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表の生徒会長に就任しました――俺、立候補してないのに  作者:


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6/7

あの時の謎が解けた

 俺は生徒会室に連行されて行った。

 部屋では緒方先輩と今井先輩が向かい合って弁当を食べている。空気はまったりとしていて、急ぎの要件という雰囲気ではなさそうだ。


「どうした? なにかあったのか?」

 今井先輩が驚いて立ち上がった。


 怖くて見ないようにしていたが、里見先輩と井上先輩の怒りは両横からひしひしと伝わってくる。

「チョロシ君が、食堂で小山と並んで食事しているとこに出くわしたの。びっくりだよ」


「昨日の今日で、もうそれか。本当にチョロシだな」

 今井先輩は呆れたように言うとスタスタとやって来て俺の手を引っ張った。


「こっち、来いよ」

 多分、怒っている女子二人から保護してくれたのだと思う。


「飯は済ませたか?」

 俺は黙って頷く。今井先輩は苦笑しながら俺を椅子に座らせてくれた。


「まあ落ち着け」

 そう言って、腰軽くお茶を入れてくれる。三人分だ。


 この先輩は男っぽい見た目をしているが、非常に面倒見が良く、気が利く。

 俺は熱い茶をすすりながら、心の中で今井先輩を拝んだ。

 隣にいると安心する。ありがたい。


 その間に、緒方先輩が里見先輩たち二人に、手の平サイズのチョコレートクッキーを一枚ずつ渡した。

「二つしかないから、女子だけな」


 不機嫌な猛獣二頭に、貢物を差し出す賢者。

 クッキーを食べている内に、二人の様子が和らいだ。


「ヒロシ、手伝って欲しい事があるんだ。一緒に来てくれ」


 緒方先輩に言われて、後について生徒会室から出た。


「悪かったな。俺たちが迂闊な事を言ったせいだ。今日お前に説明するつもりだった」

 俺は黙って頷いた。


「この学校の生徒会は特殊なんだよ。生徒会の権限が普通の倍はある」

 倍と言われてもピンとこなくて、少し首をひねった。


「学園祭のような学生中心の行事だけじゃなく、遠足や修学旅行の企画にも生徒会が関わる。主体性を育む教育方針って、入学式で校長が言ってただろ」


「それは……仕事が倍ある、の間違いでは」

 緒形先輩は笑いながら頷いた。


「そうともいう。例えば去年の修学旅行先は北海道だった。余市宇宙記念館では現役宇宙飛行士が説明員についた。OBからの要請で出来たことだよ。勧誘活動込みらしくて、宇宙飛行士は体が資本だって言って、頑丈そうな奴に声を掛けてた。俺も勧誘された」


 宇宙飛行士◇緒方祐樹。おお、カッコイイ。


 じゃなくて……

「高校生の修学旅行に現役宇宙飛行士を派遣って! 有り得ないでしょ」

「うん。普通はな」


「何で、そんな事が出来るんですか」


「大学や企業とのパイプがある。OBOGのコネや支援もあって、出来ることの規模も範囲も大きい。それにこの学校は、そういう規格外の経験を積むことを勧める。型破りな人間を育成したいんだよ」


 それは、校長が言っていたような、いないような。俺は入学式での話をちゃんと聞いてなかったから。

 それにこの高校に来たのは、緒方先輩に指定されたからで、自分では何も調べてもいない。特殊だ、としか知らないのだ。自主性ゼロか、俺。


「大きな行事では、生徒会がその先頭に立つ。どの企業のどのイベントを採用するかの決定もする。なまじっかの会社に入るより、ダイナミックな経験が出来るんだ。だから、入りたい奴はたくさんいる」


「ああ、小山さんの執着はそのせいか。でも、それだけじゃなさそうな気が……緒方先輩への恋心の方が大きいんじゃないですか?」


 すると、権力欲と恋のタッグか。

 まてよ?


