238:マジ、コスタを壊す。
「って事になったんだけどさ。水ってどうやって引けばいいと思う?」
そもそも村の周辺に川が無い。
じゃあ井戸?
確かに村には井戸があった。ただ水は思いっきり少なく、畑に撒く余裕なんて微塵もない。
どうしたものかと頭を抱えた末、俺はダークエルフの集落へとやってきた。
こう、精霊の力でどうにかならないかなぁ〜と思って。
「水ですの? ミ――」
うん。固まったな。
今頃開発に問い合わせでもしているんだろう。
待ってる間にスキルのネタでも考えるか。
『焔のマント』のように体に纏う系だと、走って行って敵にぶつかりまくるか、飛んで火に入るなんとやらでダメージを与えるかどちらかだよな。
後者の場合、ソロの時なら敵はこっちに向かってくるからいいだろう。
けどパーティーの場合は俺がヘイトを取ってないと意味が無い。
となると走っていくのが一番いい手段だよな。
けど『焔のマント』もそうなんだが、CTが長いし持続時間は三十秒だ。
CT明けの待ち時間がどうしても発生してしまう。
CTを短くすれば消費IMPは増えるし、持続時間を延ばしても同じ。
逆に消費を少なくしなきゃ、各属性で同様のスキルなんて使えないぞ。
「どのタイプのモンスター相手にも、一定の効果を発揮できる魔法があればなぁ」
「闇属性ですの」
闇属性かぁ。
ん?
「同じ闇属性やアンデットタイプのモンスターには効果が薄いですけど、その他のモンスターなら100%のダメージが出せるですの」
「シンキングタイム終わったのか……それで、水のほうは?」
「はいですの。まずは池を作って、少しでもいいですから、水を貯えるですの」
水があればウンディーネが生息可能になるという。あとはウンディーネが水を供給してくれる、と。
ただ問題があって、精霊使いが常駐しなきゃならなくなる。
あの村には精霊使いどころか、魔法を使えそうな人間も居なかった――ってのがブリュンヒルデの意見だ。
俺が常駐する訳にもいかないしなぁ。そんな事したら俺のゲーム人生がNPC化してしまう。
となると……。
「この集落の誰かに頼めないか?」
「うぅ〜ん、そうですのねぇ」
そしてまたシンキングタイムに突入するブリュンヒルデ。
だったらと、またスキルネタについて考えてみる。
ブリュンヒルデは闇属性が有効だと言っていたな。
アンデットや闇属性モンスターには効果が薄いってのはまぁ、納得だ。
だがアンデットには火属性が有効だし、闇属性相手はちょっと分からないが、まぁいけるだろう。
いっそ全身に属性を付与して――あ、バフだと呪いアイテムのせいでデバフになるのか。
そもそも属性付与がデバフになるとどうなるんだ?
試しに水属性付与で試してみるか。
ウィンディーネ作成の水付与。精霊のレベルが上がって俺も使えるようになったアレを、自分に付与する――と。
う、うぅん。
本来武器に水属性を付与するスキルのはずなんだが……何故か攻撃した相手に水を付与してまわるという、はた迷惑な効果になってるぞ。
じゃあ全身に闇属性をってスキルを作った場合、俺に触れた対象が闇属性になるのか。
闇属性になる利点ってなんだ?
「闇属性は聖属性以外に対し耐性が高いですの。だからモンスターが闇属性になると、魔法で倒すのは難しくなってしまうですの」
「げ、マジかよ」
「マジですの」
「ってか、なんでブリュンヒルデが答えてるんだ!?」
「はい? マジックさん、ぶつぶつ喋ってたですのよ?」
うげ。口に出して喋ってたのかよ。
ぐぬぅ〜。
ま、まぁいい。闇属性をモンスターに付与する恐ろしさってのは分かった。
魔法使いたる俺の天敵じゃないか。
となると、闇属性モンスターへの対策も必要だろうなぁ。
「闇属性のモンスターは比較的少ないですから、その時は聖属性魔法で倒せばいいんじゃないですの?」
「うぅん……そうだな。じゃあ闇属性で『焔のマント』系スキルを作るか。って、さっきの件は?」
「はいですの。うちのダークエルフでお手伝いできることがあれば、なんでもしますの」
「有難い。助かったぜ。じゃあ俺はさっそくディオたちに伝えてくるな」
あとは肥料だな。
「ってことになって、まずはどこかに池を作って欲しいんだ」
先住民の村にテレポし、ディオにその話をした。
もちろん村長もその場にいる。
「では畑の近くに池を作りましょう。それとダークエルフ様が寝泊まりできる家も建てねば」
「あぁ、そうだな」
とはいえ、隙間だらけの家では可哀そうだしなぁ。
そもそも材木もないだろうし。
あ……。
「家を建てるための材木を貰ってくるから、場所だけ決めておいてくれ」
それだけ伝えると、俺は記憶にある場所へとテレポした。
そこは海岸。
今日もゴミという名の流木がそこかしこに落ちている。
「コスタ、久しぶりだな」
お目当てのNPCを見つけて声を掛けると、僅かに硬直したあと笑顔を向けて応えてくれた。
「やぁ冒険者さん。本当に久しぶりだね。元気にやっていたかい?」
「あぁ。それでさ、久々なのに悪いんだが、ちょっとお願いがあってね」
「お願い? 僕に出来る事かな?」
もちろん。
俺の願いは、ゴミを譲ってもらう事だからな。
つまり、ここで拾える木材を、だ。
「お安い御用だよ。拾った木材は好きに持っていってくれて構わないから」
「助かるよ」
「木材なんて何に使う気なんだい?」
「ん。ちょっと家をね。建てようと思って」
「い……え……ハウス、システム……みじ、っそう」
は? え……コスタ?




