの目で見た。


 ユミなんて自分のお小遣いを上げようとするぐらいだ。まあ、それは俺が止めておいたけどね。


「無職じゃない! トラブルのあった放置ダンジョン3つを管理する、特別本部長になんったんだよ!」


 詳しく知晴さんの話を聞いてみると、どうやら昇進したらしい。


 エリア部長と同じレベルの権限を持つなんてすごいじゃないか。経費もいっぱい使えそう。素材購入のおねだりとかしても大丈夫かな。大丈夫だよね。今度、いくつか買ってもらおう。


「でも、知晴さんその出世って……」

「誠が気にすることじゃない。反撃の手段はあるから心配するな。このままじゃ終わらせないさ」


 ん? 喜ばしい話なのに、なんで誠たちは心配そうな顔をしているんだろう。


「反撃って何? 知晴さんは誰かに襲われているの?」

「ギルド内部で俺を妬んでいる男がいるんだよ。そいつを叩きのめすために動いているんだ」


 はぐらかされた気もするけど、詳細を知る必要はないってメッセージなんだろう。


 知晴さんなら上手くやると思うし、心配はいらないな。


「それよりも放置ダンジョンの再調査はどうだった? 結果を知りたい」


 説明は誠に任せることにした。


 ラルクノアの他にミスリル銀鉱脈の可能性、ゴーレムコアやファイヤーバードの危険性、神殿の存在を伝えていく。


 最初の調査よりもさらに金になりそうだと分かると、知晴さんは悪い笑みを浮かべた。


「よく、ここまで調査できたな。助かる」

「すべて裕真のおかげです。彼の作ったポーションがなければ、何度か全滅していました」

「それは言い過ぎだって」


 褒められて悪い気分はしない。ユミも誇らしい顔をしている。


 でもさ。ポーションがあっただけじゃ調査は進まない。魔物に恐れることなく、戦い、勝ち残れる探索者がいてこそだ。俺だけの力じゃ何もできなかったよ。


「なら2人の成果にしておこう。西や東側は調べたか?」

「後回しにして、まだ調べてないです」

 

 ダンジョンの入り口は南側、沼地のエリアは北側にあるんだけど西や東は調べていない。なぜなら、放置される前に広範囲の調査をされていたからだ。


 たいした素材は出ない代わりに魔物の出現量が多く、強いこともあって、探索しても経済的な価値はないと判断されたのである。


 そういった経緯もあって、俺たちも後回しにしていた。


「念のため調べたいが時間は残っているか?」


 放置ダンジョンの管理は俺がすることになっているので、誠たちは撤退の指示が出ている。


 猶予期間は残っているけど、長くは居られないだろう。


「ギルドからは、1週間以内に撤退せよと言われています。どちらかの調査ならできそうです」

「うーん……」


 知晴さんは腕を組み、悩んでいる。


 どっちかでもいいから、調査させればいいと思うんだけど。


「中途半端になるなら止めておこう。ラルクノアとミスリル銀鉱脈だけでも人は呼べるからな」

「呼ぶって、知晴さんはダンジョンを一般解放するつもりなの?」


 長年放置されていたから、大勢が滞在できる施設はない。食料の補充だって間に合わないだろう。


 何より俺一人じゃ管理しきれないから、すごく困るんだよね。


 もし普通のダンジョンの様に運営するというなら、ユミと話していた逃亡生活を実現するしかないかも。


「いいや。それはない。呼ぶと言っても俺たちのダンジョンを荒そうとするヤツらだ」

「放置ダンジョンを狙っている人がいるっての? そんなのあり得な……あっ!」


 そういえば鍵を壊されていたことを思い出した。


 犯人は不明だったんだけど、知晴さんは心当たりがあるのか。捕まれば俺が放置ダンジョンを管理する理由はなくなるし、手伝う意味は大きい。


「裕真も気づいたようだな。貴重な素材があると分かれば、放置ダンジョンへ入ったヤツらが戻ってくる可能性が高い。敵は錬金術ギルド幹部の息がかかっているから、誠たちは帰っていいぞ」


 残ってくれた方が心強いんだけど、錬金術ギルドのゴタゴタに巻き込ませないため、帰還命令を出したのだろう。


 俺たちの負担は大きくなるけど、こればっかりは仕方がないと諦める。


「裕真、気をつけろよ」

「問題ないって。なんせ頼れる精霊がいるからね」


 ポンとユミの頭に手を乗せた。


 半目になってしまったけど、手を振りほどくことはされていない。本当に嫌がっているわけじゃないんだろう。


「わかった。困ったことがあれば、何でも言ってくれ」

「うん。頼りにしているよ」


 ポーションのためだとは思うけど、いつでも一流探索者に頼れるってのは大きい。


 今回はお別れになるけど、また一緒に活動しようと、簡単な口約束をした。

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