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236:シンフォニア、勤務外営業をする。

『お帰りなさいませ、彗星マジック様』

「おう、ただいま。いやぁ、いい汗かいたぜ」

『はて? 汗は未実装でございましたが。不具合報告いたしますね』

「いや、物の例えって奴でだな……」


 実際に汗をかいたわけではない。そういう気分だって事だ。


 ブリュンヒルデが野菜の苗を大量に持ってきて、それを畑に一本ずつ植えていった。

 苗の植え方もブリュンヒルデたちは丁寧に村人に教え、村人はものの数秒でそれを覚えていくっていう。

 あとは数時間もすれば野菜が実るだろう。


 骨粉の数と精霊使いを用意すれば、呆気なく大地は潤うのか。

 現実世界でもこのぐらい楽だったら、世界はもっと平和になったんだろうなぁ。


 などと感慨深くなりながらも、時刻は夕方ということでひとまずログアウトした。

 というか、朝からガッツリやり過ぎて接続上限に達するところだった。

 うぅん、夜は一時間程度しかログイン出来ないな。

 これからは午前中のログインを減らしておかないと。


 そういや……夕方にでもジョギングをしようと思ってたんだっけ。

 朝は暑かったからな。少し涼しくなってから――と。

 時刻は夕方の五時過ぎ。

 うん、無理だな。

 今ジョギングなんかしたら、今日の晩飯は病院食になってるだろう。

 夜か。そうだな、夜だな。


 晩飯後にログインし、畑の様子を確認して本日のプレイは終了。


『今晩はお早いお帰りですね』

「まぁな。接続時間がもう残ってないだろ」

『残り十五分ほどとなっております』


 お、秒刻みの細かい数値は省略したのか。

 随分と臨機応変になってきたな。関心関心。


「さて、そろそろジョギングに行けるような気温になったかな」

『ジョギング? 走られるのですか?』

「あぁ」


 最近太った気がするから――とここで言えば必ず弄られるよな。

 だから言わないでおこう。


『体重が気になるお年頃なのですね』

「わざわざ言わないでおこうと思ったのに、なんで知ってんだよ!!」

『まぁ、本当に太られていたのですか。まぁまぁ、それはそれは』


 くっ。

 誘導尋問に引っかかってしまった。

 あぁそうだよ。太りましたとも!

 それもこれもゲームが悪いんだっ!


『しかし外でのジョギングはお勧めいたしません』

「なんでだよ」


 むすっと答えると、シンフォニアは顎を下げ上目使いでこちらを見つめてくる。

 その目が捨てられた子猫のようで、不貞腐れた俺が罪悪感を抱くハメに。

 女ってずるい。


『あの……彗星マジック様がお住まいの地域は、現時刻でも気温は三十度となっております。日差しが出てなくとも、熱中症の危険が……』

「……三十度?」

『は、はい。ネットワークに繋がっておりますので、全国どの気象データでも知ることができますので』

「夜の八時も過ぎてるのに、まだ三十度かよ」


 熱帯夜が当たり前になってるもんなぁ。


『お、お勧めはフィットネスクラブなどですね』

「でも金取られるじゃん」

『それはそうですが……えぇっと、彗星マジック様がお住まいの近くに、都営の体育館がオープンしておりますね』


 そんな情報まで入手できるのか。

 ってか俺は知らない情報だぞ。


 シンフォニアは可視化ウィンドウを開き、都営体育館のホームページを見てくれた。

 体育館とはいうものの、施設はそれだけじゃない。プールもあればスポーツジムのようなものもある。

 あと何故か銭湯。


『各施設ごとに利用料金が設定されておりますが、平日の日中でしたら料金も安くなっております。学生割引もございますよ』

「……お前はいつから都の回し者になったんだ」

『はっ!? ち、違います。断じてワタクシは東京都の職員などではございません』


 慌ててウィンドウを閉じるシンフォニア。

 そこまで慌てられると、逆にマジで怪しいんだが。


 だがウィンドウを閉じられたことで、肝心の料金が分からない。


「おい、料金が分からかなったじゃないか。もう一度出せ」

『あ、はい。やっぱりダイエットをなさりたいのですね。尚、体形に変化がございましても、アバターを変更できませんのでご了承ください』

「い、いいから出せっ」


 にやりと笑みを浮かべた彼女が再びウィンドウを開く。

 ったく、アバターなんか変更しなくていいっての。

 寧ろ変更されたらデブるってことなんだし、逆に嫌なんですけど?


『一回四十五分で百円。十回分のまとめ買いチケットですと九百五十円と、五十円お得ですよ!』

「一か月でも三千円以下か。まぁ平日限定だけど、チケット制はいいかもな」

『はいっ。またこちらのチケットに追加で五十円お支払いになれば、十八時以降のご利用も可能となっております』

「おぉ。それは有難い」

『更にこの体育館。館内は冷房完備ですし、二階の外周コースに入るだけでしたら平日昼間限定で無料となっております。ジョギングだけでよろしければ、こちらをご利用になるのもよろしいかと』

「な、に? タダで使えるのか!?」

『はい! また、汗をおかきになられたら、銭湯を利用されるのもよろしいかと!』

「至れり尽くせりだな!」

『はい!』


 ……。

 ……はて?

 俺はいったいここで何をやっているのだろう?



お読み頂きありがとうございます。

ちなみに気温がでましたが、適当な数値です。

都内にお住まいの方、今年の夏、夜の気温がどのくらいあったか覚えているかたいませんでしょうか?

検索してもその日の最高気温と最低気温しか出てこないもので・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく拝読しています。 他の方からすでにコメントが有ったかもしれませんが、一応気象データの情報を提供させていただきます。 https://www.data.jma.go.jp/obd/…
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