99:マジ、羽が生える。
◆◇◆◇
名称:不運を呼ぶ呪いのロックギター
備考:最初に触れた者に『不運』を与える。
技能レベルが高くなるごとに、完全回避率、
クリティカル攻撃発生率が低下。
LUK半減。
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インベントリに入れることすら出来ないギターだが、ベルトがあったので背負ってみるとステータス画面からアイテム情報が見れた。
この説明にある技能レベルって何だ?
技能一覧を開くと、見慣れないものが……。
あったよ。『不運』技能。
なになに?
使用するバフスキルが、全てデバフに変わる。
初期スキル『バッドステータス:LV1』。全ステータスを1下げる。
ほほぉ。
スキルレベルが上がると、このマイナス数値も増えるんだろうな。
「って、舐めてんのかこの技能! 俺にソロ特化になれってことか!?」
「ど、どうしたんですかマジックさん」
「おぅ、聞いてくれよルーン」
技能の事を皆に説明すると、何故か首を傾げる三人。
俺の怒りを理解してくれないのかっ。
「じゃあバフスキルを使わなければいいのでは?」
「回避だのクリティカルだのが下がるのは痛いが、そもそもマジック氏ってLUK上げてるのか?」
「そういえばクリティカルとか見ませんね」
「初期値の1だぞ。……そうか、LUK1が半減したところで痛くも痒くもないのか」
うんうんと頷く三人。
バフスキルにしても、そもそも今現在そういうスキルを持っていないんだし、これからも作らなければいいと。
俺はダメージディーラーだ。バッファーになる必要は無い、と。
「なんだ。安心した」
「試しにカッチカチしてみるか? あれがデバフになるとどうなるんだろう」
セシリアがそういうのでカッチカチにしてみた。
徐に彼女がモンスターに突っ込んでいく。
そして無防備状態を続け、噛み付かれまくっている。
「マジック君。ダメージはちゃんと防いでくれているぞ」
「カッチカチはバフじゃないんですよ。これ、バリア系でしょ?」
「んだ」
「じゃあ防御スキルだから、対象外なんですよ」
なるほど。
もしこれがデバフになる対象スキルだったら……
「今頃セシリアは物凄いダメージを食らってるんだろうな」
「あぁ。バリアじゃなくってダメージ倍増デバフになってたかもな」
無傷を楽しんで噛まれるがままになっているセシリアを見ながら、フラッシュと二人で、それはそれで見てみたかったかもなんて事を小声で話す。
その間にカッチカチのダメージカットタイムが切れたようで、セシリアのHPが途端に減る。
頑張れ、セシリア。
チュンチュン達との別れを惜しんだあと、村長の待つ壁向こうへと戻った。
「ありがとうございます! 奴の断末魔をしかと聞きましたぞっ」
断末魔、あったっけ?
更に村へと戻ると、村長が口を開いても無いのに、
【ロックンピーコックを倒してくれたんだべな。ありがたや】
【ありがとうございますだ、冒険者様っ】
【これで安心してロッククライミングの技能習得をできるだがや】
【ありがたや〜】
【ありがたや〜】
と、満面の笑顔で出迎えてくれた。
だから見ても聞いても無い事を何故知っているんだよ!!
クエスト達成の感動とか、全部台無しである。
《クエスト【海賊の子孫を救え】を完了しました》
《クリア報酬35000EXPを獲得。30000ENを獲得》
システムメッセージが浮かぶと同時に光り出す俺たち。
おっしゃー! レベル23だぜ――おぉ、24になってる!?
さっきのピーコック戦で23になる一歩手前だったのかもな。
そして三万円! じゃなく三万エン。いやぁ、なかなかいい報酬だったなぁ。
「結構金貰えたな。ドロップもレア装備二つ出たしよ」
「うんうん。ボクは装備と素材だけど、数が多いからいくつか装備が作れそう」
「むぅ〜。両手剣と素材が出たのだが、私はスピード狂になりたいのになぁ」
「じゃあそれ売って同等クラスの片手剣買えばいいんじゃないか?」
「むぅ〜。そうなのだが……レジェンドというクラスの装備を見た事があるか?」
などという会話を聞きながら、ドロップアイテムの事を思い出す。
ギターの呪いで頭いっぱいだったからな。
どれ、俺の――
「レジェンドだとぉ!? セ、セシリア大先生っ。レジェンド装備が出たのか!?」
「うん。出たぞ。でも両手剣なのだ〜」
「贅沢言うな! レジェンドなんて、ドロップ率低いんだぞっ」
ルーンもフラッシュも頷き、彼らは未だにレジェンドが露店に出ているのを見た事が無いと話す。
俺だって見た事ねぇよ。
「マジックさんは何が出たんですか?」
「お、おぅ。実は今から確認するところ。ギターで混乱してたからさ」
「あぁ、なるほど」
「で、何貰ったんだ?」
まぁ待てまて。慌てるなフラッシュ君。
インベントリを開いて一番後ろの方にあるであろう、ロックンピーコックからのドロップアイテムを――
おぉぉぉっ!
装備キタコレ。
しかも二つ!
下半身装備と杖だ。
ふひ〜っひっひっひ。等級は何かなぁ。
まずは気になる杖から――よしっ。安定のレア!
そして下半身はぁー……お、おおぉ、おぉおぉおぉっぉ。
「オレンジ……」
「オレンジが食べたいのか、マジック君は」
「いや、セシリアさん。それは幾らなんでも唐突過ぎませんか?」
「マジック氏、まさかオレンジって」
ごくりと唾を飲み込む。
そのまさかだ。
「レジェンド防具来たあぁぁぁっ!」
そして速攻でクリックして装着!!
お、レベルは24から装備できるようだな。無事に履き替えられたぞ。
「ちょ……マジック氏、それ……マジかよ」
「っぷ。わ、笑っちゃダメだよフラッシュ」
「ルーン、君も笑っているぞ。ふふふ。相変らず、派手好きだな君は」
「は?」
そんな派手なデザインだったのか、これ!?
と思ってズボンを眺めてみるが、黒っぽくて若干ラメが入ってる感じだが、そこまで派手でもないだろ?
【お似合いですぞ冒険者様】
【尾羽が特に素晴らしい】
【パンツの素材は、奴が散々原住民から毟り取った衣類で出来ているようですね】
NPCの吹き出しセリフにおかしな文字発見。
尾羽……だと?
《っぷ》
あたちとお揃いね?
……嫌な予感がする。
腰を振ってみた。
何かお尻のところでふさふさしている気がする。
振り向いて見下ろしてみた。
何かお尻のところでふさふさしている。
白と黒の羽根と、艶やかな七色に光る長い羽根。
「ダチョウと孔雀を足したような尾羽だな、マジック氏」
よりにもよってイロモノデザインがレジェンドかよぉぉぉぉっ!
◆◇◆◇
名称:不運を撒き散らすロックなパンツ(レジェンド)
効果:防御力+106 HP+340 全状態異常耐性50%アップ。
攻撃時、及び被ダメージ時、一定確率で敵対象へ九種類の状態異常を
ランダムで与える。
回避率+25。
必須技能:特に無し
耐久度:150
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しかも無駄に高性能だしよぉぉぉっ!
*5/7:不運技能の説明を少し変更しました。
プレイヤーに対して行うバフ→プレイヤーという単語削除。




