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255:マジ、いつものように・・・

 最初の即死攻撃は近接。

 タンカーである筋肉あんまん含め、全員が慌てて逃げる。

 っていうか紅茶さんとシースターまで逃げてるし。お前ら最初っから十メートルぐらい離れてるんじゃないのか?

 慌ててダッシュで逃げる間に、後ろで凄い風斬り音が鳴り響く。

 セリフが聞こえてすぐ逃げるから、いつどのタイミングで剣を掲げるモーションが合ったのか、いつそれが終わったのかさっぱりだが……今生きてるってことは、間に合ったみたいだ。


 立ち止まって回れ右をすると、中ボスの剣がアニメで見るような流線だけを残してぶんぶん振り回されている光景が入った。

 なんかグラフィックが手抜きのような気がしないでもない。


「あれねぇ、一発で9999ダメージなのよん」

「ぶっ。洒落になんねぇよ」

「9999っすか。ギリで耐えれるっすよ」

「ぶっ。お前のHPどんだけあるんだよ!」

「一万二千ちょい超えっす」


 万超え……さすが肉。

 けど、それなら即死攻撃って訳でもない?


「何言ってるのよ。アタシは『一発』って言ったでしょ。あの範囲に居たら回避不可能な上に逃げる事もできなくなって、何十発もヒットするのよ。タブンだけど」

「タブンって……」

「だって、アレに耐えれたっていう情報が一切ないんですもの」


 VIT特化のあんまんでも一発しか耐えれないんじゃあ、同じようにVIT特化ステの奴も似たり寄ったりだろう。

 そりゃあ検証のしようもない。

 レベル99とかになれば耐えれるようになるかも?

 いやなったとして、その時にレベル37のモンスターの攻撃に耐えたからって喜べるか?


「ほらぁ、ぼぉっとしてないで攻撃しなさいよぅ」

「あ、はい。『ファイア』ソード!」


 遠距離から『ファイア』ソードを右手に灯し、走って行って奴の膝あたりを斬りつける。

 一撃で炎が消えてしまうあたり、形を変えようが『ファイア』でしかないという悲しさ。

 あ、だったらこういう戦法は?


「『焔のマント』」


 炎を身に纏ったまま奴にぴったり寄り添っていれば――。


〔アァァァァ熱イイィィィッ〕

「うぉっ。普通に喋った!?」


 ぃよーっし!

 そのまま奴の足の骨に縋り付き、ついでに『ファイア』ソードでゴリゴリ削る。

 いや削るならノコギリのほうがいいよな。

 そう考えた瞬間、ソードの刃部分がノコギリの刃のほうに変化する。

 うん。俺の形状変化も随分上達したな。瞬時にイメージ通りの物が出来上がった。

 ただゴリっとした瞬間に炎が消えるのは相変わらず。

 持続性ダメージのある攻撃ならゴリゴリ出来るんだろうか……。


〔だから俺は言ったんだ……ジャック船長を裏切るのは止そうって。ジャック船長を裏切ったから……〕

「近づきなさぁいっ」


 お、今度は遠距離即死か。

 このまま『焔のマント』で火あぶりを続行させたまま、懐中電灯で叩き、『ファイア』ノコギリで切り――。


〔ああぁぁぁっ、ジャック船長の祟りだぁぁっ〕


 ジャックは成仏したんだけどな。

 そんな事を思いながら後ろを振り向くと、もくもくと紫色のやばそうな色した煙がドーナツ状に広がっていた。


「ねぇマジック君。このホネが言ってるジャック船長って……」


 全員がボスのすぐ足元に集まって来ている中、煙が晴れるまでここで待機。


「あぁ。海賊ダンジョンのアレだ」

「ジャック船長って、海賊ダンジョンのボスはぶつぶつ言ってる奴の名前っすな」


 そうか。セシリアと初めて海賊ダンジョンに入った時はジャックはまだ居たんだったな。んで成仏させたのが俺たち。

 そのあと筋肉あんまんと入った時、ボスはバルーンボに代わってたんだっけか。


 などと話している間に背後の煙が晴れ、範囲即死攻撃終了っと。

 うん。即死攻撃とか言っても、案外楽に回避できるよな。


 もちろん範囲攻撃は即死のアレだけじゃない。

 なんせ実態のある骨と、実態のない背後霊と、両方が攻撃してくるんだからな。

 そのくせ背後霊にはHP設定がないのか、攻撃が当たらないだけじゃなく、そもそもHPバーが無いという。

 なんて酷い設計だっ。

 あとでシンフォニアに愚痴ってやる!


 更に背後霊による剣ぶんまわしが始まる直前にはセシリアに突き飛ばされ、彼女をヒールしてやるという謎の展開。

 近接、遠距離の即死を躱し、セシリアの突撃を食らい、ようやく中ボスを瀕死状態にまで追い込んだ。


「あともう少しだけど、気を緩めちゃダメよん」

「オケオケ。余裕余裕」

〔ぼっぼ〕


 あん? 気を緩めすぎだ?

 いやいや、ぜんっぜん緩めてないし。

 余裕なのと気を緩めるのとは違うから。楽勝楽勝。

 真の敵はセシリアぐらいなもんだ。


 それにもう奴のHPは0.1%ぐらいだろ?

 もう数発で倒れるし、もう即死もないだろう。

 最期にかっこよく決めるか。


 サラマンダーとノームを交代させ、ノームは全てを理解したかのように頷き地面に両手を突く。


〔のっ。のののむのーむ!〕


 ちゃぶ台返し。

 またの名を――踏み台!


「とうっ! 『シャァーイニングゥフォーォォッス・フィンガアァァーッ!』〕

〔お頭が……〕


 え?

 このタイミングで!?

 い、いや。俺の『シャイニングフォース・フィンガー』の持続ダメージでスキルキャンセルできるはず!?

 は……あれ? 出来てない?


〔ジャック船長がお人好しだから悪いんだぁ。なんでお宝を貧乏人にくれてやるんだよぉ〕


 奴は剣を振りかざし、まるで力を溜めるように両足を踏ん張るポーズを取る。

 溜め技かっ。

 い、今のうちに聖属性の持続ダメージで死んでくれ!!

 もしくは俺のフィニッシュブローで!


 だが高度が足りず、空中での持続ダメージで奴は倒れず。

 スタっと着地し、最後のフィニッシュブローに(気持ち的には)全魔力を注いで叩き――。


 込む前に、俺の視界を流線が走った。

 そして――。


【戦闘不能状態になりました】

【最寄のセーブポイントに帰還しますか?】

【はい   いいえ】

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