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32話 二度目の集まり

 ふとそれが顔を上げたのは、繋がりが途切れたのを感じ取ったからであった。

 その意味するところを考え、目を細める。


「失敗、ですか……」


 失敗するような要因はなかったように思うが、言っても仕方があるまい。

 事実は事実だ。

 何か予想外のことが起こり、失敗してしまったということなのだろう。


 反省するにせよ何にせよ、まずはそこを受け入れてからだ。

 それに、問題もなかった。


「ま、別に構わねえでしょう。最低限の仕事はしたみてえですしね」


 手元にある銀の筒を弄りながら、呟く。

 中を見ることは叶わないが、さすがに間違えてはいないはずだ。


 さすがにそこまで使えなかったら、とっくに処分していたはずである。

 結果的には違いはないかもしれないが……それもまた問題はあるまい。


「無能が必要ないのは、何も学生だけに限った話ではねえですからね。最低限の仕事をしたとはいえ、失敗は失敗。どんな予想外が起ころうとも、しっかり成功させなけりゃ有能とは言えねえですよねえ」


 やるべきことはやった上で、無能な講師が炙り出された。

 そう考えれば、決して悪い結果ではないと言えるだろう。


「もちろんその上で有能だったんなら言うことはなかったんですが……ま、それは高望みってもんですかね」


 手元にあるものの中で何とかしなければならない。

 それはいつだってどんなことだって同じことだ。


「何にせよ、少しずつ着実に前には進んでるんです。なら、それでよしとするしかねえでしょうねえ」


 そう呟き、溜息を吐き出すと、それはさらに前に進むため、その場を後にするのであった。






 リーゼロッテが攫われかけた日から、早いもので五日が過ぎた。

 しばらくは引きずっていたところでおかしくないことだと思うが、リーゼロッテは翌日も普通に学院に来ていたし、いつも通りにしか見えなかったのはさすがといったところか。


 ただ、厳密な意味で言えば、以前までとまったく同じというわけでもない。

 とはいえ、悪い意味ではなく、いままで以上に授業に身が入っているようであったし、スキルのことなども積極的に聞いてくるようになってきたということだ。

 あの一件でリーゼロッテ的には何か思うところでもあったのだろう。


 あの一件といえば、実は五日が過ぎた今も何の進展もなかったりする。

 何故ならば、あの時あの場所にいたレオンとリーゼロッテを除く三人が、誰一人として目覚めていないからだ。


 ブリュンヒルデは、レオンの応急手当てに何の問題もなかったという言葉は貰っているし、あの後しっかりとした治療を受けて傷は完治したはずなのだが、どうしてか眠ったままなのだそうである。

 意識を奪っただけのはずのAクラスの担任も何故かまったく目覚める様子がなく、マルガレータも同様だそうだ。


 特におかしいのはマルガレータで、リーゼロッテの証言からブリュンヒルデが軽く意識を奪っただけだということが分かっている。

 五日も目覚めないわけがなく、そもそも事情を少なからず知っているだろうはずの三人が三人とも目覚めないとかどう考えてもおかしいので、現在は騎士団が詳しく調べてくれているそうだ。


 別にそういったことを調べるのを専門にしている場所ではないが、最も力を持った者達が集まっている場所である。

 何よりも、今のところ公になってはいないが、次期公爵家当主誘拐未遂とかいう大事だ。

 しっかり調べなければならないだろうということで、騎士団に後のことは託されたのである。


 ちなみに、リーゼロッテの話によると注射器で刺されたということだが、それも何故か見つかってはいない。

 そういったことも含めて色々と気になる事件ではあったが……まあ、関わったとはいえ、もう手を離れてしまったものである。

 騎士団の調査に期待するしかないだろう。


 それに今のレオン達は、他に気にすることがあった。

 交流会は終わったというのに、何故か再び学年全員で集まることになったのである。


 しかも今回もまたどういった理由で集まるのかは知らされていなかった。


「うーん……まさかまた模擬戦をやる、ってことはないよね?」


「さすがにないでしょ。仮にまたやるにしても、もっと後にやると思うわ」


「ですわね。今やったところで意味があるとは思えませんもの」


「だよねえ。イリスに聞いてみても特に心当たりはないって言ってたし……何なんだろう」


 尚、一学年全体の集まりであるため、当然イリスは一緒ではない。

 今日は騎士団から呼び出されてはいないのだが、生憎と一人で留守番である。


 ザーラもこっちの集まりの方に来てしまうため本当に一人となってしまうが……まあ、子供ではないのだし問題はあるまい。


「っと、着いたか」


「……ないって言っときながら何だけど、集まる場所がここってなると、もしかしたら、とも思っちゃうのよね」


「まあ、他に大勢で集まれるような場所がないだけだとは思いますけれど……気持ちは分かりますわ」


 二人がそんなことを言っているのは、今回もまた訓練場が集合地点だからだろう。

 正直レオンも気持ちは分かる。


 しかしとりあえずは行ってみなければ分からないことだ。

 足を進め……だが、中に入ったところで、レオンは思わず眉をひそめた。


「うん? ……これって」


 訓練場へと足を踏み入れると、前回同様そこには既に沢山の人達が待っていた。


 しかし同時に、前回とは明らかに違うところもある。

 待っていた人数が、明らかに多かったからだ。


 自分達が以外の全員が既に揃っていたとか、そういう話ではない。

 どう見ても前回の倍近い人数がそこにはいたからだ。


 いや、もっとはっきりと一目でおかしいと分かることを言うべきか。

 そこには、レオン以外にも男がいたのだ。

 それも、かなりの数の……おそらくは、そこに集まっている中の、半分ほどの数が。

 しかもレオンと同じ制服を身に纏い。


 だがだからこそ、レオン達は直後に納得したのであった。


「なるほど……そういうことね。そういえば、確かに学年全体の集まりって言ってたわね」


「ええ……言われてみれば、騎士科のみとは言われませんでしたわ」


 そう、ほとんど騎士科の中だけで完結してしまうために時折忘れてしまいがちだが、ここ王立学院には二つの学科があるのだ。


 一つは、基本的には女性だけで構成された騎士科。

 そしてもう一つが、基本的に男だけで構成された学科。


「従士科、か」


 その名前を口にしながら、レオンは溜息を一つ吐き出すのであった。

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