240:マジ、ダメ出しする。
出来上がっていく家を、ただぼぅーっと眺めていた訳ではない。
「マジック。この材木を半分に切ってくれ」
「うぃ」
「英雄殿、この材木をこれと同じ長さに切りそろえてくだされ。五本必要なんですじゃ」
「うぃ」
っとまぁ、ほぼ雑用係ですけどね!
しかしまぁ、ゲームってずるいよな。
普通、一軒家なんて基礎からだと数か月は掛かるだろ。
もちろんこっちの家に基礎なんてのは無く、二部屋程度の小さな平屋だけどさ。
が、金槌の一振りごとに壁板が取り付けられていくし、気づけば窓も出来上がっている。
一時間もすれば、ほぼ完成。
「後はホルンクレスの骨を屋根に取り付ければ完成だな」
「ホルン……あぁ、屋根の三角部分に乗せるアレか……。必要なのか?」
正直、屋根に骨が飾られているって、見た目がダサい。ダサいし、なんか食人種的な種族が住んでる家みたいで怖い。
「ひつ、よ……」
あちゃあ。バグったか。
他の民家の屋根も、やっぱりホルンなんとかの骨が乗ってるんだが、村の特色の一つなんだろうか。
「でもダサいんだよなぁ。それに不気味だし」
「ぶ……きみ……――そうなのか?」
「お、戻って来たようだ。まぁディオたちには申し訳ないが、ちょっとなぁ」
外から来た人間なんかは警戒するだろう。
ディオたちにはこれから、冒険者とも係わって貰いたいし。
「そうだ。ダークエルフならポーションも作れたりするんじゃないかな」
この村には雑貨屋が無い。武器防具屋も無い。
そもそもがプレイヤーの拠点として使われる目的の村じゃないからだろう。
だがこの村が開拓民と敵対しないという事になれば当然、東エリアを活動するプレイヤーの拠点になってくれるに違いない。
そうなれば、最低でも雑貨屋は欲しい。
ダークエルフにその雑貨屋を開いて貰うってのはどうだろう?
善は急げだ。
テレポでダークエルフの集落へと向かい、ブリュンヒルデにさっきの事を伝える。
「それは良い考えですの」
「だろ? それにさ、収入があればこの集落ももっと潤うだろ」
「え……で、でもでも私たちは、罪深き種族ですの」
なんで後半だけガッツリ声のトーンが下がるんだよ……。
あぁ、もう!
「じゃあこうだ。ポーションの販売価格は他の町の雑貨屋と同じにしなきゃならない」
「ど、どうしてですの!? もっとお安くして皆様の為に――」
「安くしたらみんながダークエルフの雑貨屋で買うようになるだろ。そしたら他の町の雑貨屋で売れなくなる」
「あ……そう、ですの。それだと町の雑貨屋さんに迷惑をお掛けするですの」
うんうん。
更に売り上げの五割はダークエルフへ。残り五割を先住民の村へ。これは店の賃貸料みたいな感じで支払う。
「あの村はブリュンヒルデも見ただろうが、この集落より貧しい。まぁ畑が出来たから、多少は食うに困らなくなるだろうけど」
「そうですね……収入が出来れば家屋も立派になるですのっ」
と言ってブリュンヒルデは自身の家を見渡す。
そうだな。ここも合成剤やら分解粉で儲けたんだもんな。
「分かったですの! 雑貨屋を開くですのっ」
「おぉ、これでプレイ――冒険者も助かるぜ」
となれば次は――。
再びテレポで先住民の村へと戻って来ると、ディオがにっこにこ顔で出迎えてくれた。
「見ろマジック! ホルンクレスの骨を止めて、別のやつを取り付けたぞ!」
「別のやつ?」
完成したらしい家の屋根を見上げると、なんかすっげー光ってた。
「この辺りで取れる鉱石から取り出した光る石を磨いて、円盤状にした木材にはめ込んでいったんだ」
「……全部宝石かよ!」
しかもまるで壁掛け時計のように、十二個の宝石を嵌めてやがる。
あれはあれで悪趣味だろと思うんだが……もういいや。
「見てくれ! どの家の屋根も同じようにしたぞっ」
「うげっ」
言われてその辺の屋根を見ると、どこもかしこもピッカピカ!?
……悪趣味な村として名が知れそうだ。
「却下。全部取り外せ」
「何故だぁぁぁっ」
「悪趣味だから」
〔ぷっぷぷぅ〕
外すならあたちに頂戴――とぷぅが言っているが、無視だな。
全て取り外したところで――。
「これはマフトさんに売りつけよう。きっと高値で売れるぞ」
「屋根はどうするんだ? 何も乗せないのか?」
寧ろ乗せなきゃならない理由でもあるのかよ。
普通は屋根だけで、あるといえば煙突ぐらいだろ。
「開拓民の村に行ったとき、あの村の屋根に骨や宝石を乗せてたか?」
と尋ねると、ディオはシンキングタイムの後「いいや、なかった」と答える。
それが普通なんだって。
「そうか……乗せないのが普通だったのか……」
どこか寂し気な表情で、ディオは家々の屋根を見つめていた。
そんなに骨を乗せたいのかよ……。
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