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243:行ってきます。

『タイプ別ですか?』

「そそ。ステータス補助系だったり戦闘補助系だったりあるだろ?」

『はい。ぷぅですと、戦闘補助系でしょうか』


 魔法のCT減少効果なので戦闘補助になるだろう。

 セシリアのところのウミャーなんかはAGIアップっぽいし、ステータス補助か。まぁ両方ってのもいるだろうな。

 戦闘補助にしても、魔法タイプになるか物理タイプになるのか。その辺は同種のペットでも飼い主次第で、本当に都合のいいバフを覚えるのか。

 その辺りの確約がないと、ガチ勢なんかはおいそれと手を出さないかもしれない。

 中には手あたり次第ゲットしては捨て、ゲットしては捨てを繰り返し検証してる奴らも居るだろうが。


「知り合いの生産プレイヤーがさ、DEXとかLUK上昇バフを確実に覚えてくれるペットじゃないとって言ってるんだよ」

『まぁ……。生産活動がメインの方ですと、ペットの恩恵はとても実感しやすいのですが』

「そうなのか? モンスターの種類によってスキルの種類が――」

『いえ。基本的にペットモンスターは、主人の行動に準じたスキルを習得いたします。生産をメインにやっている方ですと、生産に関係するようなスキルしか覚えませんので』


 タイプは無いのか……。

 無いなら無いで、そういう確約みたいなのを公式できちんと紹介して欲しいものだ。


『ちなみにペットフードによる差などは若干ございます。能力面ではございませんが』

「何!? ど、どんな差があるんだっ。どんなペットフードだと差が出るんだ!?」


 そこは死活問題だぞ。俺個人としてっ。


『成長速度、でございますね。当たり前ですが、課金フードのほうが成長が早まります』

「その情報は公開しなくていいからな」

『既に公開されていいる情報でございます』


 ナンダッテッ!


『合成ペットフードも課金フードほどではございませんが、成長速度を早める効果にはなっております』

「そこ大事だから。公式で宣伝してくれ」

『……交渉はしてみます』


 なんで呆れたような顔してんだよ。

 ちょっと宣伝してくれりゃあいいだけなのに。


 ともあれ、どんなペットをゲットしようが、成長過程で主人に最適なバフを習得する――という事はもっと大々的に告知するべきだ。


『そう、ですね。提案しておきます』

「おう。要望としても出しておいてくれ。俺一人の要望だと通り難いよなぁ。ペット持ってない連中がどう思ってるか聞ければいいんだが」

『それでしたらお任せください。よい方法がございます』

「お、なら任せる。じゃあ俺はいったん落ちるな」

『はい。お戻りをお待ちしております』


 まだ夕方の五時を回った頃だ。先に風呂に入ってしまおう。

 夜は八時にログインし、日付変更と同時にログアウト。

 計画的ログイン。バッチリだ!

 レベリング? ナニソレオイシイノ?






――彗星マジックの中の人が夕飯を満喫している時刻。彼の者のロビー内では――。


『ではシグルドさんが担当するプレイヤーも、ペットがどういったバフスキルを習得するか分からず躊躇われていると?』

『そういう回答でしたよ、シンフォニアさん』

『私が担当する方も同じ回答でした。見た目で選ぶべきか、スキルで選ぶべきか。けれどもスキル情報が少なく、結局手が出せない、と』

『どのプレイヤーも似たようなものですわね。私のところなんて、一度捕獲したペットモンスターをわざと逃がしていますのよ』

『まぁ、どうしてですか綾小路さん』

『それがですねシンフォニアさん。ご友人のペットが持つスキルと同じものが欲しくて、それで……』

『『なるほどぉ』』


 彗星マジックとシンフォニアの共同制作とも言えるログハウスには、今、大勢のメイドだの執事だのが集まっている。

 彼らは時折こうして集まっては、情報交換を行っているのだ。

 集まる場所はほぼここと決まっている。

 何故なら――広いからだ。

 いや、広すぎることも無く、景観も美しい。

 のんびり過ごすにはちょうどいい空間なのだ。

 コスライムの戯れる姿も和ませてくれる。


 尚、彼らAIスタッフが和むかどうかは不明である。


 今回集まったのは、担当プレイヤーがペットを所持していないサポートスタッフたちだ。

 この二時間余りの時間にログインしようとロビーにやってきたところ、何故ペットを所持していないのかというアンケートを取ったという訳だ。

 更に――。


『公式でもっと詳しいシステムの開示を希望してましたね』

『俺のところもだ』

『同じく』


 であるならば、やはり公式ページの更新をするべきであろう。

 彼らは全員一致でこの事を運営スタッフに報告する事にした。






 東京都内の某ビル内。


「チーフ。サポーターから嘆願書が届いてますが?」


 とあるスタッフがそう声を上げたが、返事がない。ただの屍――いや、本日チーフは早番であったため、既に退社している。


「嘆願書ってなんっすか?」


 メイド喫茶大好き池田が興味本位で尋ねてきた。

 奴は夕食を秋葉原に繰り出そうと準備をしているところだった。

 尚この男の勤務時間は明日の早朝六時までとなっている。つまり出社したてだったりする。


「あぁ池田。お前がこの時間ここに居るって珍しいな」

「いまから行くとこっすけどね」

「そうか……で、嘆願書なんだがな」


 内容は、公式ページ内でペットモンスターのスキル獲得について、もう少し詳しく載せてはどうかというものである。

 ペット未所持プレイヤーの担当するAIスタッフがアンケートを実施したところ、九割以上のプレイヤーがスキルを気にしてモンスターの捕獲に乗り出せない――というのも記載されていた。


「なるほどっすね。まぁどんなバフになるか、ペットの成長によってーって、曖昧に書かれてるってのはあるっすね」

「不確定要素があるほうが楽しめると思うんだがなぁ」


 だがそうは思わないプレイヤーもいる。というより、そう思わないプレイヤーのほうが多かったのだ。

 情報はあったほうがいい。

 検証?

 めんどくせ。

 そんなものである。


「ペットページの作りなおしか〜」

「今日はwebデザイナーも休みっすね」

「明日もな」

「連休……ふざけてるっすね」

「そうだな」


 ルーム内の全スタッフが頷いている。

 だが彼らゲーム内運営に直接係わる社員と、webデザインを担当する社員とでは、そもそも部署が違う。

 web担当者は完全週休二日制なのだ。

 その事がルーム内スタッフの怒りを更に募らせる。

 人のオーラという物が見えるアレな人間がこの場に居たならば――。


 ドス黒いオーラが満ち満ちている――のが見えただろう。


「休みなら仕方ないっすね。ここはAIに任せてみてはどうっすかね?」

「AI……池田、お前頭いいな」

「でしょ〜。じゃっ」

「おう。車に気を付けろよ」

「うぃーっす!」


 おい、外出を止める気はないのか!?

お読み頂きありがとうございます!


本日、遂に発売日となりました。

尚、地方では週末になると予想。


記念短編も新規投稿にてアップしております。

よろしければそちらもご覧ください。

若干微熱状態で執筆しましたので、誤字脱字が通常の3割増しになっているやもしれません。


今後もマジック君を、どうぞよろしくお願いいたします。

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