生徒会長の告白
いよいよ、放課後の時間がやってきた。
約束の時間は、17時。今からあと30分ほどある。
誰かに聞かれるのはマズイ話ということもあり、場所は悠介たちが所属する『校内ボランティア部』の部室ということになった。
昼休み後、バタバタしていたこともあり、恵美と唯奈には、場所と時間しか伝えられていない。つまり……灯里が来ることを、二人は知らないのだ。
(事情を話して、納得してもらうしかないか……)
本来であれば、きちんと話をすべきだったはずだが、そうするだけの時間の猶予が無かった。そのため、結局二人は何も知らない状態で、部室へ来ることとなる。
まだ少し時間はあるし、先に事情を話しておくべきか、それとも、その場になって説明するか……そう悩みながら、悠介が廊下を歩いていると。
携帯に、メッセージが届いた。鈴音からだった。
『至急、生徒会室までくるように』
内容は、至ってシンプルなもの。理由もなにも書かれていない。
「どうしたんだろう、常盤先輩……」
だが、返事を返すも、既読が付かない。
どうやら、生徒会室へ行かなければならないようだ。
(……まだ少し時間はあるし、用件だけ聞いて、すぐに向かえば間に合うか)
内容が書かれていないことも気になった悠介は、ひとまず予定時間までを、生徒会室で過ごすことに決め、足を向けるのであった。
◇
「──お疲れ様です。常盤先輩」
教室を開けると、鈴音が一人、席に座って待っていた。
その表情は、どこか堅く、いつもの余裕ある雰囲気は感じられない。
「あの、先輩。要件って……」
悠介が早速本題に入ろうとすると、意を決したと言わんばかりに勢いよく立ち上がり。
「ゆう君、大事な話があるの」
と、切り出した。
大事な話、と言われて思い当たることが一つある。そういえば、昼休みの終わりに、何か話をしようとしていたような……ひょっとして、そのことだろうか。
見れば、鈴音の顔が、真っ赤に染まっていた。
大事な話……そして、鈴音の表情。その瞬間、悠介は何となく、今から鈴音が話そうとしている内容が分かってしまった。
「私、ゆう君のことが好き。ずっと好きだったの」
その声は、どこか震えている。
告白。まさか……と思っていたが、やはり悠介の想像は当たった。いや、当たってしまった。
「最初は、仕事を手伝ってくれる優しい後輩くらいにしか思っていなかったわ。けど、いつしか貴方のことを目で追いかけるようになって……放課後、手伝ってもらえない時は、なんだか悲しい気持ちになって……」
鈴音は続ける。
「卒業までには、思いを伝えようと思っていた。けど……ゆう君に彼女が出来たって聞いて、もうこれ以上、先延ばしにはできないなって……」
「常盤先輩……知らなかったです、先輩が俺のこと、そんな風に思ってくれてたなんて」
「……ふふっ、そうでしょうね。だって、必死に隠していたもの」
「そう、だったんですね……」
この時、悠介の脳内は、オーバーフロー寸前を迎えていた。
何しろ昨日、クラスメイトから告白されて、今朝は幼馴染、昼休みには部活の後輩、そして今、生徒会長から、同じように告白を受けたのだから。
悠介にとっては、みな、仲のいい女の子くらいにしか思っていなかった。
だからこそ……こうしてみんなから告白を受けたことが、驚きで、それに対応するだけの容量を持ち合わせていなかったのだ。
「……彼女が出来たって聞いて、すごくショックだった。けど、お昼に本当のことを聞いて、すごくほっとした。だって、まだ諦める必要はないんだって分かったから」
「せ、先輩……それって、もしかして」
「ええ。……これから集まるんでしょ? 私も、そこに連れて行ってもらえないかしら」
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