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洗濯機の誘惑


「失礼な! 答えなさい、我らキャンポーテラ神の、一体どこにムダが多いというのです!」

「ちょっとイングウェイさんっ、何言ってるんですかああー! いきなり怒らせてどーするんでうぅー!」


 興奮するヒューラん、涙目のレイチェル。ちょっと落ち着けお前ら。


「いいか、ヒューラとやら。キャンポーテラ様とやらは、洗濯板だということじゃないか」

「ええ、それが何か?」


「ということは、その神様は洗濯機も使わずに、手で洗っていることになるっ!」


「せんたく、き? ……なんです、それは?」


 ああ、やはり洗濯機を知らないのか。予想はしていたが、この反応。まったく不便な世界にやってきたものだ。


「では教えてやろう。まず風呂釜より一回り大きいくらいのプールに、水を溜めたものを想像してくれ」


「……しましたわ」

「私もしましたよー」


「その真ん中、底のあたりに、風車のようなプロペラを付ける。プロペラは回って水流を作る。ああ、一定間隔で逆回転することもあるな。要するにかき混ぜたいのだ、中の水を」

 ヒューラは何を言っているのかわからないといった顔をするが、素直に相槌を打っている。

「はあ、なるほど、ふむふむ」


「その中に赤ん坊と石鹸をまとめて入れれば、効率的に洗えるのではないか?」


「ふむ? ――なっ、そんなっ! いや、しかしこれは……」


 ヒューラはなかなかに賢いようだ。驚くのは、こんな簡単な説明で詳細なところまで想像できた証拠でもある。

 うーん、その才能、宗教施設の幹部にしておくには惜しいな。


 ヒューラはわなわなと震えながらも、必死で反論してくる。


「そ、そうだ、危険だ! 危険だぞ、そんなことをすれば。赤ちゃんたちがぶつかって、ケガをしてしまうではないかっ!」

「なるほど、いい質問だ。しかしそこは、防御魔法をかけてやれば問題なかろう」

「くっ、しかしっ、 ――こいつ、どこからそんな発想を……?」

「あー、なるほど。いいですねー、何かで試してみようかな。野菜とかお皿を洗うのにも便利かもしれませんね」


 レイチェルよ、感心してくれるのは嬉しいが、そこは素直に服を入れて試してくれ。


「しっ、しかしだ、そんな道具に頼るより手で丁寧に洗った方が、罪も汚れも落ちるはずだ!」


 なるほど、痛いところを付いてくるな。しかし――

「あまり汚れが落ちないのなら、その分、長く洗い続ければいいではないか。魔力でプロペラを回せば、疲れることもないぞ。……おっと、失礼。君たちの女神は洗濯板だったね」


 くすりと俺が笑みをこぼすと、たちまちヒューラの顔が真っ赤になる。

「なっ、あなた、キャンポーテラ様をバカにしましたね! 許せませんっ」



 そのときだ。

「あなたたち、神聖な教会内で、何を騒いでいるのです!」


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