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端っこに住むチビ魔女さん。  作者: 夜凪
レッドフォード王国

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52/150

26

おはようございます。

誤字取りはしておりません。見苦しい点ございましたらすみませんを

時は少し、遡る。





ミーシャの元を訪ねるために歩き出したラインは、徒歩での山越えを選んだ。

人の多い場所は好きではなかった。

髪や瞳を隠してコソコソするのは性に合わない。と、いうか面倒だったからだ。


ラインは、慣れた足取りで獣道を歩きながら、目についた薬草も採取していく。

これから向かう場所の土地柄を思えば、薬草の蓄えは多いほど良いだろう。

レッドフォードといえば、薬草の手に入りにくさから、薬師泣かせとして有名だ。

発展した大国ゆえに開拓の手が進み、自然の恵みである薬草の自生が激減してしまったのだ。

辺境はともかく、ミーシャがいる王都では殆どの薬草を輸入に頼っていた。


(ミーシャはさぞかし戸惑っているだろうな)

ある意味一族と似たような環境で育ってきたミーシャにとって、薬草は自分で見つけて消費するものであり、それが、金と交換されるほどの価値があるとは露ほどにも思っていないはずだ。周囲と自己の認識の違いに目を白黒させている様子を思い浮かべれば、ラインの唇が笑みの形に歪んだ。


道無き道を歩きながらも、ラインの思考が止まる事はない。

自然と共に生きる『森の民』にとって、人の分け入らぬ深い森を歩く事は苦にならない。

さらに、幾つもの戦場を渡り歩いているラインは、優れたサバイバル能力の持ち主で、自己を守るために必然的に戦う術も持っていた。

よって、単独でのんびりと歩くラインを獲物として襲ってきた猛獣も、逆に食料として狩られる始末であった。


人体の構造に興味を持ち、外科の道を選んで故郷を飛び出して以来、ラインは数えるほどしか故郷に帰っていなかった。

2つ下の妹が惚れた男について行ってからは尚の事。

むしろ、他国に住む妹の家で過ごす時間の方が長かったのでは無いだろうか?

それ以外の時間は適当に大陸中を歩き回っていた。


珍しい薬草があれば南へ。

戦が始まれば北へ。

興味の赴くまま、他大陸にまで足を延ばすラインを捕まえる事は、裏の方まで張り巡らされた『森の民』の情報網を駆使しても困難だった。

何しろ、国境も関所も関係なくすり抜けてしまうのだ。

「あなたを捕まえるなら、戦場の前線を張っているのが1番早いわ」

疲れたようにため息をついた幼馴染を笑い飛ばして殴られたのは良い思い出だ。


(そういえば、あいつは今、どこらへんにいるんだ?)

ふと脳裏に浮かんだ年下の幼馴染に、小さく首をかしげる。

「自分には開発研究する能力はないし、こっちの方が性に合ってるから」と、サポートと情報収集役となった彼女は、誰よりもラインを見つけるのが上手かった。

レイアースの親友でもあり、仲が良かったからこそ自分を置いて去ってしまったレイアースを認めることができず拗らせてしまった、意地っ張りの女。


(レイアが死んだと知ったら、きっと後悔して泣くんだろうな)

情報収集に長けた彼女が、あえてブルーハイツにだけ近づかないようにしていたのを、ラインは知っていた。

それとなく、近況を教えてやろうとしたこともあったのだが、頑なに耳を塞ぐ様子に、早々に諦めたのだ。

焦らなくとも、そのうち時間が解決するだろうとタカをくくっていたのもあった。


(教えてやった方が、良いんだろうな)

