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239:マジ、未実装領域に足を踏み入れ――

「なぁんだ。北のダークエルフさんが先住民の村に住む事になったから、その為の家なのかぁ」

「そ、そうだよ。ところでハウスシステムって?」


 なんか新しいシステムの事のようだが。

 興味本位で尋ねると、コスタから表情が消えた。


「ハウスシステムハミジッソウデス」


 まるで死んだ魚のような目で俺を見つめそういうコスタ。


「あ、うん。分かりました」


 そう答えるしかない。だって怖いんだもん。

 拾った材木をせっせとコスタの所へ持っていくと、何故かグラフィックが木の枝っぽいのから丸太、板切れに変化する。

 好きな物を持って行っていいとコスタが言うと、視界に選択肢が浮かんだ。

『木の枝』『まだ使えそうな丸太』『まだ使えそうな板』と出る。


「木の枝以外は欲しいな」

「じゃあどっちも選択してくれればいいよ」


 ってことで二つをタップすると、丸太と板がインベントリに入っていった。

 一度で各一つずつだな。


 せっせせっせとゴミを拾ってはコスタの所に持ってきて、選択して、インベントリに。

 繰り返す事三十分ぐらいだろうか。


「よ、よし。このぐらいあれば小さな家ぐらいは建てられるんじゃないかな」

「うぅん。もう少しあった方がいいだろうね」

「うげっ。でも村人を待たせてるしなぁ。先にこれだけでも渡しておくかな」

「じゃあマサオさんの所にも寄ってみたらどうかい?」


 マサオか。確かにゴミではない、ちゃんとした丸太が貰えるかもしれない。


 さっそくマサオの下に向かうと、今度はここで――。


「だったら丸太運びを手伝ってけんろ」

「……そうなるか……」

「んだ。働かざる者クウべからずだべ。丸太を荷馬車さ運んで、それをクロイスに届けて欲しいだよ」


 三十分以上掛かるな……。テレポでササっと運べればいいんだが。

 試しに切り倒された丸太をインベントリに……あ、はいった!

 よっしゃ。


「マサオさんや。荷馬車は使わない。俺のインベントリに直接入れて運ぶから、とにかくがんがん切ってくれ!」

「――分かっただ」


 シンキングタイムが発動したようだが、運ぶという点は違わないので納得したようだな。

 既に荷馬車に積まれていた丸太もどんどんインベントリに入れていく。

 だいたい二十本ぐらいで荷馬車がいっぱいになるよな。


 で、合計三十本の丸太をインベントリに入れテレポで港町へと飛ぶ。

 材木屋に二十本渡し、金を受け取って再びテレポ。

 マサオが居た場所は木が多すぎてテレポできず、森の外から走って戻る。


「ほら、丸太の代金だ」

「ご苦労だったべなぁ。それにしても丸太なんて、何に使うだよ?」

「あぁ。知り合いの家を建てるためなんだ」

「――ハウスシステムハミジ――」

「あぁぁぁ、冒険者じゃないんだ。NPC。いやダークエルフの集落に住む人のな」


 マサオまでバグりやがる。怖いから止めてくれっ。

 通常モードに戻ったマサオが、


「そっだら、港町のゲンさんとこさ行って、丸太を木材に加工して貰うだよ」


 という。

 まぁ確かにこのままじゃ、ログハウス用にしかならないな。

 っち。案外時間がかかるぜ。


 再び港町にテレポして、大工のゲンさんを訪ねる。

 かくかくしかじかで説明すると、


「冒険者さんには以前、木工技能を教えたはずだぜ。っかしまったく使ってねえようだなぁ」

「あぁ。そういえば持ってたな」

「ってやんでぇ。あっしが鍛えてやらぁ」


 え……別にそんなの、いいんですけど。

 が、強引に「あーしろ」「こーしろ」とレクチャーが始まってしまう。

 うぅ。ディオたち、待ってんだろうなぁ。






 一時間以上、ゲンさんにみっちりしごかれた俺。放置しっぱなしというか、上げるつもりすらなかった木工技能が10になった。

 更に『大工』技能まで習得するという。

 生産の道を進もうとしているのか俺は……。


「これはあっしからの土産でぃ。良い家を建てるんだぜ」

「あ、あぁ。ありがとう」


 貰ったのは大工道具一式と、木材だ。

 元々持ってた丸太分に加えて、結構な木材を追加してくれたようだ。

 有難い。材料が余ったらディオたちの家もなんとかしてやろう。


 そして急いでテレポで村に戻ると、ディオたちは立派な池を完成させていた。


 なんていうかな……泳いでるその魚はどこから湧いた?

 蛙とかもいるんですけどどうなってんの。

 いや、こういうゲームなんだと気にするのは止めよう。


「待たせたなディオ。さぁ、家を建てるぜ!」


 大工道具から金槌と釘、そして材木を取り出す。

 家を造るなんて初めてだし、どうやって作るのかは分からない。

 が、これはゲームだ。きっと金槌で釘打ちでもすれば勝手にシステムが家っぽくしてくれるだろう。

 そう思って柱になりそうな材木を立て、金槌を構えて振りかぶる。


【システムエラー:現在その行動は実行できません】


 はい?

 システムエラー?


 もう一度金槌を構えて、板に向かって叩く動作を――。


【システムエラー:現在その行動は実行できません】


 まさかこれ……コスタやマサオがバグってた「ハウスシステムは未実装」ってやつか?

 おいおい、じゃあどうやって家を建てればいいんだよ!?


「はっはっは。さすがにマジックにも出来ない事はあるようだな。俺たちが立派な家にしてやるから、材料だけ渡してくれ」


 一時間以上かけて習得した大工技能の使い道が、まったくないじゃねえかよ!


サブタイトルの続き――

――られなかった。


お読みいただきありがとうございます。


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