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~イングウェイとレイチェル~


「イングウェイさーん、手を離しちゃだめですよー」

「わかってる、レイチェルこそ、もう少しこっちに寄れ。はぐれたらわからなくなる」

 ふよん、と柔らかい感触が腕に当たる。レイチェルだ。俺は安心して進む。


 川辺で紫の靄(パープルヘイズ)を見つけた俺とレイチェルは、怪しみつつもその中に突っ込んだ。命の保障なんてない。そんなところに自分一人ならともかく、レイチェルを連れて飛び込むなんて、どうかしている。

 その(ヘイズ)の中は魔力の流れがめちゃくちゃで、気分が悪くなる。脳ミソを食われるというのも、なかなかに的を得た表現だ.


 だが、懐かしい感じもした。

 俺は、これを知っている。



 次の瞬間、俺は石造りの暗い部屋にいた。

 紫の靄は気づけばどこかに消え失せており、その場にいたのは、俺とレイチェル。 そして――、



「イングウェイさんっ、何でここに!?」


 ピンクの髪、明るい声、名刀モモフク。間違いようもない、彼女は、


「サクラさんっ!?」

「サクラか? お前こそなぜここに、ホームで待機していたはずでは?」


 サクラはバツが悪そうに、頭をぽりぽりかきながら答えた。

「えへへー、ええとーですねー、一緒に行きたくて我慢できなくて、追いかけてきちゃいました。その途中で、成り行きでドラゴン退治をすることになって、なぜかここに迷い込んじゃいました。あはは。なんででしょーねえ?」


 追いかけて、か。それはまあいい。それよりも、ドラゴンだって?

「大丈夫か、ケガはないな? ドラゴンはどうした」

「あ、体は大丈夫です。むしろぜっこーちょーですから。 ええと、最初は逃げ回ってたんですが、女の子がさらわれて、謎のお姉さんに助けてもらって、何とか一匹倒したんですけど、その辺の細かいところを、実はあんまりよく覚えてなくて――」


「よかった。お前が無事で」



 さて、再会を喜ぶのもほどほどにして、現状把握がまだ済んでいない。

 ここはどこだ。

 薄暗い石造りの部屋で、魔術器具とともに、わけのわからない機械がいくつも置いてあった。



 次の瞬間、天井にあったライトがついた。



「あら、珍しいわね。ここに3人もお客さんが来るなんて、午後から隕石(コメット)でも降るのかしら?」

 誰だお前は。

 扉の前に立っていたのは、妙齢の女性。ゆったりとした黒いローブに、腰まである漆黒の髪。そして何よりも――


「かなり強いな」

 ゆったりしたローブの上からでもわかる、熟れすぎたかぼちゃのようにたわわでこぼれ落ちそうな魔力は、彼女が相当の力をもつ魔術師であることを示していた。


「とりあえず敵じゃあないわよ。立ち話もなんだし、座ったら?」




 ん、どうした? レイチェルがぶんぶんと俺の腕を引っ張ってくる。

「イングウェイさん、ワインですよ、ワイン!」

「ああ、しばらく何も飲んでなかったからな。おい女、少しワインを分けてくれないか」

「そうですよ! 話すにはまじゅ、口を湿らせないと。じゅるり」


 女は露骨に嫌な顔をしたあと、しぶしぶグラスにワインをついだ。……ちょっとだけ。


「お前が何者かは知らんが、ケチなのはわかった」

「イングウェイさん、失礼ですよ! あ、ありがとうございます。私はあんまり飲めないから、一口でいいですよー」

「じゃあその分、私に入れてくださーい!」

「おいレイチェル、少し遠慮を覚えろ」


「あんたらは後ででも、好きにのめるでしょうが! 貴重な人の酒を、まったく。ぶつぶつ」


 文句を言いつつも注いでくれるので、悪い奴ではなさそうだが。


「ではいただくか。  ――っ、うえっ」

「どしたんですかー、って、しっぶーい」


「失礼な人たちね、本当に」


実は私はワインがあまり好きではないので、作中での扱いもあまりよくありません。

ワイン好きな人がいたら、ごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[一言] シラフで失礼する。 私と音楽の話をした事は無い筈だ(酔っ払って忘れてしまっている可能性も有るが)。 何を隠そう私は昔から音楽に(限らず芸術全般)疎いニンゲンなのだ。 できる話自体無い。 んで…
[良い点] 再開一発目のタイトルが酒。 流石である。
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