表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

121/203

汝、ゾンビを裁くことなかれ


 レイチェルは、俺を森の中にある小さな洞窟に案内してくれた。

「キャシー、いるのか!?」

 俺は洞窟の入り口で、暗闇に向かい声をかける。


「あうあうあー」


 洞窟の中から戻ってきたのは、唸るような低い声。

 しばらく待つと、ゆっくりと女性のゾンビが出てきた。


 なんということだろう、キャスリーは確かにゾンビになっていた。

 肉は腐り、脳みそはゼラチンだ。彼女は両腕を前に突き出し、頭を振りながらのろのろと歩き回る。

 マリアとは全く違う、知性のない蠢く亡者だった。


「あうあー、うっぷ、おげええええ。き、きぼちわるいでずわあぁぁぁ」


 ああ、なんということだ。

 俺は嘆いた。彼女はひどい二日酔いで、戦うどころではなかった。


「レイチェル、水を多めに飲ませてやっているか?」

「ええ、もちろん。マリアさんもよく二日酔いにはなりますから、同じようにしましたよ。ただ、やっぱりちゃんぽんで飲んだのがよくなかったんじゃないかと……」

 レイチェルはキャスリーの痴態から目をそらしつつ答えた。


「そういえば、彼女は、ビールのあとワイン、さらにはウイスキーまで飲んでいたな」

「すみません、私がビールを進めたばっかりに」

「自分を責めるな。ワインはエドワードが、ウイスキーは俺が進めたのだ。そして飲んだのはキャスリー自身。みんなの責任さ」

 そうだ、俺たちはパーティーだ。すべて一人が背負いこむことはない。

「イングウェイさん、きゅんっ。 ……って、どうしましょう、ときめいている場合じゃないですよ。さすがに看病しながら戦う余裕はありませんよ!」


「エドワードに預けるしかないだろう。おぶって連れていくか」


「ごべんばさい、いんぐぃー。うえっ、おえええええ」


「しゃべるな、無理せず横になっていろ」


「でも、横になったら、吐きそうになりまずばあああ」



 うああー、ばっちい……


 レイチェルの憐みの声。

 医者として、医学の限力さを痛感しているのだろう。


「そうと決まれば、急いでエドワードさんに声をかけにいきましょう。夜襲で軍はボロボロですし、早くしないと預けるタイミングを失っちゃいますよ」


 ん?


 俺はその言葉に何か引っかかるものを感じた。


「レイチェル、ちょっと待ってくれ。今、軍がボロボロだと言ったか?」

「え? はい、言いましたよ。空からドラゴンや魔族が次々現れて、ブレスは吐くわ、爆裂呪文は連打されるわ。大騒ぎでしたが」

「いや、それはおかしいだろう」


 こんどはレイチェルのほうが首をかしげる番だった。


「先ほど君は、”襲撃の様子を誰も覚えていない”と言っていた。朝に情報を集めた時の話だな。君は襲撃の様子を覚えているのか? 覚えているなら、どの程度?」


「あれ? そうですね、確かにおかしいな。 どうしたんだろう、私……」

 レイチェルは頭を抱えて考え込む。

 かなり混乱しているようだ。

「ゆっくりだ。無理せず、一つずつでいい。ゆっくり思い出していこう」


経験談ですが、複数の種類の酒を同時に飲むと、悪い酔い方になることが多いです。注意してください。

焼酎は度数の割に翌日に残ることが少ないので、私は好きです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