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257:マジ、マジ見する。

「ちょっとこれ……ショートカットコースなんじゃなぁい?」


 俺が開けた壁の穴から向こう側を覗き見るめふぃすとがそう言う。

 全員集まって、それほど大きくもない穴に群がる事数秒――更に穴は大きくなった。


「ちょっ。重めぇっ」

「あら、乙女が上に乗っかってるのよ。喜ぶべきじゃないかしら?」

「ふえぇっ、ごめんねごめんねごめんねマジック君」


 謝るなら俺の背中から降りてからにしてくれマジ頼む。


「はいそこっ。急いで臨戦態勢よん」

「え?」

「ショートカットってまさか……ボス部屋!?」


 シースターの声でぎょっとして周囲を確認する。

 さっきまで歩いていた通路と比べて、有り得ない高さの天井。船というにはあまりにも広い部屋。

 前方には、これまた海賊っぽいいで立ちのスケルトンが一体……なんで体操座りしてるんだ?


「バフ掛けなおしするわよん」


 やっと重石から解放された頃には、めふぃすとのバフは完了。紅茶さんもバフのばらまきを終わらせ、あんまんは盾を構えて仁王立ち。

 ただ肝心のボスが膝を抱えて座ったまま微動だにしない。


「なぁ、これ戦闘始まってるのか?」

「マジック君、始まってると思うぞ。だってあいつのHPバーが見えるし」


 あぁ、そういや戦闘態勢になると見える敵のHPバーは見えてるな。


「モンスター名『後悔した航海士のボーノ』って……ダジャレなのかな」

「は? そんなだっせぇ名前のモンスター、居るわけないだろシースター」


 目を凝らしてボスを見ると……マジだった。

 後悔してるなら膝を抱えて情けなく座り込んでいるのか。


〔オラァヨォ、船長ヲ裏切ルナンテ……本当ハ嫌ダッタンダヨォ。ハァ……〕


 なんとも情けないセリフだ。

 そして奴の吐き出した溜息が白い煙のようになって……。


「あれ攻撃なのかよ!?」

「そうよん。当たるとダメージがあるだけじゃなく、MPも吸われるから気を付けてねん」


 MP吸われるとか生粋のINTマジである俺にとって、死活問題じゃねえか!

 ふよふよと漂う煙……よく見たら幽霊レイスじゃねえか。それがあっちにふらふら、こっちにふらふら。暫く漂ってすぅっと消える。

 で、とうのご本人は膝を抱えたまま、まったく動こうとしない。

 こ、これ……攻撃しちゃってもいいんですかね?


「『情熱の接吻っ』よん」


 後ろから聞こえる野太いドワーフ声で「接吻」なんて聞かされたら、鳥肌もんなんですけど。

 その接吻効果は「情熱」にちなんで火属性魔法だった。

 何故そうなる?


