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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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昆虫に囲まれたユミ

 手を握ったまま寝た翌日。


 朝早くから誠たちは放置ダンジョンへ入っていった。結構な量の酒を飲んでいたと思うんだけど、誰も二日酔いになっていない。一流の探索者だけあって、体調管理は完璧なようだ。


 初回は軽い調査をするだけらしく、夕方には戻ってくるとのこと。


 その間に俺たちは、お揃いの服一式を身につけて、山小屋の隣にある小さな畑を確認していた。


「マスター、雑草がすごいですね」


 長い間放置されていたので、畑と他のエリアの境界線も曖昧だ。半壊した木製の柵がなければ、わからなかっただろう。


 しゃがんで地面を確認すると小石も多い。取り除かなければ耕すのは難しそうだ。


「それじゃ雑草抜きと石拾いから始めよっか」

「はい。頑張りますね!」


 夜の時に見せた寂しそうな表情はしていない。太陽の光を浴びて元気いっぱいだ。すぐに雑草を抜き始めている。


「ここは畑になるので、ダンゴムシちゃんはあっちに行ってね~~」


 普通の虫もお互いに意志を送ることぐらいはできると言っていた。話ながら避難してって気持ちを伝えているのだろう。


「ミミズちゃんは~後で戻ってくるんだよ~~。葉を食べる虫さんはあっち行ってね~~」


 音程は外れているけど、楽しそうにオリジナルソングを歌っている。


 近くにいるクロちゃんは、踊っていて賑やかだ。


 この姿を見ただけでも依頼を受けたかいがあるというものである。


 仕事をユミにばっかり任せてはいられないので、俺もしゃがんで雑草を抜きながら、小石を拾ってはぽいっと投げ捨てる。誰に邪魔されるわけでもないので作業は順調だ。


 腰を労りながら雑草を引くと、強い抵抗を感じて止まってしまった。


 根っこが大きいのだろうか。


「ふんっ!」


 力を入れて引っこ抜くと、茶色い根っこではなく白い物体が露わになった。小さめだけど、これは大根だ。


 前に管理していた人が育てていたのが、繁殖したのかな?


 俺が見る限り、似たような葉っぱは他にもある。雑草だと思っていたけど、一部は野菜が自生していたのか!


 人が管理しなかった野菜は、スーパーで売っているのより味が落ちると効いたことがあるけど、実際はどうなんだろう。お昼に大根の味噌汁でも作って試してみようかな。


 ユミにも相談して見ようと思って姿を探すと、芋虫やムカデ、カマキリなどさまざまな昆虫に囲まれていた。クロちゃんの上にも昆虫がいる。


 虫たちのパラダイスだ。


 ちょっと近寄りがたい。


「えー。そうなの? うん。困ったね~」


 幼子に語りかけるみたいに、声を出している。


 お姉さんっぽく振る舞っているのは微笑ましいんだけど、相手が大量の昆虫だから何とも言えない気持ちになる。


 近づくのもためらわれたので、大根を引き抜きながら時間を潰す。


 作業は楽しいけど腰が痛くなるよね。畑の半分ほど余計な草が抜けたので休憩することにした。


 帽子を取って汗を拭う。


 ほどよく疲れて気持ちがいい。このまま横になって寝たいぐらいだ。


「マスター、お願いがあるんですっ!」


 昆虫との語らいが終わったみたいで、ユミが声をかけてくれた。


 帽子の上にムカデが乗っかっているだけ。他の昆虫は解散したみたい。


「なんだい?」

「実は近くに昆虫を食べる魔物がいるみたいなんです。討伐の許可をもらえないでしょうか」


 ダンジョンから魔物が出るパターンは、大きく二つに分けられる。


 一つ目は錬金術師御用達の店みたいに、素材として捕獲すること。もう一つは密猟だ。出入りのないダンジョンに侵入して魔物を外に持ち運び、売りさばく仕事をしている人たちがいる。


 どちらにしろ魔物は商品として扱うため、野に放つことはないんだけど、途中で逃げられる場合もあるんだ。


 特に密猟の場合は事故が起こりやすく、魔物が脱走するなんてケースはよく聞く。


 放置ダンジョンの鍵は壊れていたし、昆虫たちが被害に遭っている魔物も、そういった経緯で外に出たんじゃないかな。


「魔物の特徴はわかる?」

「亀みたいに岩でできた鎧を背負っているみたいです」

「うーん。たぶんインセクトイーターかなぁ~。アイツの鎧は、錬金術の素材に使えるんだよね」


 魔物由来の素材と組み合わせることで、軽くて頑丈な合成素材になる。


 ばーちゃん家の倉庫にもなかったから、手に入れておくのも悪くはないね。


「よし、昆虫の依頼を受けよう」

「マスター……っ!!」


 俺の言葉でユミは喜んでくれたようだ。帽子の乗っているムカデも飛び跳ねている。


 触りたくはないけど、離れたところから見る分は無害だから気にならない。


「ミスラムを連れていこう。クロちゃんは、どうしようかね」


 敵がインセクトイーターなら毒は効かない。クロちゃんの天敵とも言える。


 連れて行けば、足手まといになるんじゃないかと思って悩んでいた。


「お留守番してもらいましょう。いいよね?」


 クロちゃんは全身を横に振って拒否した。ついていきたいのだろう。


「山小屋の警備も重要なお仕事なんだよ。クロちゃんにしか頼めないの。どうしても嫌かな?」


 おお! ユミの説得スキルが上がっている! こう言われたら断りにくい。クロちゃんは頭を前後に振って受け入れてくれた。


 昨晩は子供モードも良かったけど、今日のお姉さんモードも悪くはない。


 どちらのユミも最高だ。


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