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240/268

240:マジ、ダメ出しする。

 出来上がっていく家を、ただぼぅーっと眺めていた訳ではない。


「マジック。この材木を半分に切ってくれ」

「うぃ」

「英雄殿、この材木をこれと同じ長さに切りそろえてくだされ。五本必要なんですじゃ」

「うぃ」


 っとまぁ、ほぼ雑用係ですけどね!

 しかしまぁ、ゲームってずるいよな。

 普通、一軒家なんて基礎からだと数か月は掛かるだろ。

 もちろんこっちの家に基礎なんてのは無く、二部屋程度の小さな平屋だけどさ。

 が、金槌の一振りごとに壁板が取り付けられていくし、気づけば窓も出来上がっている。

 一時間もすれば、ほぼ完成。


「後はホルンクレスの骨を屋根に取り付ければ完成だな」

「ホルン……あぁ、屋根の三角部分に乗せるアレか……。必要なのか?」


 正直、屋根に骨が飾られているって、見た目がダサい。ダサいし、なんか食人種的な種族が住んでる家みたいで怖い。


「ひつ、よ……」


 あちゃあ。バグったか。

 他の民家の屋根も、やっぱりホルンなんとかの骨が乗ってるんだが、村の特色の一つなんだろうか。


「でもダサいんだよなぁ。それに不気味だし」

「ぶ……きみ……――そうなのか?」

「お、戻って来たようだ。まぁディオたちには申し訳ないが、ちょっとなぁ」


 外から来た人間なんかは警戒するだろう。

 ディオたちにはこれから、冒険者とも係わって貰いたいし。


「そうだ。ダークエルフならポーションも作れたりするんじゃないかな」


 この村には雑貨屋が無い。武器防具屋も無い。

 そもそもがプレイヤーの拠点として使われる目的の村じゃないからだろう。

 だがこの村が開拓民と敵対しないという事になれば当然、東エリアを活動するプレイヤーの拠点になってくれるに違いない。

 そうなれば、最低でも雑貨屋は欲しい。

 ダークエルフにその雑貨屋を開いて貰うってのはどうだろう?


 善は急げだ。

 テレポでダークエルフの集落へと向かい、ブリュンヒルデにさっきの事を伝える。


「それは良い考えですの」

「だろ? それにさ、収入があればこの集落ももっと潤うだろ」

「え……で、でもでも私たちは、罪深き種族ですの」


 なんで後半だけガッツリ声のトーンが下がるんだよ……。

 あぁ、もう!


「じゃあこうだ。ポーションの販売価格は他の町の雑貨屋と同じにしなきゃならない」

「ど、どうしてですの!? もっとお安くして皆様の為に――」

「安くしたらみんながダークエルフの雑貨屋で買うようになるだろ。そしたら他の町の雑貨屋で売れなくなる」

「あ……そう、ですの。それだと町の雑貨屋さんに迷惑をお掛けするですの」


 うんうん。

 更に売り上げの五割はダークエルフへ。残り五割を先住民の村へ。これは店の賃貸料みたいな感じで支払う。


「あの村はブリュンヒルデも見ただろうが、この集落より貧しい。まぁ畑が出来たから、多少は食うに困らなくなるだろうけど」

「そうですね……収入が出来れば家屋も立派になるですのっ」


 と言ってブリュンヒルデは自身の家を見渡す。

 そうだな。ここも合成剤やら分解粉で儲けたんだもんな。


「分かったですの! 雑貨屋を開くですのっ」

「おぉ、これでプレイ――冒険者も助かるぜ」


 となれば次は――。


 再びテレポで先住民の村へと戻って来ると、ディオがにっこにこ顔で出迎えてくれた。


「見ろマジック! ホルンクレスの骨を止めて、別のやつを取り付けたぞ!」

「別のやつ?」


 完成したらしい家の屋根を見上げると、なんかすっげー光ってた。


「この辺りで取れる鉱石から取り出した光る石を磨いて、円盤状にした木材にはめ込んでいったんだ」

「……全部宝石かよ!」


 しかもまるで壁掛け時計のように、十二個の宝石を嵌めてやがる。

 あれはあれで悪趣味だろと思うんだが……もういいや。


「見てくれ! どの家の屋根も同じようにしたぞっ」

「うげっ」


 言われてその辺の屋根を見ると、どこもかしこもピッカピカ!?


 ……悪趣味な村として名が知れそうだ。


「却下。全部取り外せ」

「何故だぁぁぁっ」

「悪趣味だから」

〔ぷっぷぷぅ〕


 外すならあたちに頂戴――とぷぅが言っているが、無視だな。

 全て取り外したところで――。


「これはマフトさんに売りつけよう。きっと高値で売れるぞ」

「屋根はどうするんだ? 何も乗せないのか?」


 寧ろ乗せなきゃならない理由でもあるのかよ。

 普通は屋根だけで、あるといえば煙突ぐらいだろ。


「開拓民の村に行ったとき、あの村の屋根に骨や宝石を乗せてたか?」


 と尋ねると、ディオはシンキングタイムの後「いいや、なかった」と答える。

 それが普通なんだって。


「そうか……乗せないのが普通だったのか……」


 どこか寂し気な表情で、ディオは家々の屋根を見つめていた。


 そんなに骨を乗せたいのかよ……。

お読み頂きありがとうございます。

「殴りマジ?」書籍版発売まで@三日!

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