再び森へ
「一角兎ねぇ。そういや俺は、ちゃんと魔法とか使えんのかな? なんか風魔法持ってるはずだとか、ショタコンなアンナさんに言われたけど。まあ、やり方はなんとなく分かるんだけどよ。試してみるかっ! 走ったりするのには【追風】を使ってたのは覚えてるんだけど、あとは何が使えたんだっけ……【電撃】お! めちゃくちゃ小さいけど、稲妻みたいなのが手の平から出た! 出たけど飛ばねえじゃん。こんなので魔物倒せるのか? あとは藪の中から獣を追い出せそうな【旋風】っていうのと、投擲に使える【風乗せ】に【風刃】かぁ。やっぱり弱いよなぁ俺。下から二番目のハンターランク、[銅の星二つ]の俺じゃ生きていくのにギリギリだなぁ。まあ、コツコツ稼ぐしかないな。とりあえず兎探しに森へと向かいますかねぇ」
ブツブツ独り言を言いながら、森へと歩き出すアレス。
ハンターランクは上から金、銀、銅だが、それぞれの中に星一つから三つまで分けられる。星が多い方が上位である。
金の星三つともなると、王族から依頼が来るような凄腕である。
ちなみに入り立ての新入りは、ウッドと呼ばれ、ハンターと名乗るには魔物を倒して見せて初めて、銅の星一つのハンター章が貰える。
貰えると言ったが、銅貨3枚経費に取られるのだが。
ハンター章は、見える位置に着けておく事が義務づけられている。
アレスは左胸に着けているが、別に女性なら髪留めに着けても良いし、イヤリングにしてもいい。見えればいいのだ。
さて、一方その頃ブレン達はというと、
「アレスの奴、偉そうに言いやがって! アイツは俺たちに一生こき使われるのが、産まれながらの運命なのに、生意気にも一人でやるだぁ? ふざけんなぁ!」
ブレンの怒りは収まらない。
「まあ、記憶が無くなったのは好都合。オトリとして殺して餌にして逃げようとしようとした事がバレたら、流石にヤバイ。あと、今までの分配金も私たちが多めに取ってるのもバレると、ギルドに居られなくなる。あと多分だけど……出会った時に掛けたはずの洗脳が解けてる」
そう言ったのは神官見習いのティファ。
「弱い心の持ち主にしかかからない、『神の僕』って魔法ね。教会が働き手を安く手に入れる、悪どい魔法だったっけ? それであんなに偉そうだったのね。ふん、アレスの癖に! 私たちを馬鹿にした目で見やがって! 森であったら殺してやるわ! 死体はゴブラインにでも食わせてやるんだから!」
エイミーが、言った事は事実である。
【神の僕】という魔法は、幼く心が未熟な時にだけ、かけることができる魔法であり、本来ならば、幼い悪戯盛りの子供の躾に使われる魔法である。
無意識に親の言う事に逆らえないようになるという、人道的には許されないような魔法だが、親の承諾があれば、教会にて神官がかける事が許されている。
また、宗教の宗派によっては、エイミーが言うようにスラムに居る子供を攫って、安い労働力にする事もある。
見つかると当然犯罪であるが、それを見つける【神の審判】という魔法の使い手が少ないため、発見される数には限りがあるのだ。
「リックの足が治るまで、暫く稼ぎは少なくなるから、なんとかしないと宿代払えなくて追い出されるのは、嫌だぜ?」
「アレスは既に金が無くなって追い出されたようよ。いい気味だわ」
同じ宿に泊まっていたので、アレスが宿から居なくなっているのは知っていた。
「アイツには俺たちの半分しか金渡してねぇから、金なんかいくらも持ってないはずだし、同然だろう! 小間使い代わりが居なくなって面倒だが、アイツに渡してた取り分が俺たちのモノになるんだし、これから金貯められるだろうさ」
ブレンの言葉に、エイミーとティファが頷く。
そうしてブレン達は、依頼完遂のために、再び森へと向かった。
ブクマ、評価、感想、本当にありがとうございます。今作も頑張ります。




