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伯爵令嬢の我儘  作者: 澪亜
EP5.我儘の影響
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お嬢様は、懸念する(6)

「皆、お疲れ様」


ブラッドリーが拠点に戻ると、クリスティーナがべサニーと共にいた。

既にロナルドとアルマもいて、この場にいないのは王都にいるアルバートとトーマスだけだ。


「正式にはアルバートからお礼があると思うけど、私からも心ばかりだけど幾つか品を見繕ってきたわ」


そう言って、彼女は直接三人に袋を渡していく。中身を見れば、ロナルドはワインとつまみ、ブラッドリーはビールとつまみ、それからアルマはお菓子だ。

勿論、それらは一平民が簡単に入手できるようなそれらではない。

そして、三人それぞれの好物でもあった。


「私の為ではないでしょうけど、それでも御礼を言わせて頂戴な。本当に、ありがとう」


それだけ言って、彼女はべサニーを伴って拠点から出る。

帰りがけ、彼女はブラッドリーの怪我を治癒して。


二人が出た後、三人は深く溜息を吐いた。


「何で貴族のお嬢様が、あんなに強い力を持っているんだろぉ」


アルマが一番に口を開く。


三人は常時、鑑定魔法を展開している。

鑑定魔法とは、相手の魔力やどれだけ魔法を使い慣れているかを測る魔法だ。


彼らは、相対する人物が魔法師としてどれぐらいの練度かを測る為に、常日頃からその魔法を使っている。

彼らを以てして、アルバートは化け物だ。

そして鑑定魔法を通して見れば、アルバートよりも更に上をいく化け物がクリスティーナなのだ。


厳密に言えば、彼女に魔力はない。

聖女は魔力を持たない代わりに、聖力を持ち、他者を癒すことができるからだ。


とは言え、今の時代に聖力の概念はない。鑑定魔法では魔力も聖力も、等しく人智の及ばぬ力として見える。


そして、彼らの鑑定魔法を通して見えた結果は、彼女が保有する聖力はアルバートの魔力以上。

それ故、アルバート以上の化け物、という言葉に繋がる訳だ。


「相変わらず、尊い……」


三人の中で、唯一アルバート以上にクリスティーナを崇拝するロナルドが、目を輝かせていた。

恐らく手の中にあるワインは、勿体無いと開かれることなく飾られるだろう。


「っていうかぁ、ブラッドリー、怪我をしていたんだねぇ。よっわ」


「かすり傷だよ、かすり傷。しかもお前、気づいてなかったじゃねえか」


「そうなんだよねぇ……。むしろ、何でクリスティーナ様、気がついたんだろう?」


この場にクリスティーナがいれば、真顔で『聖女の基礎スキルよ』と言い放っていたことだろう。


「まあでもさぁ、真面目な話、あの魔力量はやばいけどぉ……魔力の性質がぁ、リーダーとは全然違うのねぇ」


「だからこそ、二人の力の使い方が全然違うのかもなぁ」


「そうかもねぇ……ま、バランスが取れてて良いかもねぇ」


「さて、んなことより酒盛りだぁぁ!」


いそいそとブラッドリーは袋を開けて中身を取り出す。


「酒臭いのは勘弁ー。それじゃ、私は家に戻るねぇ」


そうして、アルマは拠点を出て行った。


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