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トピック・オブ・ザ・バスト

~アントニー~

 時は少しさかのぼる。


 唐突に僕と魔王の間に割って入った、恐ろしい化け物。そうだ、魔王なんて目じゃない。こいつこそが本当の化け物だ。

 化け物は魔王をあっさりと殺した後、僕らに話しかけてきた。

 恥を承知で言おう。そのとき僕の体は、恐怖でろくに動かなかった。


「おぬしら、ドロシー・オーランドゥという乳のでかい女について、何か知らんか? この城のかつてのあるじだった女なのじゃが」


 ドロシーだと? 聞いたこともない名前だった。この城は長く無人だと聞いている。主と言われても、いつの時代の話だろうか。

 その問いに答えたのは、驚くことにジニーだった。


「はーい、ジニーは聞いたことあるよー」


 どきりとした。この化け物の殺意が、ジニーに向かわないかと心配したのだ。だがそれはすぐに杞憂に終わる。

「おお、本当か? どこで見た? 何をしとった??」

 化け物はやけに明るい、嬉しそうな声でジニーに聞き返した。


「えーとね、ジニーもあったことはないんですー。魔術書で名前を聞いたことがあるだけでー」


「なんじゃ、魔術書か……。いや、一応どんな話かを聞かせてくれんかのう?」


 化け物はがっくりと肩を落とし、落ち込んでいるように見えた。


「えーと、『オーランドゥの魔術書』って、魔術師の間では密かに有名なんだよ。今から百年以上前って言われてるけど、辺境の地に住んでいる魔女が、酒代の代わりに置いて行ったんだって」


「ほほー、そーじゃったのか。どんなことが書いてあるんじゃ?」


「えーと、魔術書は何冊かあってね、次元と時間に関する魔術が一番有名かな。それ以外だと、物質の構成を効率的に変化させる方法とかだったと思うよ」

「む? 次元か? もしかして次元跳躍(プレーンリープ)についても何か書いてあるのかの?」

「知らないよー、読んだことないもん。でもね、次元跳躍(プレーンリープ)に成功した人っていないんじゃないかなあ? 魔術師の間でも、オーランドゥは嘘つきだって言ってる人いるもん」


「むー。ぬしは、ドロシーのことを嘘つきだと思っとるのか?」

「え、ジニーが? ううん、思わないよ。だって、ジニーが読んだ本の理論はしっかりしてたもん。すごかったよ」 


「ひひひ、ぬし、いい子じゃのう。よし、面白い話も聞けたし、わしはもういくぞ。お嬢ちゃん、機会があればまた会おうぞよ」


「はーい、またねー」


 去っていく化け物の後ろ姿をじっと見ていた。早く消えてくれと願いながら。

 無邪気なジニーは手を振っていたが、今は助かったことへの安堵で、胸がいっぱいだった。


「よかったな、ジニーがいて」

 いつの間にかジャミルが僕の横に立っていた。腕を押さえ、足も引きずっている。


「はあ、さすがに死ぬかと思ったよ」

「ふん、人生結果がすべてよ。生き残ったら、それだけで負けはねえのさ」

「なんでもいいから、今は熱いお風呂に入って、ふかふかのベッドでぐっすり休みたいわ」

 お互いに強がりということはわかっていた。僕らが生きているのは、単にやつの気まぐれの結果でしかないのだ。


「これからどうするつもりだ? 魔王は倒したが、お前さんの目的はまだ果たしてないんだろう?」

「そうだね。でも、まずは少し休もう」


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