#17 森での暮らし
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「――グレンさん! 手ごろなイノシシをそこで狩ってきましたわ!」
「おう、ありがとう!」
俺――緋神紅蓮は、獣人族の美少女『メル』と共に、俺が二年間過ごしてきた大森林での生活を続けていた。
「でも、こんなのをどうやって調理するの?」
「ふふふ、まあ見てな」
――スキル『料理』発動!
これによって高められた俺の食材調理の技術は格段に跳ね上がる。
つまり、こんな下処理もされていないイノシシだって――
「ほっ、よっ、はっ!」
パパパッ。と処理が終わってしまうのだ。
流石聖剣様。切れ味が段違いだよな。
『やっぱりワタシが包丁替わりなのはいつまで経っても納得できないのだ~!!!』
「まあまあ、そう怒りなさんなって」
『ぶ~~~!!!』
さて、これで料理の準備は整ったし、あとはパパッと料理して日課をこなすとしますか!
「す、すごいわ……まさに神業ね」
「そんな褒めても何も出てこないぞ~?」
そう言いながらも、その実俺の内心ではとてもテンションが上がっていた。
料理を作っているスピードがいつもより段違いに速いのが自分でも分かるくらいだ。
「す、すごい……! こんな早業、今までに見たことが無いわ……!」
メルが目を輝かせて俺の料理を見ていた。
スキルのお陰とは言え、褒められたり憧れられたりするのはとても気分がいいな。
俺は今だに怒っている桜花を横目に、手早く料理を終わらせると、木で作った器によそってメルにも渡した。
「ほい! えっと……イノシシ使ってるから、ジビエスープとかになるのか?」
「じびえ?」
「ん~……まあ、イノシシのスープだ! 王族だったメルの口に合わないかもしれないけど……」
「そ、そんなことないわ! こんなにあったかい食事……久しぶりで、涙が……」
まだ食べてもいないのに、涙をほろほろと流しているメル。
やっぱり相当弱っていたんだな。
「ま、まあ泣くにしても食べてからにしてくれよ? 冷めちゃったらおいしくなくなるし」
ちなみに今の言葉は本当だ。
前に一度冷めた物を食べたのだが、びっくりするくらいマズかった。
なんならそのあと一日中お腹壊してたくらいだし。
「お、おいしい……!」
「それは良かった」
と、どうやらメルの口にも俺の料理は合ったみたいだ。
よかったよかった。
『……いいな、メルは』
「……何か言ったか? 桜花」
『何も言ってないのだ』
「そっか」
なんだか、最近桜花の様子がおかしい気がするけど……気のせいなのかな。
なんて考えていると、メルがこう言った。
「それにしても、やっぱりそれ……不思議よね。しゃべる剣だなんて、おとぎ話の中でしか聞いたことないわ……」
「あー、まあ確かにな。事実、おとぎ話の中に出てくるような存在だし」
「え? 今なんて――」
「あ、いや。今のはあんまり気にしないでくれ」
……いくら信頼してる相手とは言え、誰に聞かれるかも分からない状況で「これは『聖剣』です」なんて言えるほど俺は馬鹿ではない。
本当に言える状況が来た時に、彼女にはちゃんと話そうと思っている。
「ま、グレンさんがそう言うなら気にしないことにするわ」
「そうしてくれるとありがたい」
深く追及はして来ないみたいだ。
やはり彼女は、とても優しい心の持ち主なんだな。
「それで? このあとはグレンさんていつも何をしているの?」
「ん? この後か? この後はいつも……」
――日課として、剣の訓練と、森の探索……それに最近は、獣人語とか色々と覚えようと勉強しているのだ。
って、あれ……そういえば今の今まで気づかなかったけど……
「――って、そういえばメルにはどうして俺の言葉が通じているんだ? たしか種族ごとに言語が違ったような……」
「ああ、それなら……小さい頃から勉強していたのよ、人間族の言葉は覚えておくと便利だぞって言われてたから」
「なんだ、そういうことだったのか」
「ええ。お陰で今こうしてグレンさんとの意思疎通が取れてるから、ちゃんと勉強しててよかったって思うわ」
英才教育さまさまだな。
「でも、そっか……剣術に、言語の勉強……」
「ん……? どうかしたのか?」
「いや、それくらいなら私が教えてあげられるかなって思って……」
「……ッ!!!」
瞬間、俺は、彼女の手を取った。
「ぴゃっ!? な、なに!?」
「――それは本当か!? メル!」
「え、ええ。それくらいなら徹底的に学んできたし……」
「な、なら教えてくれないか! 桜花の教えじゃちょっと分からないことが多くて……」
『なんだと~!?!? せっかく教えてやってるというのに!』
だって教え方下手なんだもん。
習うより慣れよ派の教え方してるからな、桜花は。
「わ、分かったわ……。分かったから、は、はやく手を……」
「あっ…………ご、ごめん……」
『ああああああああもう!! 二人でイチャイチャするなあああああああああ!!!』
◇◇◇◇◇
二人が森の中で、そんな会話を繰り広げている裏では、密かに大きな戦闘の準備が進められていた。
一つは、メルを取り戻さんとする奴隷商の率いる荒くれ者軍団が。
一つは、森にアジトを作って王都や周辺の街で盗みを働く大盗賊集団が。
そしてもう一つは、それらを倒して捕まえようとしている、王直属の聖騎士団が。
間もなく、戦いの火蓋はきって落とされることになる――。
「そういえばお手洗いはどうしているの?」
「え? そりゃそこら辺の草むらで……」
「な、ななななな! そんなああああああ!」
『わーはははは! ざまあみろ、なのだ獣人の娘よ~!』




