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プロローグ☆発端

街に午後5時のチャイムが流れていた。

「シューベルトの『のなかのばら』か…」

竜也はぼんやりとそう考えながら、帰りの電車に乗るためにガードレール沿いの道を歩いていた。途中に小さな公園があるが、いつもなら見向きもしないのに、今日はそっと寄ってみることにした。

子どもたちがすべり台で順番待ちしながらきゃあきゃあ嬌声をあげている。

自分もあんな時分があったのが不思議でならない。

「だめ!花を折っちゃだめ!」

女の子が友だちに言い聞かせていた。

「なんで?」

気がそれた瞬間、その友だちは痛さに思わず手を引っ込めた。

「いわんこっちゃない。きれいな薔薇には棘がある」

「えー!でもこれ、薔薇じゃないよ」

「えっ!?」

なんだなんだ?

竜也は女の子たちに近づいた。

「君たち…」

「わあ!知らないおぢさんだあ!」

ビービービー

子どもたちが竜也を取り囲んで、小型の警報器を鳴らした。

世知辛い世の中だ。子どもに近寄ることも許されないのか?しかも、誰がおぢさんだ?まだ竜也は高校生だぞ…

竜也は肩をすくめて公園から足早に遠ざかり、帰宅の途についた。

紅い…薔薇に見えたんだがなぁ?

電車に揺られながら竜也は不思議だった。

明日、公園にひとけがなかったら確かめに行こう。

竜也はぼんやりと考えた。

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