珍しく少しの後悔と共に浮かんだ感傷的な考えは、自分を狙う殺気に中断させられた。

悟られないように自然な仕草で袖口に仕込んである小刀を握りこむ。

そうして、突然斜め後方より飛びかかってきた獣の陰に投擲しながら、ラインの思考は「今夜は熊鍋」という食欲へと占拠された。




人里を避けるように山の中を歩き続けたラインが、ヒッソリと国境を超え、レッドフォード王国へと足を踏み入れたのは1週間後のことだった。

徐々に薄くなる木々の気配になんとなく寂しさを覚えながら、ラインは塩が足りなくなっていた事を思い出して、近くの農村へと寄ることにした。

食物や水は森でまかなうことができるが、塩などの調味料は難しい。

岩塩を探す事も出来なくはないが、労力を考えれば、素直に物々交換でもして分けてもらう方が早かった。


獣道が広くなり、人の道へと変わっていく。

長い時間をかけて人が歩く事で出来上がった道は、確かに文明の気配を感じられた。

そのうち、馬車の轍の残る立派な道路へと合流したところで、ラインは前方に馬車を見つけた。

二頭立ての幌付きのそれは、商人たちがよく使うものだった。


「コレは、村に寄る手間が省けたか?」

背負い袋から広めの布を取り出し、適当に頭に巻きつけて髪を隠すと、足取り軽く馬車へと近づいていった。

そして、近づくにつれ、なんでこんな中途半端な場所で馬車が停まっていたのかに気づき、肩を落とした。


「塩を手に入れる前に一仕事っぽいな」

遠方から見たら分からなかったが、馬車の幌には矢が突き刺さり、明らかに刀で斬られた穴が空いていた。

山道で山賊に襲われ、運良く逃げ切れた、という感じだろうか。

嗅ぎ慣れた鉄臭い匂いにケガ人の存在を感じ取って、ラインは少し足を早めた。

出血が増えれば、そのぶんだけ、命が危うくなる。


「しっかりしろ。もう少し行けば町があるんだ。頑張れ」

幌の中から聞こえる声に、ラインは、ヒョイっと中を覗き込んだ。

グチャグチャに荷が散乱した中、寝かされた男の体を布で巻き、どうにか血を止めようとしながら年配の男性が叫んでいた。

どうやら、重傷者の方は意識が怪しいようだと判断して、ラインはとりあえず声をかけることにした。


「おい、オッさん。そんな巻き方じゃ血は止まんねぇよ」

背後から飛んできた声に、男が弾かれたように振り向いた。

そうして、手元に置いてあったらしい剣を掴むと覗き込んでいたラインへと向けた。

よく見れば、男の片手がだらりと下がっており、止血がうまく出来ない理由がわかったラインは、苦笑とともに両手を挙げてみせた。


「通りすがりの薬師だよ。医療の心得もある。助けが欲しいかと思って声をかけたんだ」

ラインは、親切の押し売りをするつもりは無かった。

こんなご時世で、見知らぬ男の言葉を信用するのは勇気がいることだ。

助けの手を受け入れるのも拒絶するのも本人次第だし、その結果を受け入れるのも当の本人だ。


男は、しばらくじっとラインを見つめたあと、向けていた剣を下ろした。

「頼む。助けてくれ。山賊に襲われて怪我をしたんだ。傷がひどくて、このままじゃ町まで持ちそうにない」

「了解。場所を開けろ」

頭を下げる男を追いやり、ラインは馬車に乗り込んだ。

覗き込んだケガ人の男は険しい顔で目を閉じ、低く呻いている。

傷を圧迫しようと適当に巻きつけられた布を取り去り、血に染まった衣類も取り除けば、肩口から腹にかけて斜めに走る刀傷があった。

ザッと検分したあと、ラインは心配顔でこちらを見てる年配の男に火を起こして湯を沸かすように指示を出した。


慌てて走り出す男を見送った後、ラインは取り出した痛み止めの丸薬を取り出し、男のこじ開けた口の中に放り込んだ。

「薬だ。死にたくなきゃ飲み込め」

ラインが耳元で低く囁き水筒を口に当てると、うっすらと目を開いた男がゴクリと飲み込んだ。

