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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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(誠視点)未開拓エリア

 沼地の入り口を占拠していたポイズントードを倒したので、卵を破壊してから魔石を取って奥へ進むことにした。


 放置されていた影響で魔物の数が多い。十メートルも進めば二足歩行の蜥蜴――リザードマンやデッドバードの姿が見えてくる。


 本来であれば時間をかけて安全を確保する所なんだが、裕真製マナポーションを飲んだ圭子の力は底上げされたままなので、敵が視界に入ると闇魔法で片っ端から全滅させていた。


 歩くだけで安全が確保できている。


 魔力最大量が上がる上に湧き水のように出てくるらしく、敵を百匹近く倒したというのに消費したマナポーションは2本のみ。


 これでスキルの威力も底上げされているのだから恐ろしい。


 エリクサー級の回復ポーションも規格外だったが、マナポーションもヤバイな。浄化薬をもらってきたけど、瓶一本分流せば、沼地すべて飲料用にできるんじゃないか?


 もったいないから試そうとは思わないけどな。


「天宮さんのポーションって、お店で売ってたときにも買っていたのよね?」


 敵が減って余裕の出た圭子は、疑問をぶつけてきた。


 借金で裕真の店が閉店する前にも、俺は何度か商品を購入している。


 回復ポーションやマナポーションなんて、探索する度に補充していたのだ。他の商品よりも効果が高いことに気づかないなんてあり得ない。可能性があるとしたら……。


「店頭で販売してたのは、ギルド製の商品だったのかもしれない」


 裕真はチェーン店みたいな立ち位置で、ギルドが大量生産していた商品のみを販売していたって考えだ。


 裏側は非公開になっているので推測の域を出ないが、たった1人の錬金術師が毎日大量の商品を錬成できるとは思わないので、大きくは外れてないだろう。


「あー、そういうことね。安定した量と質を提供するためには必要なことだけど、ギルドはもったいないことをしていたわね」


 裕真の実力を錬金術ギルドが知らないというのは少しおかしい。普通はどこかのタイミングでバレるんだが、知晴さんが根回しして隠してるんだろうな。


「ギルドの話はその辺にして、地図を見てくれないか? そろそろ未踏エリアのはずだ」


 先にいた信也が俺の近くにまで戻ってきてた。


 マッパーで地図を見ると、確かにもうすぐ未踏エリアに入る。


 視線を前に向ければ、数キロ先に沼地の終わりが見えていた。


「信也の忠告通りだな。ここから先は未踏エリアだ。何が出てくるかわからない。気を抜くなよ」


 近づいてくる魔物を圭子の闇魔法で倒しながら未踏エリアを進み、沼地を出る。ブーツについた泥を落としてから、小休憩を取って出発した。


 すぐに森林が見えてくる。


 中に入ると視界が悪くなるので迂回しようとしたのだが、その前に大きな鳥の姿を発見した。


「あれって何だろうね?」


 上空を見ながら気が抜けたような発言をした光輝だが、頬は引きつっていた。


 離れているので分かりにくいが、人を簡単に丸呑みできそうなほど大きい鳥型の魔物だ。


 渋谷ダンジョンで討伐したドラゴンは小型だったので戦えたが、あれは人間がどうこうするレベルじゃないぞ。肉体強化ポーションを飲んでも勝てる気がしない。


 放置ダンジョンになった隠された理由がアレだったら、見つかる前に逃げるべきだ。


「森林に入って隠れる」

「異議なし!」


 隊列を崩してでも、俺たちは急いで森林の中へ入った。


 枝が広がっていて太陽を遮っているため、薄暗い。幽霊が出てきそうな不気味さを感じるが、だからこそ空にいる敵から隠れられる。


 俺たちはお互いに背中を向けながら、安全を確認することにした。


「敵はいそうか?」

「姿は見えない」

「こっちもよ~」

「僕も。とりあえず大丈夫っぽいよ」


 どうやら近くに魔物はいないようだ。


 警戒ラインを少し落としてもいいだろう。


「通常どおりの隊列にする。信也は先頭を頼んだぞ」

「おう」


 胸を叩いて自信ありげに言うと、大盾を構えながら奥へ行った。


 見失わないよう、俺たちは数メートル後をついていく。地面を見ると葉は落ちていない。地面がむき出しになっていて痕跡は残りやすいのだが、俺たち以外の足跡は見えなかった。


 沼地にはうんざりするほど魔物はいたが、ここにはいないか、いたとしても少数なんだろう。


「木にもいないね」


 後ろにいる光輝は上の方を警戒してくれていた。


 猿や蛇、鳥型の魔物がいるかもと思ったが、その線もなさそうだ。


 植物は生えているのに、生命の息吹を感じないほど静かであるが、立ち止まるわけにはいかない。森林の広さも分からずひたすら前に進んでいく。


 10分ほどだろうか。歩いていると、信也が立ち止まった。


 様子からして魔物を発見したわけじゃなさそうだ。


 近づいてみると水の流れる音が聞こえてきた。澄んだ川があり、深いところだと、俺の腰ぐらいまではありそうだ。


 近くには真っ赤な花が咲いていて、甘ったるい匂いが漂っている。


 周辺には二足歩行する豚のオーク、ジャイアントスネークといった魔物が倒れている。腐敗している個体もあれば、まだ生きているのもいた。


「みんな離れ……」


 危機感を覚えたのが遅かった。体が痺れて口が動かない。立っているのも厳しく、膝をついてしまった。


 花粉か何かに、痺れ毒が混ざっていたのだろう。


 仲間を見れば三人とも倒れていた。俺まで意識を失えば、魔物と同じ運命をたどってしまう。


 力を振り絞って、腰にぶら下げていた解毒ポーションを手に取り、震える指で蓋を取る。


 こぼしながらも口に付けて飲み込んだ。


 スーッと体の痺れが取れていくと、震えが止まって力が入るようになった。


「すごいな……」


 解毒ポーションは万能ではなく、毒の種類によっては効かない場合もある。また有効だったとしても、毒が抜けるのに時間がかかることもあって、一瞬で元気になるなんてことはあり得ない。


 しかも毒が舞っている空気を吸っても、なんともないのだ。


 解毒ポーションの効果が継続している。初見殺しの毒罠において、これほど心強いアイテムはない。


 俺が生きているのは、裕真のおかげだな。何度も命を救われている。錬金術においては、類を見ないほど頼りになる男だ。もう足を向けて寝られない。


 体の自由がきくようになったので、意識を失っている仲間たちに解毒ポーションを口移しで飲ませる。


 すぐに目覚めることはなかったが、弱っていた呼吸が戻ってきたので、危険は脱したと思っていいだろう。


 これ以上の調査は危険かもしれない。赤い花と周辺にある植物を採取して戻ることにするか。


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