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暗い記憶

 ~レイチェル・ヘイムドッター~


 気付くと私は、とあるダンジョンの中にいた。

 初めて見るダンジョン、そして初めて見る仲間。

 そう、私は初対面の人たちとパーティーを組んでいたのだ。


 ……って、そんな馬鹿な!

 普通ならありえない状況だが、本当なのだから仕方ない。きっと私にも事情があるのでしょう。


 リーダーは、美形のお兄さん。頭も良く、頼りにされている。というか、こいつの頭の回転はヤバいです。


「えーと、あなたたちって……」

「ああレイチェル、よく聞いてくれ。君は今、記憶喪失状態にある。覚えていないだろうが、俺たちは仲間だ。みんなでダンジョン攻略に来たところ、君だけが変な呪いにかかってしまったのだ」


「信用でき……」

「騙そうとしているのでも幻覚でもない。と言っても信用できないだろうから、君は俺たちの後方からついてきてくれるだけでいい」


「私は戦い……」

「ああ、敵はすべてこちらで引き受ける。間違っても戦おうなんて思うな。いつもみたいに後ろで酒を飲んで酔っ払っていろ」


 私がしゃべろうとした先は、すべてこの男につぶされてしまいました。


 ……なんでしょうか、この「俺はわかっているから」的な態度は。少し強引ですが、不思議とイヤじゃありません。


 というか、「後ろで酒を飲んでいろ」ってどういうことでしょう、いつもの私って一体何なんですか!

 やっぱり少しイライラして、ビールをがぶりと飲み干します。 ……はっ、しまった。これでは本当に、彼らの言う”いつもの私”じゃないか。


 そんなことを考えていると、突然恐ろしい咆哮が聞こえてきました。

 ぐやーん、ぎゃおー。


 筋骨隆々の牛頭の巨人が、でっかい斧を振り回して、イケメンの彼に襲い掛かります。


 魔法を使えない男は脳筋戦士、筋肉のない優男は歌手(バード)飛び道具使い(アーチャー)と相場が決まっているのですが、彼はイケメン優男のくせに、難なく前衛をこなしていました。


 すごい勢いで振り下ろされる斧を、まったく危なげなくかわしています。かわすと同時に牛の足元に≪火球≫を放ったり、後ろの銃使いが狙われそうになると、さっと割って入って≪幻影≫の術でかく乱したり。

 素人目に見てもすぐに、彼が恐ろしいほどの達人であることがわかりました。


 というか、あれ? よく見るとあの男、魔法も使ってませんか?


 一瞬の不意を突かれ、あっという間に炎に包まれて倒れる牛男(ミノタウロス)


 どういうこと? 男のくせに魔法を使うだって?



 私はその事実に、妙な親近感を覚えた。なぜなら、私も同じだからだ。

 医者のくせに、患者を治すよりゾンビーにする方が得意な、死療術(ネクロマンシー)を使うはぐれもの。


 ◇◇◇


 思い出します。最初にパーティーを組んで冒険に出かけたときのこと。

 相手は、私と同じ新米冒険者。経験もまだ少なかった私たちは、調子に乗ってダンジョンの奥深くに潜り、全滅しかけたんです。


 一人倒れ、二人倒れ。

 魔法使いの彼女に攻撃が迫った時、私はつい、あの術を使ってしまった。


 私の術に反応して、倒れたはずの剣士の男が立ち上がり、攻撃を受け止めた。

 剣士は既に痛みも何も感じない体になっており、左腕がもげながらも、なんとかモンスターを撃退した。


「はあ、はあ。 ……ありがとう、助かったわ」

「オヤスイ ゴヨウデス、れいちぇる・サン。 ツギノ メイレイヲ ドウゾ」

 剣士の頼もしい返事は、魔法使いの心には届かなかった。


「なにそれ、あなた、なにやってんの? きゃーーーっ!」


 彼女はパニックになって走りさり、それっきりだ。


 ◇◇◇


 いつの間にか牛男は地に付し、イケメンは笑顔で戦いの後始末をしていた。


 先に進むなら、私も何か手伝わないと。かばってもらうだけで生き残れるほど、ダンジョンは甘くない。

 だが、私が力を見せたとき、やはり彼らも私を嫌うのだろうか。


 それとも――


 いや、考えるのは後にしよう。ここは既にダンジョンの奥深く。どちらにしろ彼らの助けなくては、帰ることはできない。

 私は不安な心を押さえつけながら、謎の男性魔術師の後をついていった。


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