248:マジ、なむ。
「ふははははははっ、そうれ『シャークアタック・レインボースプラァァッシュ』ふははははははばぼぼぼっ」
セシリアがヘイトスキルで恐竜どもを引きつけ、俺は彼女の横で待機。
群がってきたところで鮫召喚!
まるで俺に恨みでもあるのか、最初の一頭が頭上からこっちに向かって落下してくる――と思ったら俺をすり抜け目の前のT-REXに噛みつく。
俺の胸元ぐらいの高さしかないT-REXと比べると、水鮫はかなり巨大だな。こっちの方がモンスターみたいだ。
〔ゴアアァァァッ〕
見た目はデフォルメ恐竜なのに、声だけすっげーリアルなんですけど。
鮫に食われたT-REXが悲鳴を上げたその瞬間、頭上の魔法陣から残り六頭の鮫が飛び出してきた。
バシャンバシャンとT-REXを襲いつつ、水弾となって群がっていた恐竜どもを襲う。
〔アッギャァァ〕
〔ボアァァッ〕
「あばばばばばっ、びぼ。ばぶべぼうぶうばぼびぼぼうば」(訳:あはははははっ、みろ。まるで恐竜がゴミのようだ)
このスキル。俺の頭上から滝のように降ってくる水鮫ってのがアレだな。
倒し切れなかった恐竜には、俺の水芸『ウォーター』やセシリアたちの攻撃でしっかり止めを刺す。
六、七頭居た恐竜もあっさり殲滅完了だ。
うん、案外行けるもんだな。
「マジック君は闘気を自在に変えられて凄いな」
「どんな技能を組み合わせたらこんな事に……わけわかんないね」
「イケメンはなんでもありやけん」
俺にはお前らの言っている事がわけわかりません。
無事に目的のモンスターをゲット出来たし、じゃあちょっとレベリングしましょうかね。
出来れば七階に移動しておきたい。
となるとどこかに居るだろうボスを探さなきゃな。
「こう、迷路でもなんでもないダンジョンだと……やっぱ入口から遠い所が次の階層に降りる階段があるよなぁ」
「そうやねぇ。ってことは、あの火山の辺り?」
ジャングルの中からも時折木々の隙間から見える火山。
赤いマグマの筋が下に向かって伸び、頂きからは白煙がもくもくと上がっている。
「噴火したら、どうなるのだろう?」
「セシリア。そういう事言うとな、現実になるから止めとけ」
「ふえぇっ。わ、分かった。じゃあ……噴火しない。噴火しない。噴火しない」
謎の呪文を唱えつつ先頭を歩くセシリア。
あっという間に恐竜モンスターと遭遇。
「水付与切れたけんっ」
「ウンディーネさん、よろ」
〔ぷっく〜ん〕
属性が入ると通常攻撃でも弓はやっぱ強いな。俺の『ウォーター』と同格っていうね。
見ていると夢乃さんのダメージのほうが高そうだ。
「シースターはLUKにも振っているんだっけか?」
「うん。最初は短剣でやりくりしようと思ってたからさ、クリティカルやラッキー狙いもあったんだ」
「ラッキー?」
聞きなれない言葉だな。
「幸運値による完全回避の事さ」
「ふぅん。じゃあステはDEXとLUK半々ぐらいな?」
「最近はDEX寄りだよ」
そんな話をしている間に、気づけばまた囲まれているっていう。
遭遇率高くないか?
いや、モンスターの配置数が多いのか。
「マジック君っ、鮫!」
「おうっ。任せろっ。『シャァクアタァァックッ・レインボォォスプラアァァァーッシュ!』」
走って行って、わらわらと群がるミニサイズの恐竜どものど真ん中で拳を突き上げる。
頭上に現れた虹色の魔法陣から水鮫一号がザパっと登場して、そのまま落下――俺の目の前にいた名前の知らない恐竜にガブり。
そして次々に魔法陣から出てきてがぶがぶがぶり。
で、ブシャーっと四散。
「マジック君のスキルはとても強いんだけど、毎回濡らされるのが……」
「すまん……」
「すぐ乾くからいいけど」
そう。すぐ乾くんだ。
濡れてる時間はおそらく十秒ぐらいか?
じわーっと乾くんじゃなく、一瞬で乾く感じ。
こういうところはさすがゲームって事だな。
「また集まってきたよ!」
シースターの声で魔法の準備に取り掛かる。
「ぷぅ、バフ頼む」
〔ぷっ〕
サンバのリズムでぷっぷと踊り出すぷぅ。
スキルのCTが短くなったので、これで何匹来ても怖くないぜ!
セシリアがヘイトスキルで恐竜を集め、俺がそこへ『シャークアタック・レインボースプラッシュ』をぶち込む。
これ、スキルレベルが上がれば結構強力な水属性攻撃だよな!
ぷぅのサンバと杖の効果でCTは約十二秒。『ウォーター』と挟み、セシリアに『カッチカチ』を入れ、もう一度『ウォーター』を使えば鮫の再召喚も可能になっている。
まぁ水魔法の手持ちが二つしかないってのも不自由ではあるな。
それを言うと他の属性魔法もそうなんだよな。
各属性、三種類ずつぐらい攻撃魔法があると、一つの属性だけで全部回せそうだな。
単体か、小範囲のCT短め燃費少な目な魔法を作っておくべきか。
なんて事を考えていたら――。
「おい、いくら何でも多すぎだろ?」
「モンスターハウスだね、これは」
「ふえぇぇぇっ」
俺たちは三十匹近い恐竜に囲まれていた。
「うわ、また全滅パーティーか」
「なむぅ〜」
「六階層で四人パーティーは無茶だぜ」
「そこかしこにモンハウが出来てるからなぁ」
なむあり。
次来るときは六人揃える事にしよう。
そう誓って、セーブポイントへ戻るのであった。
同じサブタイトルがあったような気がするけど仕方ないよね。
だってマジック君、すぐ転がるんだもん。




