#111 黒
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「い、一体……今のは……」
俺が【黒斧】を拾った途端に力が暴走して周囲を巻き込んだように見えた。
周囲を黒い閃光が包んだ時驚いて【黒斧】を落としてしまったのだが……
だんだんと周囲の閃光も和らいでいき、視界が暗さに慣れてくる。
「――ああ、夢にまで見た外の空気……そして、身体の感覚ッ!」
徐々に見えてくる視界に、一人の人間が映った。
「お、お前……は?」
「――おお……これが……これが『自由』の素晴らしさだったのか……! あの頃は自由であることがこんなにも幸せだとは思わなかったぜ……」
だんだんと見えてくるその男は、その身体に真っ黒いオーラのようなものを纏っているのが分かった。
後ろを向いていて顔は良く見えないが、かなり背が高くガタイも良かったので、筋肉イケメンなのだろうと予想がついた。
俺はその男に再び問いかける。
「お前は一体……何者なんだ……!」
「――うん? 何だお前は……って、もしかして!」
すると、男は俺の声を聞いて振り返ったのだが……やっぱりイケメンだった。
20代後半から30代前半くらいの、若干の渋みがある顔をしていて、桜花と同じような綺麗な短い金髪が特徴の美丈夫。
何故か上半身は裸だが、黒いコートを羽織っているのと中学生が好きそうなかっこいい銀色のアクセサリーをジャラジャラとつけている事からそこまで気にならなかった。
瞳は悪魔のような深紅に染まった色をしていて、やはり何よりも目を引いたのは真っ黒いオーラが纏っているように見えたことだ。
「もしかして、お前! 俺を解放してくれた人間か!? うおお!! マジで感謝するぜ人間の小僧!」
「こ、小僧って……。って、お前は一体誰なんだって……」
ゲレスそっちのけで俺は目の前に現れたこの男と話していた。
榊原さんやゼナさん、それに桜花や洗脳されたミュータント達、さらには戦っていたゲレスまでもがその目の前のイケメンに気を取られて立ち止まっていた。
「俺か! 俺の名は――名前、は……あら、忘れちまったってのか、俺は……自分の名前を……」
自分の名前を、忘れた? それって、まさか……
俺はすぐに地面を見回した。さっき落としたはずの【黒斧】が無ければあるいは……と思ったのだが。
「無い……って事は、まさかお前は……!」
「――今さっきまで、俺は斧になっててよ。さっきお前が俺を持った時に力が溢れてくる感覚に襲われて……」
やっぱり! コイツは……このイケメンは、【黒斧】なんだ!
どうして俺が触れただけで、特に契約とかもしていないこの【黒斧】が人になれたのかは分からないが……それはまた後程聞くとしよう。
「気がついたら、人に……」
「――黒を連想させるものばかり……か」
俺は気がついたら、この男に与える名前を考えていた。
「……なあ、俺の名前は……」
「――ノワール、とかかっこよくていいと思うけどな……」
つい、思っていたことをポロっと言ってしまう俺。
すると。
「ノワール……? なんだよ、それ……」
まずい……戦闘中だったってのと、俺の物にしないとっていう焦燥感と独占欲が、名づけという契約をさっさと済ませようとしてしまって……。
頭に思い浮かんだ名前を何も考えずに言ってしまったのが……この様子、この男を怒らせてしまっただろうか……。
「うおおおおお! かっけえじゃねえか! いいぜ、気に入った! 俺は今日からノワールだ!」
と、思ったがそうでもなかったらしい。全くの杞憂だった。
「うし! そんじゃあちょっくら身体を動かしてきたいんだが……」
「ああ、それならそこの……」
と、俺はゲレスを指さして言った。
「ソイツと遊んでやってくれよ」
「殺してもいいのか?」
「いや、出来るなら捕らえてほしい、かな」
「クハハ! 了解した!」
嬉しそうに頷いたノワールは、勢いよく飛び出していった。
「な、何ですかいきなり! その男はまさか……って――」
「悪いが、俺の遊び相手になれッ!!」
「ぶふぉおおおおおおおおおおッ!!!!」
そして、嬉々とした様子でゲレスを拳一つで遠くまで吹き飛ばすと、それを追ってノワールは遠くまで消えてしまったのだった。
次回更新は明後日です。
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