#13 暗闇
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「そん、な……」
俺はその場に崩れ落ちた。
自分でもびっくりした。この時俺は、立ち上がることすらできなくなるほどに脱力しきってしまっていたのだ。
だが、それもそのはずだろう。
目の前で、一瞬のうちに好きな人が殺されて……
「ころ、され――?」
影咲の身体からドクドクと流れ出てくる赤い血が、俺の膝を伝って足先までじわじわと広がっていった。
その感覚が、俺には新鮮で――初めての出来事だったから……。
ただただ、絶望することしかできなくて。
なんで? どうして? って何回も何回も呟いて。
あの時俺がした決意は無駄だったんだ。
何が強くなる、だよ。大切な人を守れなかったじゃないか。
『ぐ、ぐれん……』
桜花が、心配そうに俺の名を口にした。
でも、桜花の気持ちなんて今はどうでも良かった。
今の俺はただ、深い深い絶望に囚われているだけ。
視界も、なんだか暗くなってきた気がするな。
『ぐれん、は、早く行かないと……』
「ど、こに……」
『どこか遠くに、なのだ。このままじゃ、ぐれんは捕まってしまうのだ……』
なんで、俺が……?
『この状況を、第三者が見たらきっとこう思うのだ。こいつがやったのか、とな』
「そん、な……俺は、ただ……」
『ああ、ワタシは分かっている。でも、他の人間はそうではないだろう?』
ああ、そうだ。
人間っていうのは都合のいい生き物だったな。
必要になれば求めて、必要ないと思ったら遠慮なく切り捨てる。
そうやって都合よく取捨選択できる、狡猾な種族なんだったな。
『だから、急いでこの場を離れるのだ……』
「でも……でも……ッ!」
『悲しい気持ちはわかる……でも、このままここに居続ければ、ぐれんも、ワタシも……捕まって、酷い目に……』
「……ッ!」
桜花も……そうか、そうだ。
俺が捕まれば、桜花だってまた封印されてしまうかもしれない。
それに、あの禍々しい男が前に言っていた。
所有者である俺が死ぬと、聖剣もいずれ朽ち果てる、と。
「――こ、こっちから異臭が!!!」
なんだ、大通りから大声が……?
『ま、まずいのだ……急いで逃げるのだ……!』
「でも、俺は……俺は……俺はアアアアアアアアッ!」
『ぐれんッ!!!』
「うあああああああああああああああああッッッ!!!!!」
考えている時間は、俺には無かった。
だから、大きな声を出して何とか自分に喝を入れて、それでそのまま走り出した。
影咲……俺は、俺は――
「ああああああああああああああああああッッッ!!!!!」
俺の叫び声は、朝の陽ざしに溶けて消えていった。
◆◆◆◆◆
森へ。あの森へと向かって。
とにかくひたすらに走った。
人が普段寄り付かないあの森へ行かなきゃ。
その一心で俺は走り続けた。そして、森へ着いた。
――影咲が死んだこと。
――桜花を守ること。
――決意したこと。
――絶望したこと。
色々な思いを抱えたまま、行く宛も無く、持ち合わせも無く――
――森で過ごすこと、早二年が経過した。
【topics】★世界観について
この世界は、基本的には現代日本と共通する部分が多い。
例えば、お金や人間族の言語なんかは、日本とほとんど同じものの異世界版のような感じ。
ただし、他種族の言語は海外のようにそれぞれの言語が存在しているので、学ばなければ話すことも読み書きすることもできない。




