お嬢様は、訝しむ⑨
※今日、2話目の更新です
「あとでお父様へのおねだりの仕方は考えないとね」
クリスティーナの呟きに、アルバートは口を開く。
「貴女様の願いなら、反対されることはないかと」
「そうね。ついでに、私に仕事が回ってくるでしょうから……誰かこの仕事を主に担当する人も貰えないかと思って。私だって、いつまでいるか分からないし……やがてお継ぎになる、お兄様の助けにもなるでしょう?」
「ああ……なるほど。ところで、クリスティーナ様。本当に知識を与えることが、対抗策なのでしょうか?貴女様の慧眼を疑う訳ではありませんが、果たしてそれで十全に叶うのかと」
「ああ、無理でしょうね。勿論、思考力がないと論外だから、それ自体を養うことは無駄ではないわ。でも、こういうのはいたちごっこみたいなところがあるからね……悪意を持つ者たちは、より巧妙になるでしょう。それに一番問題なのは、学び手が惰性で学んでも身につかないでしょうから」
「まあ、そうでしょうね。そういった意味では、痛い目を見た彼らは必死になるでしょうが……」
「あとはその時々で学ぶ内容を見直すしかないでしょうね。それと、騙されかけ助けを求めた者には罪が軽減される、あるいは保護を受けられるような制度を作る。機会は与えた上で、それでも騙されるようであれば……それは自己責任でしょう。無知を盾に何でも赦される訳ではないわ」
「確かに、それは仰る通りかと」
「ああ、それと……今回の件、ブランジュと協力して領内にしっかりと広めておいてね。再発防止のために、こういった事例があるということを周知させることもまた重要だわ。それに……」
ふふふ、と小さくクリスティーナは笑う。
「今回の件は、見事な勧善懲悪のストーリーだわ。民衆の大好きな、ね。変に漏れてアビントン伯爵家の好感度が下がる前に、我が家の正当性もしっかりとアピールしておかないとね」
「畏まりました。その役目、しっかりと果たしてみせましょう」
「貴方には、いつもお願いばかりね。何か、欲しいものはないの?」
クリスティーナの問いに、アルバートは首を横に振った。
「私の欲しいものは、全てこの手にありますから」
そして、麗しい笑顔を浮かべるのだった。




