226:マジ、女子会に参加する。
「な、何故ファクトの商人組合長が?」
ディオに村長宅まで案内してもらい、ボーデンさんから預かった手紙を渡した。
中身は素材やその他情報なんかの取引を、熱烈に希望するというものだ。
「マジック。お前は商人組合とも繋がっているのか?」
「いやまぁ、以前にちょっとな。ただ、このボーデンって人は、そもそもこちら側と仲良くやりたいと思っていたようだぜ」
ボーデンさんが言っていた『情報』についても話すと、村長とディオは「なるほど」と納得した様子だった。
案外あっさりしたもんだ。
もしかして初めから用意されていたシナリオコースだったとか?
「マジック様、この手紙をボーデンさんに渡して頂けませんか?」
「お使いクエの連鎖か……まぁ俺以外、頼む相手も居ないんだし、引き受けるよ」
引き受けなかった場合、たぶんエンドレスで要請されるだけなんだろうしな。
「ちなみに手紙の内容って……」
「はい。もちろん取引に応じるという内容です」
「おぉ。これでこの村もひもじい思いをしなくて済むようになるな」
「あぁ。マジックから教えて貰った、土壌改良の方も進めていけば、村での自給自足も不可能じゃなくなる」
その為に骨が何百……いや、何万と必要だろうなぁ。
うぅん……買取、してみるかな。
ファクトに戻った俺は、村長の手紙をボーデンさんへと届けた。
で、今度はボーデンさんとこの組合員を一人、護衛として村まで案内してくれと。
「マジックさんお一人では困難であれば、お仲間を集めてまた来てくださって結構ですので」
「もしかして、取引のたびに護衛が必要になるとか?」
「いえ。送る組合員は『テレポート』が使えますので」
あぁ、なるほど。一度でも連れて行けばそれで良い訳だ。
さて、そうなると面子集めだなぁ。
先住民の村だし、誰でもって訳にもいかないだろう。
この前のイベントの時に、セシリアと霧隠さんはディオと対面したことはあるし、頼んでみよう。
しかし、こうなると前衛ばっかりだな。
あ、ココネさんにも頼んでみよう。
あと二人――後衛職の知り合いと言えば、フラッシュと製造メンバーだな。
とにかく、先にセシリア、霧隠さん、ココネさんに連絡だ。
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うん。三人ともOKだった。
残り二人か。
「来たぞ、マジック君」
「NPCの護衛クエを聞いたでござるが、どこまで向かうのでござろう?」
「見てくださぃ〜。ニっちゅん、可愛いでしょう」
「ふえぇっ。な、なにその子可愛いぃ」
「でしょでしょぉ〜」
どこの女子会かよ。
心なしか、霧隠さんもチラッチラっとココネさんのペットモンスター、ハリネズミ型モンスターのニードルッチェを見ているような。
可愛いって思うなら、素直にそう反応すればいいのに。
まだ男装しているつもりなんだろうか。
「そ、それで彗星殿、クエストの方は?」
「あ、ああ。実はな――」
かくかくしかじかで、商人組合員を一人、先住民の村まで護衛する事になったと説明する。
霧隠さんは驚き、残り二人はハリネズミと遊んでいた。
人選、間違っただろうか。
「このメンバーで護衛クエを? 拙者、向こう側にはまだ一度も行った事が無いので、若干不安があるでござるが」
「あぁ。後衛職をあと二人呼びたいなよは思ってるんだ。誰か知り合い、居ないか?」
「彗星殿は先住ダークエルフという事になっているのであろう?」
「あぁ」
「となると――」
霧隠さんは言う。
エルフを仲間に加えるのはダメだろうと。
理由としては、一般的なファンタジーにもあるように、このゲームでのエルフとダークエルフの仲は良くない設定なんだとか。
プレイヤー同士は関係ないが、NPCは――特にエルフはダークエルフを毛嫌いしていると。
「ダークエルフである彗星殿がエルフをパーティーに入れていたら、不審がられるやもしれぬでござるよ」
「なるほど……あ、じゃあセシリアは?」
「彼女はハーフエルフでござる。ハーフエルフもまた、エルフから迫害されているでござるから」
あぁ、そこもよくあるファンタジー設定なんだな。
「ダークエルフのお友達なら、ココネ、居ますよ」
「え、本当?」
「うん。弓使いさんと、ネクロマンサーさん」
うぉ!?
ネ、ネクロマンサーのダークエルフとか、めっちゃそれっぽい!
しかもネクロマンサーはまだ見た事ないから、そういう意味でも興味あるな。
「ココネさん。その人たちと連絡取れる?」
「うん。任せてぇ〜」
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で、気づくと――
「初めまして、弓使いのメェです」
「ネクロマンサーの……佳奈。火と土属性も、オケ」
「メェちゃんと佳奈ちゃん、来てくれてありがとうぉ〜」
「えへへ。ココネちゃんこそ、誘ってくれてありがとです」
「生王子様……SSで見るより、やっぱイケメン」
「うんうん。そうだよねぇ〜。でもマジックさんって、おちゃめさんなんだよぉ」
「マジック君はおちゃめなのではなく、おっちょこちょいなのだ」
「……否定は出来ぬであるが、それをセシリア殿が言ってしまわれるのは……」
女子会が始まっていた。




