#69 発情期のケモノ
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ユナイトやろうぜ
「――もう一度、言わせてください。好き、です。ぐれんさんのことが、好きです」
改めて、モネがそう俺に告げる。
俺は、そう言った彼女の真っすぐな視線から目を離せなかった。
「あ……えっと……その」
ズキン。
俺の胸には、痛みのようなものが感じられた。
一体、どういう事なんだ。冴えなくて、学校でもクラスの隅っこにいたこの俺が、昨日今日で二人の女の子に告白されるなんて。
冥には、返事はまだいいと言われてはいるが、早く決めて答えてあげなくちゃとは思っている。
それに、今だって――。
――ガサッ。
「……っ!?」
背後からいきなり物音がして、俺は振り返った。
が、近くには俺たち以外の人影は感じられない。気のせいだろう。
なんて思っていたら。
「……あはは、見つかっちゃってたのかぁ……」
「……? ど、どういう意味だ……?」
「えへへ、ごめんなさいぐれんさん。さっきの言葉は忘れてください」
「え……それって、どういう……」
「多分、私より相応しい人が、貴方のことを待っているので――――ごめんなさいっ…………」
そう言って、モネは走り去っていってしまった。
これは後の話だが、俺にとってこの日の出来事は、忘れられないくらい鮮明に記憶に焼き付いていた。
――走り去っていく時に気が付いた。モネの、涙。
それが分かった時、俺の中の考え方が変化した。
俺は、陰キャだからとか、そういう考えをしてしまっていたが……それは、変えなきゃいけないな。
二人の女の子が、俺のことを一人の男として『好き』だと言ってくれたんだ。きっと、告白するのにもすごい勇気が必要だっただろう。
俺は、二人の覚悟に、二人の想いに応えるためにも、自分の気持ちと、これからのことにケジメをちゃんとつけなきゃいけない。
二人に、俺のことを支えてくれる最高の仲間たちに相応しい男になるために。
俺は、少しの間思案し、やがて考えがまとまると、一度宿屋へ戻ることに決めた。
◇◇◇
宿の扉を開くと、受付にいた人が心配そうな顔をして俺のところへやってきた。
「あの……旅人さん。少しよろしいでしょうか?」
「はい? なんでしょう」
「あ、いや、私の杞憂だったらいいんですけどね? 先程お連れ様が一人、別の部屋を取ってくれとやってきまして」
「えっと、それってどういう人でしたか?」
「金色の髪が綺麗な、可愛らしい獣人族のお嬢さんでしたよ」
……メルだ。メルが、俺たちと――いや、俺と同じ部屋なのを嫌がって、別部屋をわざわざ取ったんだ。
「すみません、その子が取った部屋ってどこですか?」
「二階の、一番奥の小さな部屋ですが……」
「ありがとうございます!」
それだけ聞くと、俺は急いで二階へ駆けあがった。
謝らないと。喧嘩したことや、彼女の気持ちに気遣いが出来ていなかったこと。心配をかけたこと。全部、全部。
そして、改めて伝えるんだ。
君を死んでも守るから、って。もう絶対に、一人にはしないからって。
二階に上がると、俺は受付のおじさんが言っていた一番奥の小部屋の前に立った。
「メル、いるか? いるなら返事してくれないか?」
返事は無い。やはり、俺の言葉など聞きたくないのだろうか。
いや、ここまで来て引くわけにはいかない。
俺は部屋の扉をコンコンと優しくノックすると、再び声をかけた。
「メル、頼むから……いるのなら、答えてくれ……」
しかし返事は無い。
もうこうなったら、強硬手段だ。
俺は勢いよく部屋の扉を開いた。どうやら、鍵はしてなかったみたいだ。
「えっ、あっ、鍵は……」
「やっぱりいたのか……メル。鍵ならしてなかったようだぞ。うっかりさんだな」
中は、明かりがついていなくて真っ暗だった。
そんな真っ暗な部屋の中、ベッドの上に膝を抱えて座っている一人の少女が。
俺はその少女の元に、ゆっくりと近づいていく。
「……メル、話がしたくて俺はここに来た」
「――いや。来ないで」
「いいや、ダメだ。今の俺は、本気だ」
「……っ。本気、って…………」
強い覚悟の表れだった。
俺はベッドの上に乗ると、そのままメルの方へと顔を近づける。
「いや…………いや…………!」
しかし、彼女はそんな俺を拒絶するように手を振った。
……そうか。俺はもう、そこまで嫌われていたのか。
ズキン。
「……ごめん。少し、やり過ぎたかも」
「あっ…………」
そう言って、俺はベッドから降り、そのまま離れた。
ただ、俺は仲直りがしたかっただけなんだけどな……。
なんで俺はあの日、あんな醜い喧嘩をしてしまったのだろうか。
なんで俺は――彼女に心配をかけるようなことしかできないのだろうか。
「……ごめんな」
何がどうなって、こうなったのかは分からない。
どこから狂い始めたのかも分からない歯車は、もう元には戻せない。
この村に来てからだっただろうか。
それとも、もっと前から……?
ただ、俺の中には悲しい気持ちが、苦しい気持ちがいっぱいだった。
もう、謝って、関係を元に戻す余地させなかったのだから。
「待って……違うの、違うの……」
メルは、俺はそう言って呼び止める。
振り返ると、彼女の顔はあの日の冥みたいに蕩けた顔になっていた。
上気し、赤くなって。とろんとしていて。
それはまるで、捨てられた子犬みたいな。
刹那、ドキドキが加速した。
「ぐれん、さん……。こっちに、きて……」
俺は、静かに頷くと。
一歩ずつ、ゆっくりとメルの方へと歩いて行った。
「っ…………!」
俺がベットの前までまた来ると、俺はメルによってベットの上に押し倒されてしまった。
「……メル?」
「ごめんなさい……ごめんなさい……。こんな私を許して……っ」
そう言いながら、彼女は――。
――衣服をはだけさせ、真っ暗な部屋でもはっきりと分かるくらい扇情的な身体を見せてきたのだ。
次回は明日更新です!章終わり!
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