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最弱な俺が『最強』の美少女たちに姫扱いされる件  作者: テトラ
第五章 ≪妖精姉弟との出会い≫
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#37 劣等感

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物語序盤のあれが、再び……。



「――冥、お前はどうしてそんなに強くなれたんだ? どうして、そんなに強く在れるんだ?」


 本当なら、この質問をするべきは冥じゃなくて姉さんや、今はいない冥の兄さんにするべきなのだろう。

 だって二人は、俺や冥を守るために誰よりも苦労をして、誰よりも努力をしてくれた人間だったから。


 ……本当は、二人とも両親を失って辛いはずなのに。

 俺たちに辛い顔を見せまいと、頑張っていたのだろう。


 だから本当は、冥にするべき質問ではないことは分かっている。

 でも、冥は正真正銘の『天才』だ。それは、嫌というほど見せつけられてきたから分かる。

 ……だからこそ、聞いてみたくなったのだ。俺とほとんど同じ立場であるはずの、彼女に。


「お兄ちゃん……」


 冥は、立ち止まって考えていた。

 辺りには、少しだけ重い空気が流れる。


 心なしか、メルも緊張しているように見える。

 どうやら俺と冥の間に流れた緊張感を感じ取ったようだ。


「……それは、ですね」


 冥が、重たい口を開いた。

 そして、帰ってきた答えは――




「――それは、わたしが『天才』だったからですよ。『才能』に恵まれていたから、強くなれたんです。強く、在れたんです」




 ……それは、俺の求めていた答えでは無かった。

 むしろ、聞きたくもない言葉で。


「凡人がいくら努力しても追いつくことのできない領域、そこにわたしは生まれた時から居たんですよ」


 やめろ、やめてくれ。

 これ以上はもう、聞きたくない。


「まあ~? わたしはお姉ちゃんもお兄ちゃんも、悠にいだって超えるくらいの天才美少女でしたからね~!」


 やめろ、やめるんだ。

 もう、口を開かないでくれ。冥。


「まあ、だからお兄ちゃんが気にすることでは無いですよ! 人には人のペースっていう物がですね――」

「……ッ!!!」

「え、あ、ちょ、ちょっとお兄ちゃん!? ど、どこに!」


 もう、やめてくれ――。

 俺の願いは、言葉にはならなかった。


 冥の言葉を聞くことに耐えられなかった俺は、たまらずその場から逃げ出した。

 とにかく、遠くへ行きたい気分だった。


 こんな気持ちになったのはいつぶりだろう。

 『現実』を叩きつけられて、自分がどうしようもなく惨めな存在に思えてきて。


 とにかく逃げることしかできない自分が、ただただ情けなくて。

 変わろうと頑張っても、変われなくて。結局いつもこのザマだ。


 多分、冥に悪気があった訳じゃないのは分かる。あれは、いつもの自慢癖の感覚で話していたのだろう。

 でも、いつだって人は無意識の悪意にさらされている生き物なんだ。


 今回はそれが、目に見える形となって、俺の心を突き刺した。


「くそ……くそッ!!」


 俺が、弱いから。俺が強ければ、こんな思いをしなくても済んだのに。

 俺が、もっと強ければ――――。






◇◇◇◇◇






 走って、走って、走り続けた。

 さっきまでは、整備された街道を進んで森に向かっている最中だったのだが、今は違う。


 メルや冥に見つかりたくなくて、少し外れた道を走って。

 そして今、俺は森の中をさまよっていた。


「ここ、は……」


 森の中には霧が充満していて、視界がとても悪かった。

 それでも奥へ奥へと進んでいくと、小さな水場が目に飛び込んできた。


 俺はそこまで近寄ると、その水をスキルで鑑定して、安全な水であることを確認したのちに少しだけすくって飲むことにした。


「うまい、な……」


 二年間過ごしていたあの大森林の水も美味しかったが、ここのはそれとは別格に美味しかった。

 なんというか、澄み渡るような……。


 なんて俺が心の中で評論していると、近くからガサガサ……という物音が鳴る。


「……ッ」


 もう、見つかったのか。それとも、何かの魔物か。

 そう思って剣を構えると、物陰からは二つの人影が飛び出してきたのだ。




「――!! に、人間……!?」

「お姉ちゃん、もうこの人に頼るしかないよ!」

「で、でも……」

「いいから! 見たところあの人は敵じゃなさそうだし!」

「……わ、分かったよ」




 な、なんだ? 何の話だ?

 頼るとか、敵とか……訳が分からないんだが。


 そう思っていると、目の前に現れた二人の内の、小さな男の子の方が俺に向かって頭を下げた。




「あ、あの! ――ぼくたちを、助けてくださいっ!」


次回更新は明日です!!

最近熱くなってきたので皆様ご自愛くださいね。

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