それにラインはニヤリと笑いかける。

「あんたは運がいい。ここに俺がいるんだからな」

散乱する荷物を適当に脇に寄せ場所を開けると、ラインは、必要と思われる幾つもの道具を取り出した。


「さぁて、頑張れよ、にいちゃん」






「本当に助かった。ありがとうな」

後ろの荷台から礼の言葉を投げかけられ、ラインは手綱を取りながら軽く肩をすくめた。

「まぁ、成り行きだ。俺も歩かなくてすむしな」

死にかけていた男の傷を縫合し一通りの治療を終えた後、年配の男の肩の傷もついでに診ると、負傷した腕では大変だろうと代わりに馭者台に登ったのだ。

自分にも利があるんだと主張するラインに、年配の男は笑って馭者台の方に移動してきた。


「それでも、あんたが来なきゃ、息子は死んでいただろう。俺も、片腕を失ってたかもしれない」

隣に座り、男が無事な方の手を出してくれる。

「イリヤだ。見ての通り商人をしている。今回は買い付けで隣国に行ってたんだが、酷い目にあった。あ、後ろで寝てるのは息子のアキヤだ」

「………ラインだ」

手綱から手を離し、イリヤの手を軽く握るとラインは短く名乗った。


「どこまで行くんだ?」

「王都を目指してる」

話しかけてくるイリヤに、ラインは淡々と答える。

愛想も何もない無表情だが、イリヤは特に気にした様子もなく、嬉しそうに笑った。

「それなら伝手がある。俺たちは町に着いたら暫くは動けんだろうが、知り合いの商人に乗せてってくれるように頼んでやるよ」

イリヤなりの礼のつもりだったのだろう。

ラインは、少し迷った後、首を横に振った。


「イヤ。ありがたいが、あまり人と関わりたくないんだ」

「…………それは、その瞳のせいか?」

断りを入れるラインに、イリヤはしばしの沈黙の後、ポツリとつぶやいた。

それに、ラインは何も答えない。

「こんな仕事をしていれば、危ない目にあうぶん、いろんな情報も入ってくる。翠の瞳の薬師。髪は隠してるけど、白金なんじゃないのか?」

イリヤの言葉に、ラインはチラリと横に座る男に視線を流した。

日に焼けたシワの多い顔。まっすぐに前を見つめたまま、こちらを見ないのはあえてだろう。


「だったら、尚の事、手助けさせてくれ。今回の件だけじゃなく、身内もあんたらの一族に世話になってるんだ」

沈黙を肯定と受け取ったらしいイリヤは、前を向いたままそうつぶやいた。


ラインはわずかに目をすがめ考える。

国境を超えて旅をする商人たちは血族の結束が強く、義理堅いと聞く。

同じように旅をする『森の民』の誰かが、先ほどの自分と同じように怪我や病で苦しんでいた誰かを手助けする事もあっただろう。

そう、不自然な申し出でもないし、実際、同じような理由で手を差し伸べようとしてきた人間もいた。

しかし、続いて零された情報に、さすがのラインも驚きに目を見開いた。


「俺は会ってないが、まだ小さな女の子だったそうだ。特殊な毒を見抜いて、命を救ってもらったと。あんたらの一族は凄いな」


故郷を出て外にいる一族の者は、多くないが確かに存在する。

しかし、「小さな」女の子が外に出る事はない。

一族の子供達は掟で守られ、成年に達するまでは決して村から出ることはないからだ。

すでに数年の間故郷の地を踏んでいないラインだが、あの村の掟と体制がそうそう変わるとは思えなかった。

そんな中、「小さな女の子」の心当たりは1つしかなかった。


「それは、最近の出来事か?」

突然興味を示したラインに驚きながらも、イリヤは首を縦に振った。

「あ……あぁ。数ヶ月前のことだ。知り合いか?」

そして、案の定の答えに肩を落とす。

ちょうど、ミーシャが移動していた時期に一致する。

(何やってんだ、あいつは………。いや、何も考えてないか。多分、目の前に弱ってる人間がいたから、手を出したってとこだろう)