「マジックのスキルも大概だけど……めふぃすとさんのその投げキッスモーションも凄いね……」

「でしょでしょ〜。アタシの情熱のこもったこのキスで、みんな焦がしちゃうのよぉ」

「そ、そうなんですか。はは、ははは」


 シースターの乾いた笑い声が聞こえ、どうやら世にも奇妙な物を見たらしい事が分かった。

 前衛でよかったぜ。


 めふぃすとの言う通り、投げ放たれた炎(投げキッス?)は蹲る中ボスに命中して奴の骨を焦がした。

 それでも奴は動かない。

 膝を抱えてぶつぶつ言ったかと思ったら、溜息レイスを吐き出すだけだ。


 何この楽勝ムード……。


「ほらそこのイケメンっ。余裕こいてないで、真面目にやんなさい。奴のHPが75%になってからが本気モードなんだからねん」

「75? あぁ、今まだ90%ぐらいだな」


 サラマンダーを再召喚し、適当にボスをいびってくるよう指示を出すと嬉しそうに飛んで行く。

 足蹴にしたり殴ったり火を吐いたり。


〔ぼぼぼっ、ぼぼぼぼぉっぼぼ〕


 おらおら、いじいじしてんじゃねえぞゴルァ。と仰っている。

 焼き入れしている不良番長みたいだな。


 残りの奴のHPは……85%か。ボスにしてはHP削れるの早いな。

 俺がちょっと本気だせば……。


「ぷぅ、サンバだ!」

〔ぷぷぅ〜♪ ぷぅっぷぷぅっぷ♪〕

「はぁぁっ! 『焔のマント』からのぉ、『サンダーフレア』! そしてぇ――」


 俺、火だるま。

 常に密着して攻撃すれば、マント効果でダメージを与え続けられる。更にそこから攻撃を加え、更なるダメージ効果!

 火属性、聖属性、そして火属性と、アンデットに効果抜群の攻撃を絶え間なく浴びせまくり。


「マジさん、そんな気合入れたらヘイト跳ねるっすわ」

「大丈夫だろ? こいつ、全然やる気無さそうだしよ」


 やる気の無いボスモンスターを俺は知っている。

 まぁ俺の子守歌が効いていたんだけどな。

 こいつの場合、HPが75%になるまではやる気無しモードみたいだし、平気平気♪


〔ぼっぼぼ〕

「あ? 今76%だっ〔インヤ、裏切ッタモンハ仕方ナイ! ソウダソウダ、ヒャッハー!〕ぼふぅっ――」


 突然元気に立ち上がったボーノ航海士の側頭部が俺の顎に直撃。

 しかもこれ……ただのニアミス扱いでダメージは無い。無いが……痛い……。


〔ゲヒャゲヒャ。ソォラ、行クドーッ〕

「坊や、しゃがみなさいっ」

「はひ? ――へばっ!?」


 な、なにが起こった!?

 突然後頭部に衝撃を受け、そのまま俺はすってんころりん。

 あぁ……あそこの天井の染みが、なんか骸骨に見えてきもぃな。


「ってなんなんだよ!?」

「あんた馬鹿っ。倒れたならそのまま倒れてなさいよっ」

「は? なんでだ――へぶっ」


 がばっと起き上がった俺の後頭部を、再び衝撃が走る。

 今度は前のめりにうつ伏せの形で倒れて……視界真っ赤。

 や、やべぇ。瀕死じゃん俺っ。

 

 いったい何が起きたんだ?

 くるりと仰向けになるとその答えが分かった。


 航海士の野郎。バレリーナか何かのように片足伸ばしてぐるぐる回転してやがる。

 ふざけやがって!


「いきなり戦闘だったから説明できなかったけど、ボーノはダンスが得意な航海士なのよ」

「は? ダンス?」

「そ。今のは上段攻撃。華麗に舞うプリマよ」


 プリマってなんですか?

 助けを求めるようにあんまんを見るが、向こうも首を傾げている。

 シースターは……首を振られた。

 じゃあ……。


「なんだマジック君は知らないのか? 女性バレエダンサーの最高位、プリマドンナの略だぞ」

「……なんでお前はそういう事には詳しいんだろうな」

「ふぇ?」


 いやでもだ。プリマは女ダンサーの、つまるところバレエ界の女王なんだろ?


 ボーノを見る。


 どう見ても男だ。


 めふぃすとを見る。


 どう見ても男ドワーフだ。


「ちょっとっ。男だからって、差別しないでよねっ」


 そういう問題……なのか?

誤字報告にて「きもぃ」→「きもい」でご報告を受けました。

私、ネトゲやってたときにはチャットに「きもぃ」と打っていたもので。

他の方も「い」を小さく打つ人もいました。

確かに正しい文章ではないんですが、正しく書いた方がいいもんでしょうか。

ご意見いただければ、それを見て検討しようかなと思います。

メッセージでも感想でも構いません。お時間ありましたら、ご意見お願いいたします。



新作VRMMO『レッツ錬成♪』不遇職と呼ばれたアルケミストでゆく、楽しいVRゲームライフ。も

なにとぞよろしくお願いします。

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