#114 逃亡者の現状
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新章開幕
……お久しぶりです。月島 晴です。
現在僕たちは、『アルステラ大陸』と『カティア大陸』……もっと分かりやすく言うならば、『カルマ王国』と『ペイン獣王国』との間の国境地帯にいます。
さらに正確には、国境にある中立都市『ベルク―ド』にある宿屋に滞在しているところです。
「月島君。ちょっといいかな?」
アレクさんに呼ばれて、僕は椅子から腰を上げた。
「そろそろ彼女たちから話を聞こうと思ってね。もう……あれから三日も経った事だし」
「そうですね……分かりました」
僕はアレクさんにそう返事をして頷くと、そのまま静かに部屋を後にした。
ここで、一度現状を整理しておきましょうか。
まず、僕たちは国から追われる『逃亡者』の立場になっています。
アレクさんに『逃げるか』、『利用されつつも戦うか』という二択を出されて、僕含め17人のクラスメイト達は『逃げる』事を選びました。
5人のクラスメイトはカルマ王に利用されると分かっていても戦うことを選んだのです。
結果として、僕たちはアレクさんとその部下の聖騎士4人を加えて33人での国外逃亡を図りました。
しかし、その途中で通った『ディクス大森林』で事件が起きたのです。
この世界に召喚されて早くに事件に巻き込まれてしまった『緋神 紅蓮』君と『影咲 奏』さんを発見し、そして……。
――『魔王』と呼ばれる強大な力を持つ魔人と、それに並ぶくらい強い二人の部下とも遭遇しました。
いや、正確には遭遇したのは僕たちではありません。
魔王と、何故か彼に付き従う影咲さん。そして緋神君と何らかの関係があると思われる眼鏡の青年。
その三人に立ち向かうのは、緋神君とその仲間たちでした。
僕たち逃亡者は、そんな二組の戦いを陰ながら見ていたのです。
アレクさんの指示で、絶対に見つかってはいけないと言われ、僕たちはただただじっとその光景を見ていました。
が……魔王たちの力は圧倒的で、緋神君は――殺されてしまったのです。
そして、それが確認できた次の瞬間。
戦いの舞台であった大森林の中の湖……が干上がってクレーターと化してしまった『ディムナ湖』が真っ黒いオーラに包まれて、中の様子が見えなくなってしまったのです。
それから少しして、中で強大な魔力反応がもう一つ現れました。
魔王が放っていたものとは違う……それよりもより強大で、背筋が凍るような恐ろしい気配がしました。
数分が経って、そのどちらの気配も消えて……僕たちはアレクさん先導のもとすぐにクレータの内部へと急ぎました。
そして、そこで見つけたのです。
――緋神君の仲間と思われる、五人の人たちを。
「――皆さんにはここで休んでもらっている」
「……はい」
そして僕たちは、彼の仲間を救助し、急いであの森から離れ……。
中立都市ベルク―ドまで馬車等を乗り継いで逃げてくることに成功したのです。
『彼女たち』は一日経って全員目を覚まし、二日目に何があったのかを理解するためにそれぞれで考え事をしていて……。
そして、昨日は全てが終わってホッとしたのか……あるいは緋神君がいなくなったことを知ってショックを受けたのか、全員が塞ぎ込んでしまっていた。
――三日が経った今日。
僕たちは、彼女たちにあの日あの場所で何があったのかを聞こうと思っていた。
アレクさんと、僕――月島晴。そして、クラスの代表格のイケメン二人組……八木君と楠木君。
ついでに僕とはあまり仲の良くない……が頭だけはいい相園さんも一緒になって、合計五人で彼女たちの集まる部屋へと向かっていた。
「……いいか、皆。特に楠木君。君は特に気を付けてほしいんだが……」
「ええ、なんすか?」
「彼女たちは恐らく今頭がいっぱいいっぱいで、余裕もそんなにないことだろう。だから、あんまり踏み入った質問や反応はしないようにな」
「……流石にそれくらいは弁えてるッスよ……」
アレクさんに釘を刺されてしまった楠木君。
「俺ってやっぱそんな風に見えるんスか……?」
「ははっ、まあお前はチャラい見た目してるからな。印象はあんまり良くないかもな」
「おいおいそりゃないぜ八木~! 人は見た目で判断すんなってよく言うだろ~?」
「でも、実際楠木さんってデリカシー無いというか……」
相園さんがボソッとそう呟いた。
「たしかに……」
僕もそれについでに便乗しておいた。
なんとなく。
「おいおい二人とも~」
楠木君は笑って僕たち二人を叩いてきた。
「そういうところですよ……」
と相園さんが怒った様子で楠木君と距離を取ると、アレクさんが彼らに注意しながらこう言った。
「二人とも。この後はそういう軽い態度では許さないからな?」
「それじゃあ……行きますか?」
「ああ――行こう」
次回は明日更新です。よろっぷ
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