表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

160/203

世界と現実

 ~アントニーその4~


 僕が転生する前の世界も、転生後のこの世界にも、レベルやステータスというものが変わらず存在していた。

 例えば、僕の公式なレベルは45。

 僕のパーティーの平均レベルは、40前後だ。


 レベルは10も違えば、戦いにならないと言われる。

 実際には相性や戦いかたもあるので、そこまで単純な話ではないけれど、その感覚はおおむね間違いではないだろう。


 ――そして、僕の真のレベルは、65だ。

 この世界において、僕よりもレベルが高い相手は、いない。


 僕は、聖剣バルバレスコに魔力を込めた。


 バルバレスコは、素晴らしい剣だ。これほどの神道具(アーティファクト)は、前の世界でも見たことがない。

 浄化の力が込められているが、それはこの剣の力の一端に過ぎない。


 魔力を吸い、切れ味に変える。ある程度以上の魔法剣なら大抵持っている能力だ。

 だが、バルバレスコはその倍率がずば抜けている。クセもなく、投入魔力の上限もない。

 以前レベル60で本気で魔力を込めたことがあるが、バルバレスコの刃は静かに光り輝くだけで、拒否反応も、限界を知らせる共振も怒らなかった。


 単純(シンプル)で使いやすく、強力。だから、対応する方法も少ない。


 光り輝く白銀の刃を見て、魔王は手を止め、黒剣コロンビーヌを構え直した。


 僕は聞いてみた。


「僕は勇者アントニー。アントニー・ブランドだ。貴様は、伝説の魔王なのか?」


「くくくっ、ありがてえなあ。最近転生したばっかりなのに、もう伝説になってんのかよ。そうだぜ、魔王だ、魔王ロック。貴様は勇者なんだって? じゃあ、魔王である俺様と戦うのが当然だよなあ?」


「ふん、戦闘狂め。話し合う気は無しか」


 最近転生? 少し気になる点はあるが、やはり話し合うような雰囲気ではない。諦めて覚悟を決める。



 にやつく魔王ロックの左腕が、黒い魔力を帯びているのに気づいた。

 戦慄。先ほど平らげた料理が4日前のものだと気づいたときのような寒気が、全身を駆け抜ける。


 魔王が低い声で唱える。


「≪濃霧(ヘヴィー・フォグ)≫」


 黒い霧が僕の眼前を覆う。まずい!

 すぐに横に飛ぶが、霧は意志を持つように僕を追いかけてくる。

 魔法。やはり魔王は転生者なのだ。だが、そんなことを考えている暇はなかった。


「オラオラ、どこ見てんだよっ!」


 霧の向こうから、黒い刃が襲う。避けきれない。いや、避けるだけではじり貧だ。


「バルバレスコ!」

 剣を振るうと、魔力を吸った白刃が黒い霧を切り裂いていく。

 きんきんきん、かんかんかん

 剣同士がぶつかる激しい音が響く。


 完全に霧を晴らしたと思った次の瞬間、魔王はすぐに次の魔法を繰り出した。

 

「≪独房の雨(プリズンレイン)≫!」


 当然のように無詠唱だ。唱えながらも、魔王の攻撃はやまない。


 今度の魔法はおそらく、精神系の妨害呪文(デバフ)だ。

 バルバレスコの浄化の力により、幸い呪いの効果は大幅に軽減されている。

 それでも、一人雨の中バスを待っているような孤独感が、僕の心を責めてくる。


「くっそお、寂しい!」


「ふはははっ、楽しいなあ、弱い者いじめは!!」


 くそう、弱い者いじめだと! こんな、剣術の基本も知らないような、めちゃくちゃな奴に……!



 そのとき、僕は気づいた。気づいてしまった。


 魔王ロックの剣術は、でたらめだ。

 ある程度の基本はできているが、我流もいいところ。

 が、それで僕の剣をすべて受け切っている。


 それも、魔力を乗せた聖剣バルバレスコの一撃を。


 魔王自体は、今のところ攻撃呪文は使っていない。使えないのかどうかは知らないが。

 彼の使ってきた魔法は、今のところ祝福(バフ)呪い(カース)のみ。


 しかし、いくら補助魔法(サポートマジック)で強化しても、戦闘技術の強化はできない。


 つまり――


 僕は、この敵に勝てるのか?

 現実が残酷に、僕を押しつぶそうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