当たらずとも遠からずな想像をするラインの微妙な表情をどう解釈したのか、イリヤは、無言で水筒を渡した。

中には今回の買い付けで手に入れた酒が入っている。

蓋を開け匂いを嗅いだ後、ラインは二口程飲んで返した。

「とりあえず、町まで乗せてくれ。そのあとは、その時考える」

ラインの顔は、困ったようなそれでいて、どこか誇らしげな顔で笑っていた。





2人を町の医療所に送った後、ラインは足早にその場を後にした。

イリヤはしきりに引き止めたが、どうにも赤の他人と行動を共にする気にはなれなかったので丁重にお断りしたのである。


当初の予定通り塩などの調味料を分けてもらい(命の恩人から金は取れないとタダで押し付けられた)、さらには困ったら使うと良いと一族の紋章入りの木札と手紙を渡された。

中身を確認してみれば、大切な友人なので力になってくれるよう頼む旨の内容であり、たいていの商人なら融通を利かせてくれるだろうとの事だった。


「どこの国も商人は義理堅い奴が多いな………」

ため息ひとつと共に、全てまとめて背負い袋の中に放り込んで、ラインはスタスタと歩いて行く。

その足取りには一切の迷いも未練も見られなかった。


木々がまばらに生える道を黙々と歩いていると、ふいに頭上高くより甲高い鳥の鳴く声が聞こえた。

顔を上げれば、大きな鳥の影がある。

咄嗟に腕に頭にかぶっていた布を巻きつけ手を挙げれば、風と共にカインが舞い降りてきた。

「おかえり。どこまで行ってたんだ?」

先ほどのイリヤに向けていた時よりもよほど柔らかな表情でラインはカインの翼の付け根をかるく掻いてやった。

森から連れ出したカインは気まぐれに飛び立っては戻ってくるを繰り返していた。もともと、幼鳥の頃をのぞいて好きに森を飛び回っていた存在である。

大きな翼と鋭い嘴に爪を持っているカインを心配するのも馬鹿らしく、ラインは好きにさせていた。


キラキラと濡れて光る真っ黒な瞳でジッとラインを見つめていたカインの嘴が、何かを咥えていることに気づいてラインは首を傾げた。

「なんだ?それは」

「ククッ」

喉の奥で短く鳴くと、カインはラインの手のひらに咥えていたものを落とす。

それは、薄緑の紙に包まれた小さな木ノ実だった。

それを確認したラインの眉がくっきりと寄せられる。

その小さな木の実は、遠い故郷の地にしか生えていない特殊なもので、一族の者が自分の存在を相手に知らせたい時に使うものだったのだ。


「………隣町、か。近いな」

木の実が包まれていた紙を確認すれば、薄い文字で隣町の名と複雑に蔦が絡み合ったような絵が書いてあった。絵が示すのは個人の名前だ。

『外』に出る時に、1人ずつ自分の印を長老より渡され、また、同じように『外』にいる人間の印を記憶させられる。

万が一他者に手紙が渡ってしまっても分かりにくくするためのものだそうだが、ライン個人の意見としては全くもって無駄な労力だと思っていた。


文字自体が一族特有のものを使っているのだから、例え他者の手に渡ったとしても分かりはしない。だいたい、名前が知れたからといってなんだというのだ。

「アッシュのやつ、何してるんだ?」

少し迷ったけれど、ラインは自分の印と数字の1を同じ紙に書き足し、再びカインへと託した。

大きく腕を振って反動をつけてやれば、カインが空へと飛び出して行く。

小さくなって行くカインを見送った後、ラインは後を追うように足早に歩き出した。






隣町に入る頃に戻ってきたカインに案内を頼み、たどり着いたのは町外れのあばら家だった。

朽ちかけた扉をノックもせずに押し開ければ、一間しかない家の1番奥に設えられたベットの上に人影が見えた。

「おう、ライン。久しいな」

片方しかない翠の瞳が、親しげに眇められた。

「やっぱりアッシュか。どうした?」

軽く片手を上げて返すと、ラインは遠慮なくズカズカと上がり込み、ベッドの脇に立つ。

ダルそうに半身を起こした齢40ほどの男が、そんなラインの様子に苦笑した。