「恋というより、緒方先輩というハイスペック男子をゲットするのが目的かも。言うならば、ハンティング! やっぱり肉食系女子ですか?」

 

 緒方先輩はふっと笑った。


「それが近いな。だから本気で相手にしていないんだよ。俺は彼女にとっては、この学校で一番得点の高い獲物だ」


 俺は改めて緒方先輩を見てしまった。

 うれしくない好かれ方だな。

 緒方先輩だけでなく、四人共が非常に魅力的な人物だから、全員がそういう面倒なファンを抱えているという事か。 

 

「そういう人もいるでしょうけど、普通の恋愛感情で皆さんに近付きたい人は多いと思います」

「それはあるな。だが、うれしくない」


 俺は今まで見てきて、この四人の間に恋愛関係が無い事を知っている。

 こんなに魅力的なのに、なぜ四人共フリーなんだろう。俺だって実はずっと不思議に思っていた。

 この際、今まで決して触れなかったエリアに、一歩踏み込んでみることにした。


「先輩たちには、恋人とかはいないんですか」

 目を瞑って一気に言い切った。


 緒方先輩がニヤッとした。

 あ、まずい? 何かのスイッチを押したか?


「お前、里見と井上のどっちかにアプローチするか?」


「いえいえ、まさかです。 恐れ多いです」


「ふーん。それは残念だ。内緒だけど今井と井上は付き合っているんだ。俺が教えたってことは絶対に言うなよ」


「ええー‼」


 それは確かにお似合いだ。男っぽいけど細やかな今井先輩と、可愛いけど実は豪胆な井上先輩。

 凹凸ぴったりって感じ。



「それなら、緒方先輩と里見先輩もカップルですか?」


「馬鹿だなあ。どこを見たらそう見えるんだよ。そんな風に見えた事あるか?」


「だって、今井先輩たちの事も全くわかりませんでした。でも言われてみればお似合いです。緒方先輩と里見先輩もそうですよ」


 緒方先輩はケラケラ笑った。


「里見は幼馴染だよ。小さい時から知っている。幼稚園時代から嫌というほど男が寄ってきていた。だけどガキだから、気を引こうとして、いじめたりしつこくしたりで散々だったんだ」


 緒方先輩が何かを思い出すように、表情を曇らせる。


 それから俺の方を向いた。

「だから、あいつが初対面で、しかもナンパまがいの言葉を掛けたお前を、すんなり受け入れた時は、正直驚いたよ」


 ああ、そうだったのか。

 あの中学一年の時、緒方先輩が驚いていたのは、それか。俺は納得した。


「あの後、俺はユキに聞いてみたんだ。そうしたらさ、ヒロシの声に何の思惑も混じっていなくて、素直に耳に届いたそうだ。凄く嬉しそうに話していたな」


「それは、そうです。思わず口をついて出た言葉で、何も考えて無かったです。それに、絶対にナンパなんて考えていませんから」


「ああ、ヒロシは素直だからな。百パーセント感動しただけなんだろうな」


 緒方先輩の表情が緩んだ。

 そして俺はあることにふと気付く。


「先輩。里見か井上のどっちかって聞かれて、俺が井上先輩に告るって言ったらどうしたんですか?」


「あ~、見守る。井上ならうまい事お前をあしらうから問題ない。里見だったら 全員で固唾を飲んで見守る。どう転ぶか全くわからないからな」


 うわっ。なんかひどい。


「どっちに行っても、どうせ振られるから、見守らなくてもいいです」


 緒方先輩は黙って俺の顔を見ている。

 何かを探るような表情をしているが……何だろう。


 事務室に到着すると、ダンボールを一箱渡された。一人一箱ずつ抱え、生徒会室に向かって戻り始めた。

「お前さあ、好きな子とかいないのか? そういえば、小山さんに一目惚れしたんだよな。ああいうのが好みか?」


 うっ、痛いところを!

 確かに俺は、小山さんにコロッといかれた。

 頬に泥を飛ばして仕事に没頭している美少女に、心をズバッと打ち抜かれた。

 でも普通、そうなるでしょ!

 下心を知っている今なら避けるけど、情報ゼロなら緒方先輩だって間違うでしょ?


 俺はそんなことを思いながら緒方先輩を見上げた。

 目算で180センチ位だろうか。里見先輩が173センチだから、ちょうどぴったり。


 あんたたちも付き合えよ。

 そして大っぴらに見せつけてやるんだ。そうすれば、ややこしい奴らの何割かは、諦めて大人しくなる。

「おい、どうなんだ? 考え込む話じゃないだろ」


「あ~、俺は、可愛い女子は好きです。たぶんどんなタイプでも。モテたことがないから、選ぶなんて贅沢はしません」


 かなりひねくれた気分で、本音をぶちまけた。

 俺と真逆で、選び放題の緒方先輩への、ひがみが炸裂したのだ。


 緒方先輩は、そんな俺を見てくすっと笑い、「そうか」と言った。



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