「挨拶くらい言葉で返せよ。チョット失敗して片足やっちまってな。回収待ちなんだが、見覚えのある鳥を見かけたから手紙を託してみたんだ」

ヒョイっと何でもないことのように上掛けをめくった先、左が添え木を当てられ固定されているのが見えた。

「珍しい薬草見つけて夢中になってたら崖から落ちちまって。いやぁ〜〜、焦った、焦った」

ケラケラと笑いながら見事に剃り上げられた頭をおどけた様子でペチンと叩く男に、ラインは呆れたようにため息をついた。


「何やってんだか。神経は?」

「感覚ないし、微妙なところだな。郷で体のいい実験体にされるのは間違いなしだ。それより、お前さん、探されてるみたいだが、今度は何をしたんだ?」

少し嫌そうな顔で自分の未来予想を語った後、アッシュは、ラインの瞳を覗き込んだ。

「さて?特別何かした覚えはないけどな?」

首を傾げて返しながらも、ラインはタイミング的に嫌な予感しかしなかった。

「まぁ、お前さんが1番捕まりにくいしなぁ。定期連絡もしてないんだろう?」

「必要ない」

定期的に生死確認を兼ねて義務付けられているはずの定期連絡だが、ラインは、ほとんど自主的にすることは無かった。

何が悲しくてやっと手に入れた自由を自らドブに捨てるような真似をしなくてはならないというのか。


「まぁ、良いんだが。とりあえず、レッドフォードの王都にミランダがいるから、「至急連絡せよ」ってさ。伝えたからな?」

数日前に思い出したばかりの名前を再び聴いて、ラインの目が少し驚きに見開かれた。

「ミランダが王都にいるのか?」

どうにもタイミングの良すぎる情報に、ラインはため息をついた。嫌な予感しかしない。


「そういや、それとは別の話なんだが、最近ネル爺に会ったか?」

「は?俺と爺さんじゃ方向性が違いすぎてかすりもしないだろ?何でだ?」

唐突に出された名前は、一族の中でも長老格にあたる偏屈のもので、ラインは首をかしげた。

外科を専門にするラインは主に戦場を渡り歩いているのだが、件の爺さんは主に風土病や感染症の研究をしている人物だった。


「なんかな〜「病の気配がする」とか言って里を飛び出したみたいなんだけど、それがどうもこっち方面らしいんだよ」

「…………気の重くなる素敵情報をどうも」

もう70近い年だというのに、未だに里を飛び出しては動き回る一族きっての変人で、そして随一のトラブルメイカーでもある存在を思い浮かべ、ラインは深々ともう一度ため息をついた。


(うわぁ、面倒クセェ)

本来、一族の人間が里の外でここまで一同に集まるのは滅多にない。と、いうのに、自分にアッシュ、ミランダときて極め付けがネル爺だ。

ラインには、もう、運命が手ぐすね引いて待っているとしか思えない。

その先にいるのはおそらく………。

最後に会ったまだあどけなさの残る笑顔を思い浮かべれば、逃げ出すわけにもいかない。


ラインは、どこか気の毒そうな笑顔を浮かべるアッシュに見送られて、足早に王都を目指すのだった。






そうしてたどり着いた王都でミランダと合流したラインは、レイアースと繋がっていたことを「抜け駆け」だと散々に責められ、ウンザリしたところを、更にニヤニヤ笑いながら見ていたネル爺から、厄介な風土病もどきの話に巻き込まれて、ようやく、ミーシャの元にたどり着いたのだった。

ラインの主張としては、少々八つ当たり気味に意地悪や思わせぶりな言い方を選んだとしても、しょうがない事だった。


同時に王城に潜り込み、医師団の1人になりすましているだろうネル爺を思い出す。

いったい、この国の王とその家臣達はどんなふうに動き、ネルの心境をどう動かしたのだろう。

結局、ミーシャに背中を押されて足早に目的地へと向かいながら、ラインは、好奇心のままに口元を笑みの形に刻むのだった。












読んでくださり、ありがとうございました。


ラインの旅の様子。と、『森の民』のあれこれを少しだけ。

戦場で治療してる以外は、概ねあんな感じで旅しています。


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